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FIVESTARS MAGAZINE 006 ゼラ INTERVIEW

 毎回、作品ごとに様々な表情や世界観を楽曲やアーティスト写真で表現をされているイメージがあるゼラの皆さんに本日はファーストシングルから最新作までを順番に辿りながらその魅力をお伝えできるインタビューが出来ればと思ってます。
まずはゼラというバンドがどんなコンセプトで活動されているのかをお聞きしたいです。
氷翠 ゼラはゼラニウムという花の名前がバンド名の由来になっていて、その花は色によっていろいろな意味の花言葉があるんですけど、それと同じように僕達もいろいろな色を出せるような、その作品ごとのコンセプトで自分たちの表現する姿や音楽を届けたいという思いを込めてます。
 少し失礼な言い方かもしれませんが作品毎にコンセプトが異なるので活動しながらゼラとして模索しているわけではないんですね。
氷翠 もちろんです。様々な色を見せていきますが、ちゃんとバンドとしてゼラとしての軸となるものはまっすぐ立てた状態で見せていけたらなって思っています。

「エリカ」
 なるほど。では本日はアー写、作品ごとに順番にゼラのこれまでの歴史をたどっていきたいのですが、まずは二〇二〇年二月にファーストシングル「エリカ」を発表されて始動となるわけですが。この作品を発表された当初を振り返っていただいてお話をおうかがいできますか。
Aqui 「エリカ」に関してはというか、他の曲も一緒の部分はあるんですけど、とにかく今誰もやってないことをやりたいっていう思いで一番最初は路線決めしたんですよね。もともと僕もゼラに入る際に、過去に色々バンドやってきて、一辺倒にずっと同じような曲というか、同じようなジャンルで縛ってしまって、例えばコテコテの重い暴れる系でずっと攻めるみたいになると、一番最初の表題曲がクオリティが高くて、二番目、三番目はライブ用の曲で、普段聴くにはちょっと聞き応えがないというか、サブ曲みたいな扱いになりがちなことが多かったんですよね。もうそこを取っ払ってしまって、その時に俺たちがやりたい事をやろうって曲を三曲構成すると、結構いろいろな曲ができるよねって、いろいろな自分たちを見せれるよねっていうところで、曲が決まっていって、「エリカ」は自分が書いたんですけど、ドラムだけすごいメタルなんですけど、それ以外は歌謡系の曲っていうのをガッツリ押し出してやってるバンドっていうのは、パッと見たときにそんなにいなくて、なんかいけそうだなって書いたのが「エリカ」だったんですよね。
 最初の一枚目っていうところはどこまで意識されたのでしょうか。
Aqui 出だしって大事じゃないですか。例えばスポットとか、"僕たちバンドやります"って最初に多分トレーラー出すと思うんですけど、その時に期待してるお客さんって結構未知数というか、めちゃくちゃ数が多いと思うんですよ。それを"なんかいつも通りの感じのバンド出てきたな"っていう風には思われたくなかったんですよ。"よくあるバンド出てきたなみたいな"っていうのは思われたくなくて、こういう系で来たんだっていうのを、ちょっと色が違う部分を見せたかったので「エリカ」に関しては特に意識したかなって思います。
 氷翠さんは当時を振り返っていかがですか。
氷翠 そうですね、いろいろな色を出していくバンドとして始動したんですけど、実際自分がボーカルとしてどれくらいの振り幅を見せられるかとか、どういう表現をやっていけるかというのも、最初なのではっきりは分からないじゃないですか。なのでコンセプトとして少し歪んだ恋愛観みたいなものを作品の中で統一させつつ、曲としてはシングル三曲の中で三色の表情が出せるように作っていったっていう感じですかね。歌い方も一曲一曲テイストを変えてみたりとか。
 ミナギさんは当初を振り返っていかがですか。
ミナギ 特に僕はボーカルを一番大事にしたいなと思ってて、ボーカルがよく聞こえるような音域であったりとか、見た目もそうですし、音楽ジャンルも僕は結構幅広く好きなので、とにかくボーカルのメロディーが一番かっこいいものを持ってきたかったっていうのはありますね。当初はもうバンドをできることがすごくありがたかったというか、なので絶対こういうジャンルじゃないといけないんだとかみたいなものはなかったので、「エリカ」自体もすごくメロディーもいいし、カップリング曲もメロディーがすごくいい曲だと思うんで正直かっこよければなんでもよかったぐらいの気持ちではありましたね。(笑)
