プラークは存在する。グレーと共に。
中間色が好き。鮮やかな色彩にも憧れはあるけれど、なんだかんだでどちら付かずの「間」な感覚が落ち着く。紺青とか紺藍とか、赤丹とか赤墨とか黒紅、海松色、そしてなんと言っても灰色のような中間かつ濃い色を好む。
馴染みやすさ、合わせやすさ、ファッション的には地味だけど扱いやすい。おまけに髪の毛もグレーヘアときたもんだから、尚のこと灰色=グレーが馴染むようになってきた。
多様な色が重なっているかのような奥行きを感じるが、漆黒ほどの遠い奥行きはない。付かず離れずのその奥行きが生み出す空間の包容力と、なんとも言えない曖昧さが、当たり障りのない無難なセンスを代弁する。考えようによっては便利な色彩であるし、スマートである。
そしてこのグレーという感覚的な概念は決して色彩だけの話に止まらない。
グレーゾーンということについて話題になった時に、それはなければならないものだということを再認識した。
それは曖昧であり、どちらでもありどちらでもない、捉えようによっては空虚なもので、使いようによっては便利なもので、社会の中で暗黙のうちに共有されるものである。
グレーな要素があることにより、あらゆるもの事の流れをスムースに進めることが可能になる。グレーがなくなったとして、白か黒かの世界になったと想像してみるとお分かりいただけるだろうか。そんな世界は人間の社会にも、自然界にも成立しないと思っている。
プラークと名付けたもの
道路上における障害物という存在をプラークと名付けようと思う。
ここでいうプラークとは、道路上における電柱や工事現場、路上駐車の車両や、それを避けて膨らむサイクリストや、今時で言えばE-スクーターに乗る人たちの動きのことを言う。
要は誰かの通行の妨げとなるもののこと。
静と動、スピードの異なる物体が限られた空間と時間を共有するためには、その時その場所に集積するモノの存在を認め合い、限られた空間、あるいは時間をうまく分け合うことで共存が可能となる。
歩く人は歩道を、車を運転するときは車道を。これは分かりやすいし分離されている。(ただし歩道は日本の道路の総延長距離に対して15%しか整備されていないが。)
しかし、およそ150年前に、車より先に、モーターバイクより先に日本にお目見えした自転車のポジションはとても曖昧な状況に置かれていることは多くの方が周知の通りである。
つまり、道路を作るときに自転車の存在は想定されていなかったと言って良い。存在を知りながらないものとして捉えられていた、なんなら未だにそれは圧倒的無関心な事柄であり、問題視する人はいるがそんな人はごく少数であろうし、何かトラブった時だけ社会的問題として扱われる。
想定外の物事というのは、想定された社会からはないものとされているわけだから、形成された社会システムに適合しない。
ずっとあるモノでありコトであり、日本人の多くの人が利用する移動手段なのに、想定外とされていると言うことは社会の暴力と言っていいと思うが、その想定外のモノたちの居場所というのはどこにあるのかというとグレーゾーンなわけである。
今は時代が変化しようとしていて、道路整備に新たな取り組みが始まっている。自転車に乗る人たちの走行空間をちゃんと定めようという動きであり、自転車活用推進法に基づいた動きであるが、様々な立場から賛否があるだろう。
神経質な自転車愛好家は口を揃えて言う。
「自転車レーンに路駐している車をどかせ!」「自転車レーンなんか作ったってどうせ車が塞いで通れないじゃないか!」
ごもっともなように聞こえるかもしれないが、プラークの存在自体は当たり前だろうと言いたい。車だって止めるところが十分にあるわけではないし、想定外のことなんていくらでもある。日本の限られた道路空間できっちり棲み分けすることなんて不可能だと思うし、こうでなければならん!と言う声が目立ってしまうのはよろしくない。
こんなものは簡単なことで、「避けて通ればいいじゃん!」である。
「避けて通ろうとする人を、譲ってあげればいいじゃん!」である。
線を引いたらそれでお終いじゃないのよ。空間を共有し、時間を譲り合うと言うことである。
融通の効かない凝り固まった考え方、つまり白か黒かはっきりさせようという姿勢が、それらを問題に仕立て上げているだけのこと。
心にも空間にもグレーゾーンは必要なのである。
グレーな領域の中でのコミュニケーションが物事の流れを円滑にするし、ストレスを軽減する。
プラークは必ず存在する。それをスマートに避けて流れることに移動の美学があり、グレーな領域で共存することが美しいのである。
暗黙の了解とでも言うのだろうか。お互いわかってるよねって、ありがとねって、言えたらそれでいいじゃん。
だから私はグレーを必要とするし、その居心地の良さが好きなのである。
#findyourownroad #choosecycling
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