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遠くの犬 近くのビニール袋


夜勤のバイト終わり

まだ薄明るい空に

頭の回転が10分に一回転しかしないような思考回路で

帰路に着く

歩きながら考えてることと言えば

今日の予定なのか明日の予定なのかもわからず

学生の頃に聞いたあの音楽を携帯から耳に入れて

口から出して

人が今から会社に向かう時間帯に
自分は家に着こうとしている

そんな生きてても死んでても社会にはなんの影響を及ぼさない自分の目の前に小型の犬が現れた

首輪も付けておらず

だが大人しく座ってこちらを見ている

犬は好きだけど怖さもある

犬は噛む生き物だから

でもその犬がいる道を通らないと帰れない

気づかないフリをして横を通り過ぎる作戦を思いついた

現実逃避作戦 〜スルーリアルプラン〜

を決行することにした

近づくにつれて着実に息を潜めて心を作った

決して目を合わせてはいけないのでただ前を向く

そう心に決めていたのに

横を通り過ぎるすぎる直前で犬が気になり目を向けてしまった


それは犬ではなく



ビニール袋だった


膝から崩れ落ちそうになるのを耐えたが

数10mくらいビニール袋にビビっていた事や

犬もビニール袋も区別できない自分への

恥ずかしさと悲しみに似た怒りを

ため息一つにこめて吐き出した


なんか人生を悟った


遠くに感じた不安や恐怖も
近くに来た時には大したことがなかったりする


行動しないと近づく事もできなければ
真実もわからない

遠くの存在や夢を遠くのままにしない事の大切さを学んだ気がした

また近くの犬をビニール袋と勘違したらもう終わりであろう

そうなる前に前へ進もう

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