 なんでもよかった?(笑)
ミナギ ちょっと誤解を生むような言葉ではありますけど。(笑)
氷翠 でもわかります。(笑)ちょっとそれに近い気持ちはありましたね。(笑)
ミナギ そうです。かっこよくて面白けりゃとりあえず最初はそれでいいんじゃないかと思ってましたね。(笑)
 なるほど。流さんいかがですか。
 そうですね、なんか、思い返せば結構色々悩んでた時だったような気がしますね。バンド名しかり、曲やライブにしろ、どうして行こうかみたいなものを悩みに悩んだ末に出したので。でも結果、今あまり僕ら界隈ではやってないことをできたのでよかったんじゃないかなとは思いますね。印象に残ったファーストシングルだったんじゃないかなと思ってます。

「キセルの華」
 ファーストシングル「エリカ」から四か月程経って発表されたのはミニアルバム「キセルの華」ですね。二作品目にして最初のアーティスト写真のイメージから一変して和の作品になっていますね。ガラッとイメージが変わりました。
氷翠 これは完全にあえてですね。変化があった方が面白いっていうところからこのミニアルバムの"和"のコンセプトも生まれました。挑戦したいって気持ちを強かったし。メロディーだったり、聴きやすくてキャッチーでノリやすくてみたいなところは変わらず、その風味とか衣装とか、ヴィジュアルコンセプトを和に寄せてやってみたっていう感じですかね。
 このミニアルバムには「ドグラ・マグラ」をはじめとする、僕個人的にはゼラの代表曲が多く入っているイメージです。
氷翠 「ドグラ・マグラ」はライブの定番曲になってますね。
 ほかの曲もサブスクでもトップソングの上位にいずれも入ってる曲が多くゼラにとって、今振り返ってもこのアルバムは代表作と言えるのでしょうか。
氷翠 そうですね、このアルバムが軸となって、この先のゼラ、「キセルの華」をリリースした後のゼラの作品に多大なる影響を与えたとは思ってます。雰囲気というかノリ感というか、このアルバムに収録されている五曲もすごく振り幅があって、実際にライブをやることで自分たちはこう映るんだっていうのを知れたっていうか、あとはボーカルの音域も、バンドによっていろいろなやり方があると思うんですけど本来だったらボーカルのキーに合わせてメロディーを作ったりするところって多いような気がするんですけど、そこを考えずに自分の音域よりも高いところでメロディーを作った曲があったりとか、逆に低いところで聴かせたらどういう感じになるかみたいなのも、曲調だけじゃなくて、そういうところでも振り幅を作ってたりとか。このあたりから自分たちに限界を作るっていう考え方がゼラの中で完全になくなったという印象ですね。
 同じアルバムの中でもかなり色んな挑戦をされてるんですね。
氷翠 かなり挑戦しましたね。「涙音」だったら、Aquiが女性キーで歌って欲しいっていうから。(笑)
全員 (笑)
Aqui 言った言った言った言った(笑)
氷翠 いや、でも高いから歌えないって言ったら、自分たちはそこでなんか止まっちゃうんじゃないかみたいな感覚になっちゃって、歌えないなら歌えるまで練習しようみたいな感じで。(笑)それでレコーディングまで歌いこんで、かなり高い所のキーだったんですけど、綺麗に歌えるように発声方法とかも試行錯誤しながら試してみたりして。この頃から発声の魅力に取り憑かれてきたというか、もっといろいろな声を出したいみたいな欲が出てきて。(笑)
 Aquiさんはどうですか当初振り返って。
Aqui バンド的にはやっぱり一作品目と同じように違う自分たちを見せたかったっていうのがまずあって、すごく個人的なことにはなっちゃうんですけど、僕大体めっちゃいい曲できたなっていう時って、お風呂に入ってるときに頭の中に全部流れてくるんですよね。ドラム、ギター、ベース、動機とかも流れてきて、それを大体いつもお風呂あがって頭乾かしてるときにドライヤーの音で忘れちゃうんですよ。すごいいい曲だったのにみたいな感じになるんですけど、この「涙音」だけはずっと残ってたんですよ。それで翌日もお風呂入った時に、やっぱりこの曲が浮かんでて、また頭乾かしてるときにもやっぱり残ってるわってなって。これ、絶対いい曲だと思うから書こうってなって、かっこいい曲だからみたいな感じで提案したら、メンバーみんな受け入れてくれて、さっき氷翠が言ってましたけど、彼が男性なのはもちろん承知の上なんですけど、やっぱり高めのキーがどうしても必要だったんですよね、曲のエッセンスとして。で、ちょっと女性キーとまでは言わないけど挑戦してみてくれないかって提案したら僕の中では最高の答えが返ってきたなっていう印象ですね。
