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#1000 脳のアイドリング活動について

意識を集中させていない時でさえ、人間の脳は活動を続けています。神経科学の研究によれば、メンタルアクティビティが低減している時であっても、デフォルト・モード・ネットワーク(Default Mode Network, DMN)と呼ばれる脳の領域が活発に機能し続けることが示されています。DMNは、自己関連の思考、未来に対する計画、過去の出来事の反省、人間関係における相手の視点を考慮するなど、いわゆる「マインドワンダリング」の状態における様々な内省的活動に関連しているとされています。

このアイドリング時の脳活動は、意識的な課題に取り組む際の脳機能にとって非常に重要です。DMNの活動は創造性とも関連しており、問題解決や新しいアイデアの生成において、意識的な集中だけではなく、無意識的な思考の流れが肝要だと考えられています。また、人はこのアイドリング状態で自己と自己の人生について深く考えることが多く、自己認識や社会的な自己理解を深める過程において、この無意識下の脳活動が大きな役割を果たしているとされます。

さらに、別の観点からはこの状態が精神的な健康状態にも影響を与えるとも指摘されています。DMNの過剰な活動は、うつ病や不安障害といった精神疾患と関連している可能性があり、心の健康を保つためには適度なメンタルのアイドリングが必要であると言えるでしょう。

このように、人の意識がアクティブな状態にない時であっても、脳内では様々な処理が進行しており、これらは私たちの思考、感情、創造性、さらには精神衛生にまで大きく関わっています。神経科学的視点から見れば、休息をとっているように見える脳も、自己理解や感情調節のために忙しく活動しているのです。

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