戦闘描写に関する備忘録

これはなんですか?

剣と魔法のファンタジー小説を書いていて避け得ないのが戦闘描写である。しかし(私論ではあるが)小説という媒体は戦闘という複雑な状況を描くのに向いていない。しかし読みやすい形にして書かねばならない、という問題がある。
これはその問題に対する自分なりの回答を、備忘録的に記したものである。


ベースとなる文章

Aはストレートを繰り出した。Bはそれを捌き、ジャブ、ストレートで反撃した。Aはジャブこそガードしたがストレートが腹に決まり、身体をくの字に曲げる。しかしAは身体が曲がる動きに合わせ、拳鎚を繰り出した。上半身の体重が乗った拳がBの頭に直撃した。

この状況をベースに考えてみる。なおこれはいわゆる「台本型」の描写で、誰が何をしたのか単調に書き連ねただけのもの。単調ではあるが状況がわかりやすいので、一概に悪い描写とも言い難いように思う。
しかし戦闘にしてはスピード感がないのは事実であるので、少し手を加える。

スピード感を重視した形

Aのストレート。Bは捌き、ジャブとストレートで反撃。Aはジャブこそ防ぐが、続くストレートを腹に受ける。身体がくの字に曲がる。しかしその動きを利用し、拳鎚を繰り出す。体重を乗せた拳が、Bの脳天に沈む。

スピード感を出したい時は一文を短くする。人物を示す名詞や指示代名詞は極力省き、可能なら体言止めを使う。
また、一文を短くすると詰め込める情報量が少なくなるため、一部単語を変更して情報を補う。例:「直撃した→沈む」として拳の重さを補強するなど。

さてこれでスピード感は出たが、別案として描写速度(解像度)に緩急をつけた描写も作ってみる。というのもスピード感ある描写は、決戦時など重要な戦闘時には「味気なく」感じられるからである。
また、一文が短いとブツ切り感が出てしまい、テンポが良いとも言い難い。ここも手を加える。

緩急をつけた形

Aのストレートは捌かれ、Bは矢継ぎ早に反撃のジャブとストレートを繰り出した。Aはジャブを防ぐが、続くストレートを腹に受けてしまう。臓腑を突き抜ける衝撃。足が地を離れる。肺腑から空気を吐き出しながら、しかしAは拳を握っていた。激痛でくの字に折れる身体の動きを利用し、固めた拳をBの脳天に叩き込んだ。

ピンチと、逆転する瞬間だけ解像度を上げた」形。文章全体の解像度を上げると長くて読みづらい文章になるので、前座的な攻防は簡潔めにする。
また、「Aのストレート。Bは捌き、」→「Aのストレートは捌かれ、」のようにまとめられる文章はまとめてしまい、ブツ切り感を軽減する。

ただし文章をまとめる行為は文章が目から滑る状態になりやすい。そのため、目が滑ってもよい部分(つまり解像度が低くてよい部分)に重点的に使う。

あとは適当にそれっぽいセリフをねじ込めば、そこそこ読める戦闘描写になるのではなかろうか。

おわりに

なおWEB小説においては、余程上手くやらないと戦闘回で高評価を得るのは難しい……というか日常回の方が好まれるのが現状である。キャラ同士が会話してるほうが楽しいもんね。
というわけで、戦闘はあっさり済ませてしまう(例:Aは多少の攻防の後、Bを打倒した で終わらせてしまう)のも手だと思う。身も蓋もないが……。


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