 わかりました。それだけのいい作品になってますもんね。
Aqui そうですね。今だにやっぱり好きって言ってくれる子がいるし、「涙音」だけじゃないですけど、他の四曲を聞いてても飽きないし、挑戦もしてるし、なによりバランスがほんとに奇跡的にいいなって。二作品目でミニアルバムで五曲で、新しい挑戦をしているにもかかわらず割と奇跡的な五曲だなっていう風に僕は思ってます。

「黒よりも暗い黒」
 素敵なお話をありがとうございます。「キセルの華」を発売されてその半年後、今度は「黒よりも暗い黒」を発表されています。今度はいきなり真っ黒なイメージのアー写の世界観ですね。
氷翠 これもギャップを狙ってやりました。期待を良い意味で裏切ってやりたいといった感じです。コンセプトは次どんな作品にしようかっていうのをメンバーで話しながら作ったんですけど、自然にメンバーがやっぱり次の三作品目はこうだろうみたいなのがある程度、見えてきてたというか、やっぱり一作品、二作品目で結構振り幅を作って、ライブをやっていく中で、もう次はこうだろうみたいなのが固まっていってたような気がしてて、「キセルの華」ってすごい鮮やかで、綺麗な印象があるミニアルバムだったなって思うんですけど、真逆のどす黒い、重い、ダークっていうところをイメージして作りました。あと、このあたりから僕は新たにデスボイスをかなり取り入れるようになりました。もともと苦手意識がある表現方法だったんですけど、そういうコンセプトにするって決まった時から練習して、それこそYouTubeとかで”デスボイス”、”出し方"みたいな感じで調べて。(笑)あとは「キセルの華」の時に女性キーを挑戦してたんですけど、そのさらに上をいくハイトーンも取り入れてという感じで(笑)ちょっと、あれですね。このあたりから僕の中で表現意欲の暴走が止まらなくなってきてたと思います。誰も歌えないような歌を歌ってやろうみたいな。(笑)
 作品ごとに毎回ボーカルのスタイルも変わるので、ほんとに毎回挑戦しながらやっていくっていう感じになりますよね。
氷翠 そうですね、ほんとにボーカルだけじゃなくて、バンドとしてもどんどん進化していけるバンドだというのを見せつけてやろうって。
 前作は”和"だったのに、今回は”真っ黒”ということでファンの方からはどのような反応が返ってきましたか。
ミナギ そうですね、僕たちはやっぱりヴィジュアル系バンドなんで、「エリカ」、「キセルの華」はヴィジュアル系の枠から少し離れたではないですけど、別のエッセンスが加わった作品となってましたけど、「黒よりも暗い黒」あたりからは古き良きヴィジュアル系みたいな要素も取り入れつつあったので、こういうの待ってましたみたいな声も多かったですね。もちろん驚かれた方は多かったと思いますけど。(笑)
 戸惑いよりもちゃんとついてきてくれてる感の方が強かったんですかね。
ミナギ そーだと思いたいですね。(笑)
全員 (笑)
ミナギ まあでもそこに関しては、今となっては着いてこれるやつだけついてきたらいいんじゃないかなっていうぐらいの心持ちで、とにかく自分らがかっこいいと思ったものをこれからも追求し続けるというスタイルなので、そこまで僕は気にしてないです。

「月蝕」
 いまミナギさんのお話にも出ましたがヴィジュアル系の要素を取り入れつつというお話もありましたけど、次に通販と会場限定で販売されたシングル「月蝕」も王道のV系サウンドという印象で、衣装もアー写もそういう印象を受けました。
氷翠 この作品は、二曲とも始動の時からライブではやっていた曲で、音源化はされてなかったんですけど、このタイミングで音源化した二曲ですね。ほんとに二曲とも、今のゼラを象徴させるような、これぞコテコテなヴィジュアル系といった感じです。

「KIRAI」
 そして、二〇二一年七月に「KIRAI」が発表になります。fiveStarsとしては、実はこの作品でゼラのみなさんへの注目度がグッと上がった作品でもあります。これまでで最もポップで聴きやすい作品になってるかなと思うのですが。どうした?っていうぐらいの変わりようでした。(笑)
全員 (笑)
氷翠 これも一つの挑戦みたいなものですね。オシャレでジャジーな雰囲気というか。そういうテイストもやれちゃうんだよみたいなところを見せたかった。(笑)
 なんか、より間口を広げたいねみたいな話をしてた記憶がある。
氷翠 あーそうね。そうそう!
