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これを読んでも、別に株の取引で利益は出せるようにはならないけれど、意味不明で無駄な株の取引は削減することが出来るようになるnote 第四夜【アクティブファンドについて】

ある夜、某所にて・・・

A:
このアクティブファンドは「買い」だ。

B:
なぜ?

A:
このアクティブファンドの基準価額は今後上がりそうだからだ。

B:
なぜ「このアクティブファンドの基準価額は今後上がりそうだ」と判断したのか?

A:
今までに上がっているからだ。実力があるが故に、運用が上手く行っているのであろう。

B:
なるほど。ところでこのアクティブファンドのベンチマークとなっているインデックスは何なのか?

A:
日経平均225である。

B:
ではこのアクティブファンドと日経平均225の「同期間のリターン」は比べたみたか?

A:
いや、比べていない。

B:
比べてみるべきである。

A:
なぜか?

B:
なぜなら、今までにそのアクティブファンドの基準価額が上がってきた理由は「同期間にマーケット全体が上がってきたから」という可能性があり、その場合には「たまたまマーケット全体が上手く行っていたからそのファンドの運用も上手く行っていただけで、そのファンドには高い信託報酬を正当化するだけの実力はない」という可能性が出てくるからだ。

A:
どういうことか?

B:
よろしい、説明しよう。まず「直近10年間のファンドの年平均リターン:直近10年間のベンチマークの年平均リターン=+20%:+10%」とする。この場合、ファンドの成績はどうか?

A:
優秀である。なぜならば、ベンチマークのリターンを+10%上回っているからだ。

B:
然り。では「直近1年間のファンドのリターン:直近1年間のベンチマークのリターン=+20%:+20%」の場合はどうか?

A:
甲乙つけられぬ。

B:
然り。ではこうであった場合「ファンドの年間信託報酬:ベンチマークに連動するインデックスファンドの年間信託報酬=2%:0.2%」を見てどう思うか?

A:
何とも言えぬ。「インデックスファンドに投資しておけば良かった」と後悔するであろう。

B:
これが「同期間のリターン」を比べてみるべき理由である。

A:
なるほど。では買うべきアクティブファンドとは「同期間のベンチマークのリターンよりも優れたリターンを達成しているファンド」ということか?

B:
一概にそうとは言えぬ。

A:
どういうことか?

B:
パフォーマンスを比べる時には「獲得したリターン」だけではなく、併せて「取っていたリスク」も比べるべきだからだ。

A:
よろしい、聞こう。

B:
うむ。まず、リスクとはここでは「リターンの標準偏差」つまりは「リターンのブレの大きさ」のことを言う。つまりは「獲得したリターン」と「獲得したリターンのブレの大きさ」を併せて比べるべきなのだ。

A:
どういうことになるか?

B:
よろしい。さきの「直近10年間のファンドの年平均リターン:直近10年間のベンチマークの年平均リターン=+20%:+10%」を例に挙げよう。

A:
この場合はリターンを比べると「優秀なファンド」ということになる。

B:
然り。しかし「直近10年間のファンドの年平均リターンの標準偏差:直近10年間のベンチマークの年平均リターンの標準偏差=40%:10%」であった場合、それぞれのリターンの振れ幅はどうなるか?

A:
この場合、「ファンドの年間リターンは+20%を中心として、そこから±40%ほどブレる」ということになるが故に、ファンドの年間リターンは「-20%~+60%」にだいたい収まるということになり、対して「ベンチマークの年間リターンは+10%を中心として、そこから±10%ほどブレる」ということになるが故に、ベンチマークの年間リターンは「±0%~+20%」にだいたい収まるということになる。

B:
よろしい。つまりは「ファンドの方がリターンは高いがリターンのブレが大きく、ベンチマークの方がリターンは低いがリターンのブレが小さい」ということになる。聞くが、どちらの方が好ましいか?

A:
一長一短で何とも言えぬが、リターンの大きさから、どちらかと言えばファンドの方が好ましい。

B:
なるほど。では君は「リスク許容度が大きい」ということにはなるが、「上手くリスクを取っている」とは言えまい。

A:
どういうことか?

B:
説明しよう。仮にだが、取るリスクに応じて投資金額を調整したとしよう。この場合「直近10年間のファンドの年平均リターンの標準偏差:直近10年間のベンチマークの年平均リターンの標準偏差=40%:10%」であり、ファンドはベンチマークの4倍のリスクを取っているということになるので、ファンドに100万円投資するのであれば、ベンチマークに投資する金額はファンドの4倍であるべきだ。つまり「ファンドへの投資金額:ベンチマークへの投資金額=100万円:400万円」になる。そして「ファンドの年間リターン:ベンチマークの年間リターン=+20%:+10%」であった場合、「ファンドの年間リターン金額:ベンチマークの年間リターン金額」はどうなるか?

