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中世フルヘルムメンポ紹介:ニンジャメイクが楽しくなる非公式サプリ

ドーモ! 男子の皆さん、フルヘルムメンポを被ったニンジャを作りたい時ってありますよね。男子なら必ず1ヶ月に1度ある事だけど、学校じゃ教えてくれないからどうすれば良いのかわからないよね。この記事はそんな皆さんのために書いたよ。もちろん女子の皆さんも読んでオッケー!


さてフルヘルムメンポ、というか顔を防護出来る兜は古代ギリシアから存在するけども、筆者はその時代を全くカバーしてないので決断的に飛ばすね!

という訳で、筆者がカバーしてる中世、特にドイツの兜に絞って紹介していくよ。

グレートヘルム

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素敵なコラ画像。

俗にバケツヘルムと言われるモノ。そのあだ名の通りバケツっぽさ全開で野暮ったいシルエットだけど、シンプル故堅牢な造りで12世紀末から14世紀末まで長く使われた。なんとなく十字軍が被ってるようなイメージですが、実際に使われだしたのは第3回十字軍あたりからと思われる。(ちなみに↑の画像のものは割と後期型、十字軍国家が風前の灯火の頃のものなので「十字軍が使った」と言い切るには微妙だが、ニンジャスレイヤー世界は歴史の歩みが違うだろうから気にしなくていいと思います)

まあとにかく、十字軍ニンジャを作りたい時はコレ被らせておけばそれっぽくなります!


バシネット

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ドイツ製、1400年頃。
ヴァイザーを固定するピンを留めている紐が耳っぽくてカワイイですね

これはハウンスカル(犬顔)・バシネットと呼ばれるタイプのモノで、犬の口っぽく伸びたヴァイザーが特徴的ですね。

バシネットは14世紀末~15世紀に使われました。フス戦争や、100年戦争の最中ですね。100年戦争と言えばジャンヌ・ダルクが活躍した時代でもあります。ジャンヌやユカノと肩を並べたニンジャ、或いはジャンヌを捕らえたニンジャを作りたい時はコレで決まりです。

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フランス製、ヴァイザー紛失

補足:そもそもバシネットという形式はこんな感じのものを指し、ヴァイザーの有無や形状は問いません。

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なのでなんとなく「グレートヘルムでは?」と言われがちな彼も、立派なバシネットに分類されます(頭頂の形状に注目)。

ところでヴァイザーがあると何が良いって、いちいちヘルムを脱がなくてもスシが食えるんですよ。これはグレートヘルムでは出来ないので、大きな進歩ですね。

あと「無骨なフルヘルムメンポを被った野郎だと思ったら、ヴァイザーを上げたら美女だった」みたいなシチュエーションが出来るんですよフィーヒヒヒヒ!


アーメット

さて時代も15世紀中頃に入ると、ドイツ諸侯の甲冑の好みは2分されてきます。つまりドイツ式か、イタリア(ミラノ)式か。

まずはイタリア式のアーメットから紹介しましょう。

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見て下さいこの騎士っぽさ。イタリア的な洗練! このアーメットですが、よく見て頂くと首のあたりで経がすぼまっている事がわかると思います。このままだと、バシネットのように頭の上からスポッと被る事が出来ません。ではどのように被るのか?

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開くのです。

アーメットはこのように可動式の頬当てとヴァイザーを持ち、それが故に頭にフィットし、安定する構造を獲得しました。イタリア人技師の巧緻! しかしその複雑さ故にコストは高かったとか。イタリアかぶれの裕福な騎士ニンジャを作りたい時はコレですね。


サレット+ビーヴァ

ではアーメットと対をなす、ドイツ式の兜:サレットを見ていきましょう。

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鼻から上だけを覆うタイプのものですが、どことなくサイバーサングラス味があって良いですよね。後頭部が伸びていますが、これは矢から頸部を保護する役割があったそうです。

では口元の防御はどうしたのかというと、このビーヴァという防具を使いました。口から首、前胸部を保護していますね。

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あからさまにメンポなのだ

コストの安いサレットとビーヴァはドイツで広く使われました。お金のない騎士はサレットだけ、あるいはビーヴァだけ(特に軽騎兵に多い)でイクサに望みましたが、裕福な騎士はサレットとビーヴァを両方着けて、このような感じのヴィジュアルを獲得します。

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現代人が想像する「フルプレートアーマーでランス持って突っ込んでくる騎士」のイメージはだいたいこれです。ゴシック式甲冑と呼ばれるもので、15世紀に使用されました。ロングソードが使われたのもこの時代です。アーメットとサレットはランスやロングソードを使うニンジャを作りたい時に是非被せてあげてください。

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補足になりますが、これはマクシミリアン式と呼ばれる甲冑で、1520年代のごく短い時代にだけ使われました。ヘルムの形式はアーメットです。近接武器に対する最高の防御力と軽さを実現したこの甲冑ですが、同時期に銃器が発達したためすぐに廃れてしまいます。おのれテッポ・ニンジャクラン。


バーゴネット

マクシミリアン式が廃れる=銃器が発達するのと同時に、視界が広い兜が求められるようになります。サレットにせよアーメットにせよ、視界の悪さは悩みの種でした(それ故防御力は高いのですが)。それにアーメットは構造故に高いし。

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そこで開発されたのがバーゴネットという形式です。1520年頃から使われ始め、17世紀まで生き残ったロングセラー商品です。

サレットの簡便さを引き継ぎつつ、可動式の頬当て、そして帽子めいた「つば」が追加されています。これは当時の歩兵は槍のど付き合いをしていたのですが、槍を振り下ろされた時に顔面の保護になる上、突かれても下を向けば「つば」がある程度顔面を守ってくれるという、ローコストながら優れた代物でした。

しかしやっぱり顔面が空いてるのは不安だったのか、面頬付きのバーゴネットが登場し、特に拳銃を持った騎兵(レイター)の間で流行します。

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マクシミリアン式の名残が見える、初期のバーゴネット

そう、拳銃持った騎兵が戦場を跋扈していたのです。ピストルカラテが生まれたのもきっとこの時代です。

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さらにこの形式は17世紀の30年戦争の頃にはこのような形にまで発展します。この形は特別にTotenkopfkopf(トーテンコプフ/独:骸骨)と呼ばれます。いかにもニンジャが被ってそうじゃないですか? これが拳銃と片手剣持って近づいてきたら僕は失禁します。


おわりに

以上でニンジャが被ってそうな中世の兜・フルヘルムメンポの紹介を終わります。これ以降は戦列歩兵の時代になり、フルヘルムじゃなくなっていくので…。 少しでも解像度の高いニンジャのヴィジュアル構築の助けになれば幸いです。それではアディオス!


参考

メトロポリタン美術館  写真がキレイ。
ロイヤルアーモリーズ美術館 収蔵数が多い&写真がキレイ、解説も詳しい。
ウィーン美術博物館  装飾が華美なものが多い。ドイツ語が読めれば解説も詳しい。
写真とイラストで見る西洋甲冑入門  国内で一番新しい甲冑本。
Historische Waffen und Rüstungen ドイツ語のイラスト本。情報の精度が微妙だが眺めてるだけで楽しい。

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