 ね。多分そういう話の末に、「KIRAI」が出来ていった記憶がありますね。
氷翠 思い出してきたんですけど、たしか間口を広げるっていうか、その時僕らのイメージってどっちかって言ったら黒いバンドみたいなイメージが強かったような気がするんですけど、そういう黒いバンドが好きな人たちにもアプローチ出来るようなポップさを作ってみたかった。あとはライブでもこのあたりから曲数も増えてきて、ワンマンとかのセットリストを作るときに幅というか、起承転結みたいな流れを考えるようになって、こういう曲があったら面白そうとか考えてました。
 次をどうしようかって考えたときに、幅広い人に聴いてもらいたいみたいなものがあって、氷翠くんのこの曲がいいじゃないかみたいな感じの流れだったんじゃないかなと思いますね。カップリングの「ローマングラス」もミナギくんの曲で、差別化というか、うまい具合になってるんで、それもいい味が出てる一つの要素なんじゃないかなと思いますね。
ミナギ 特に一曲目の「KIRAI」なんですけど、この時からすごい多種多様な音色を取り入れるようになって、ブラスバンドの音とか、効果音とかいろんな面白い音を取り入れていこうってなって、豪華な作品に仕上がったんじゃないかなって思いますね。
氷翠 音色の数がえげつないですね。(笑)
ミナギ だから、今のゼラを構成している基盤になった作品と言えますね。この「KIRAI」からゼラの音っていうのがひとつ固まってきた感じはあります。まるで映画音楽を聴いてるような。ライブも映画を意識したような演出だったりとか、効果音とかね。そういう一つのストーリーがあるような作品にしていこうってなったのもここからです。このあたりからミックスの時にエンジニアさんにちょっと嫌がられるようになった。音色が多すぎて。(笑)
全員 (笑)
ミナギ 別に今までも少なかったとかそういうわけではないんですけど、急にめちゃめちゃ増えるっていう(笑)
氷翠 また新たな暴走がはじまってしまった。(笑)

「マリオネットパレード」
 そんな暴走の中、そこから半年後に発表されたのが「マリオネットパレード」ですね。
ミナギ そうですね、この暴走がさらに止まらなくなって出来た作品ですね。(笑)
氷翠 暴走が止まらなくなって行くところまで行ってしまった感じの。(笑)
全員 (笑)
 いやでも「KIRAI」からこの「マリオネットパレード」は、fiveStars的にも好きでしたね。
一同 ありがとうございます。
ミナギ スタイルが確立された感はありますよね。
氷翠 暴走が自分たちのスタイルになった瞬間です。(笑)
全員 (笑)
氷翠 この曲は、僕が個人的に好きな世界観というか、こういうのが趣味で、それをゼラでやれたのはめちゃくちゃ楽しかったですね。
 すごく衣装も似合ってるなと思いました。
氷翠 ありがとうございます。アリスインワンダーランドのような世界観がすごく好きでそういうのをパフォーマンスとして取り入れたりとか出来たので楽しかったですね。
 なるほどですね。Aquiさんはこの作品を振り返っていかがですか。
Aqui いやぁなんだろう。。。僕は個人的には正直、ちょっとついてこれてなかったっす。(笑)
全員 (笑)
Aqui いや好きなんですよ。曲も、雰囲気もめちゃくちゃ好きなんすけど、ただ「KIRAI」の時もそっち行くんだって感じになったんですよね。僕も好きなスタイルでもあるし、そこから「マリオネットパレード」ってなった時に、そうなるんだみたいな。なんか若干お客さん目線じゃないですけど。(笑)もちろんかっこいい曲だと思って出してるんで、めちゃくちゃ印象はすごい強いし、ゼラの一つの色として基盤となってるシングルになってるなっていうのと、あと衣装がこの時は個人個人で自分の好きなスタイルをやろうみたいなっていう風になってて、それが結構はまってたと思うんで、いろいろな意味で印象に残ってる曲で楽しいシングルだなっていう風に思いますね。
 今お話しもありましたが、メンバーさんもついてくのが大変ですよね。