A:
「ファンドの年間リターン金額:ベンチマークの年間リターン金額=+20万円:+40万円」になる。

B:
然り。ではそれぞれの「年間リターン金額の振れ幅」はいかほどか?

A:
「ファンドの年間リターン金額の振れ幅:-20万円~+60万円」「ベンチマークの年間リターン金額の振れ幅:±0円~+80万円」ということになる。

B:
よろしい。つまり同じ程度のリスクを取った場合、ファンドに投資するということは、年間リターンが「-20万円~+60万円」になるリスクを取って「+20万円のリターン」を求めに行っているのに対し、ベンチマークに投資するということは、年間リターンが「±0円~+80万円」になるリスクを取って「+40万円のリターン」を求めに行っている、ということになるのだ。どちかが良いかは明白であろう。

A:
なるほど。これならばファンドへの投資妙味はない。

B:
然り。ちなみにこの「リターン÷リスク」の数値を「シャープレシオ」と言い、この数値が高ければ高いほど、「上手くリスクを取ってリターンを求めに行っている」ということになる。さきの例で言えば「ファンドのシャープレシオ=0.50(20%÷40%)」「ベンチマークのシャープレシオ=1.00(10%÷10%)」である。

A:
では、この「シャープレシオ」が高いファンドを選べば問題ないのか?

B:
いや、まだある。

A:
何か?

B:
それは「ベータ」と「アルファ」である。これが最も重要と言っても過言ではない。

A:
聞こう。

B:
言おう。まず「ベータ」とは「ベンチマークとの連動性」を示す指標であり、「ファンドのベータ=1」の場合は「ベンチマークが10%上昇すると、ファンドも10%上昇し、ベンチマークが10%下落すると、ファンドも10%下落する」ということになり、「ファンドのベータ=2」の場合は「ベンチマークが10%上昇すると、ファンドは20%上昇し、ベンチマークが10%下落すると、ファンドは20%下落する」ということになる。
そして「アルファ」とは「ファンドの実力」を示す指標であり、俗に言うファンドマネージャーは通常血眼になってこのアルファを大きくすることに執心しているのである。そしてファンドのリターンは「ベータ部分のリターン+アルファ部分のリターン」で構成されている。

A:
つまり、「ベータ部分のリターン=たまたまによるリターン」「アルファ部分のリターン=実力によるリターン」と言えるのか?

B:
然り。そうであるが故に、たとえ「ファンドのリターン:ベンチマークのリターン=+10%:+20%」だとしても、そのファンドは「実力がある」と言える場合があるのだ。

A:
どういうことか?

B:
つまり「ファンドのベータ=0」だとすると、「ファンドのリターン=+10%」の構成は「ベータ部分のリターン=±0%(+20%×0)」+「アルファ部分のリターン=+10%」となる。

A:
なるほど。この「アルファ部分のリターン=+10%」があるが故に、このファンドには「実力がある」と言えると。

B:
然り。ちなみに「ファンドのリターン:ベンチマークのリターン=+30%:+10%」だとしても、逆にそのファンドは「実力がない」と言える場合がある。

A:
どういう場合か?

B:
「ベータが高い」という場合である。つまり「ファンドのベータ=5」だとすると、「ファンドのリターン=+30%」の構成は「ベータ部分のリターン=+50%(+10%×5)」+「アルファ部分のリターン=-20%」となる。この場合、本来+50%のリターンが獲得出来たところを、実力がないせいで-20%削ってしまい、最終的に+30%に落ち着いてしまったと言える。

A:
なるほど。しかしリターンが「+30%」も出ているではないか。これは投資する理由にならないのか?

B:
よろしい。では「ベンチマークのリターン=-10%」の場合を考えてみるといい。この場合のファンドのリターンは「ベータ部分のリターン=-50%(-10%×5)」+「アルファ部分のリターン=-20%」で合わせて「-70%」になる。これは良いのか?

A:
良いはずがなかろう。むしろ忌避するべきである。

B:
然り。これが「アルファが存在するファンドに投資すべき理由」であり、「アルファが存在しないファンドには投資してはならない理由」である。

A:
承知した。では「シャープレシオが高く、ベータが低く、アルファが存在するファンド」を探すこととしよう。

B:
よろしい。絶対数は少ないだろうし、そもそもそういったものが存在するかどうかはわからぬが、やってみたまえ。もし見つからなくば、「シャープレシオとアルファのどちらを優先するか?」を検討したら良いだろう。

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