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解決策の押し売りでは、問題は解けない

技能承継の方法論づくりを支援していて

午前中、Zoomでコンサルタントの集客コンテンツづくりを支援していた。テーマは(金型メーカーの)技能承継で、相手が技能承継の方法論を作る時にWhatとHowのレベル感がよくわかっていなかったので、そこを理解してもらうことに時間の大半を割いた。

レベル感を伝えるのに、パトリック・レンシオーネの「あなたのチームは、機能していますか?」を引き合いに出した。

例えば、改革を進める前段階として活発に意見交換ができるチームを作ろうとした時、「良いチームを作れ」というのはWhat(課題)であり、レンシオーネがいうチームの5つの機能不全を防ぐ具体的方法が Howに相当すると説明したら、なんとなくわかったようだった。

(余談だが、この本は非常に読みやすいので、一読をお勧めする。)

社員が社長の方針を理解していない

さて、本題はこの後のことである。最後に別種の質問が出た。クライアントの社長が、社員に何度も会社の方針を話しているのに、社員それぞれが異なった理解をしていた。それをどう扱えば良いかという質問である。

「社長はこのことをあまり問題だと感じてていなかったが、自分は解決しなければならない問題だと感じたが間違っているか?」と聞くのである。

ただ、その社長は社員にあれこれと命令する人なので、社員に方針が浸透することの重要性を説明し、社員が心掛けるべきことは3つ以内に絞って話すよう助言しただけで、浸透させる方法や浸透度を確認することはしなかった。それで良かったのだろうか疑問を持っているというのだ。

そして、本来は社長に次の3つをすべきだったと考えているが、それで間違いはないか、と言うのがそもそもの質問である

①方針の浸透が重要だと考えているかを確認
②なぜ重要だと考えているのかを確認
③浸透していることをどうやって確認しているのかを確認

さて、皆さんならどう答えられますか?

社長が変わるべきだとする根拠は?

どこか変だと感じられるだろう。実は、コンサルティングでこのパターンは、特に経験の少ないコンサルタントにしばしば起こる。

変なのは、この確認で問題が解決することが担保されていないことにある。と言うより、そもそも問題が何であるかがはっきりしないまま、社長に自分の行動を変えるように求めている。

そもそもの問題は、社長が語る会社の方針を社員それぞれが異なった理解をしている、ということである。だとすれば、その原因は何かを考えるのが、最初にすべきことである。

社員が社長の話をいい加減に聞いているのであれば、その態度を改善する躾から始めるべきである。社長の言葉がよくわからなかったが、怖くて質問ができず勝手な解釈をしてしまったのなら、冒頭のレンシオーネの率直な意見交換ができるチームづくりをしなければならない。

そのような問題の定義と原因分析なしに、社長の話し方が原因であると決めつけ社長の行動変化を求めるのは、筋が通らない。この「問題の正確な定義と原因分析なしの解決策の押し売り」が、実際のコンサルティングでは(私が経験した限りでは、コンサルティング・ファームにおいてさえ)横行している。

実は、質問してきた相手には、4年前に「早まった解決策を避ける」と言う講義を2時間かけて行っている。それでも相手は、自分がそれに該当する行為を行なっているとは露ほどにも気付いていないのである。

この思考パターン(問題の定義と原因分析を飛ばして解決策を急ぐ)は、ドラッカーも自分の本で何度も口をすっぱくして注意しているほど根強く脱却が難しいことだと、肝に銘じて行動する必要があるだろう。

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