Aqui 多分、各々考えることはいっぱいあると思うんです。考えることはあると思うんですけど、ただ別にそれがじゃあ間違ってるかって言われたら間違ってないと思いますし、間違ってるなら多分、"いやそれはちょっと違くない?"っていう話になると思うんですけど、それをメンバーが聞いて、"いいんじゃない"ってなってここまで来れてるんで。
 今までぶつかったことはないんですか、次の展開みたいなもので。
Apui ぶつかってる、ぶつかってないっていうと、多分ずっとぶつかってるんですよね。やっぱりいろいろな色を見せるってすごく難しいんですよ。特にヴィジュアル系ってやっぱりもうジャンル分けされてるわけじゃないですか。コテ、オサみたいな感じで。でもその枠を取っ払って僕らはヴィジュアル系をやっていきたいんで、やっぱりぶつかるのはぶつかるっていうか、次はこれどうなるんだみたいなっていうのはやっぱり悩みますけど、やっぱりそこで誰か絶対正解を出すというか答えを出してくれる。
 全員が納得する道筋が誰かしらから出てくるわけですか。
Aqui そうですね。まあ四人で作曲してるっていうのもあって、誰かが絶対その道を示してくれるっていう。それが自分であったり、氷翠であったり、ミナギであったり、流であったりっていうのは、その時によるんですけど、でも絶対誰かが示してくれて、それでみんなでじゃあその作品に対して全力で臨んでいこうっていう気持ちでやってる感じですね。

「絶望」
 ありがとうございます。さあそして二〇二二年に入って、「KIRAI」や「マリオネットパレード」からの「絶望」と。(笑)
全員 (笑)
☆ 「KIRAI」や「マリオネットパレード」からゼラに入った人が結構いると思うんですけど。
Aqui いますねえ。このあたりから多分ついてこれなくなった人が多いんじゃないかな(笑)
 そんなこと言っちゃダメです。(笑)
全員 (笑)
 氷翠さん、どうしてこうなっちゃいました?(笑)
氷翠 そうですね。ここまで来ると枠にはまった表現というのに満足できない身体になってしまってたんですよね。この時は感情が爆発してしまって、なんというか創作意欲とか表現意欲みたいなものが抑えきれなくなって、今まで過去に自分が感じてきた辛かったこととか、悲しかったこととか、そういうのを作品にぶつけたくて、ライブで自分はみんなに何を伝えたいのかっていうのを今一度自分で考え直して、自分の思い出したくないような過去を歌おうって。自分の過去を自分で歌うことで、そしてそれを受け入れることで、さらに前に進んでいけるんじゃないかって。さらに自分自身にも言いきかせられるような、そんな作品です。この作品に込めた想いはすごく熱いものがあって、その想いが強すぎるがあまり今まではかっこいいっていうのが基盤にあったんですけど、今回はもうかっこよくなくていいからとにかく感じるままに、泥臭く、ありのままを枠に囚われず表現したいと。それが「絶望」です。

 どのタイミングでゼラの世界に触れるかっていうタイミングにもよると思うんですけど、いずれにしても作品ごとにちょっとコンセプトが違うので、戸惑うファンも結構いるような気がしますが、こうしていろいろな表情を見せてくれるゼラが常に一貫しているものとはどんなものなのでしょうか。
氷翠 こういうスタイルでやってきて、一番最初にゼラとして大事にしてたものって、ヴィジュアル系としてのかっこいいを突き詰めていくっていうところであってそれは今も変わってないんですけど、それに加えて、やっぱりゼラってライブで見て聴いてこそのバンドだと思うんですよ。もちろん音源も自分たちが最高だと思えるものを作ってるんですけど、やっぱりライブでこそ、僕たちの生の音を聞いてもらって、直接観てもらって、そこで何か感じてもらいたいって意識するようになりましたね。一番最初に「エリカ」をリリースして、ライブをやり始めて、コロナ禍になって、色々制限を食らうようになって、でもその中でも、ライブで楽しんでもらいたい曲があって、見てもらいたい演出があって。始動した時期もあって色んな人に「大変だね」って言われることも多かったんですけど、別にそれはバンドやってない人もみんな大変だし、だからこそそういう人になにか伝わってほしい、こんな時代だからこそライブがないとダメだなって、ライブがあるから生きていけるんだなってそう思ってもらえるような場所を作りたい。これは自分たちにとって、きっとこれからも変わることのない大切な軸になってると思います。
 なるほど。作品毎でいろいろな色をみせるけど、ライブを見てもらえれば、一貫したものがちゃんと感じ取れるっていうことですかね。
氷翠 それは間違いなく感じ取れると思います。ちょっと情緒は不安定になるかもしれないですけど、楽しくなったり悲しくなったりって(笑)
全員 (笑)
氷翠 でも、最後には今日ライブ来てよかったって思ってもらえる、そこは絶対に保証できるんで。 
Aqui 僕もライブはもちろん意識してて、ワンマンの時だったり、対バンの時だったり、曲数とか変わるんですけど、俺らを見てくれたお客さんがしっかりちゃんと満足して楽しかったって言って帰れるようにしたいんですよね。そこもありながら、やっぱりヴィジュアル系って音楽やっててやっぱりアーティストでいたいんですよね。これだけの振り幅の曲を俺たちがやってきて、曲が合ってないとかそんなことも言われたことないですし、なんかほんとにそのかっこよさ、自分たちのやりたいこと、欲望とか、伝えたいことをっていうのを一貫してこうやって音源化して世の中に出せてきたっていう信念が譲れないところというか、これからももちろんそうですけど、なんて言うんでしょうね。"あなたの知らない世界を見せてあげます"っていうのが、僕はこのバンドにすごく似合う言葉なんじゃないかなって。非日常というか、それはゼラに来ないと味わえないんだよっていうのを、やっぱりこれからも、今までもみせてきた、みせていきたいってところが信念ですかね。
ミナギ 僕は変な言い方になってしまうんですけど、ゼラというものはいろいろな曲調だったりとか、テイストの曲があるんですけど負の感情を歌ってるんですよ。もちろん前向きな一面もあったりはしますけど、やっぱりその人の感情といいますか、恋愛だったりとか、友情だったりとか、人生だったりとか、仕事だったりとか、そういう生きてて避けては通れないような出来事だったりとか、そういういろいろな負の感情がどの曲にもあって、だからダメなんだとかではなくて、それを逆にプラスにライブとかで僕らが表現することによって、逆に明日も生きてみようと前向きにさせてあげれるような。だからゼラってかっこいい、華々しいみたいなイメージがあるかもしれないですけど、実はものすごく負の感情だったり、出来事だったりを表現してるバンドなんです。
 僕も大体みんなと同じようなところではあるんですけど、ライブを見てもらって、普段の仕事とか、学業とか、そういうものに対して頑張ろうって思ってもらえたり、元気になってまたその各々の辛い日常に立ち向かっていっていただけたらいいなっていうのは、昔から一貫してあるところではありますかね。個人的には結構、歌詞も書かせていただくことがあって暗い曲とか、暗い歌詞も全然あるんですけど、最近は結構なんか前向きな歌詞が多くなってきたような気がしますね。

「XIDE SCOPE」
 それでは、作品ごとに辿ってきましたが、最新作「XIDE SCOPE」です。僕の印象ですが今までゼラから世界観的には良い意味で一周回ったかなというイメージです。
氷翠 今まで作品をリリースするたびにいろいろな場所を旅してきたかのような、そんな感覚になるんですけど、その旅先でどんどん装備とか、装飾品とかを手に入れて、強くなった姿で故郷に戻ってきたみたいなイメージかな。過去作でいろいろな色を見せてきて、今までは割と振り切ってることが多かったんですけど、その一つ一つに良さがあって、その良さをいいバランスでブレンドして出来上がった作品が「XIDE SCOPE」であるっていう風に思ってもらえたらわかりやすいんじゃないかなと思います。
 確かに楽曲としても、今までの楽曲を全部集約して、それを一気にこの三曲に集めたみたいな印象がありますね。
氷翠 そうですね、おいしいとこどりですね。幅広いことをやってきただけに、やっぱり自分たちも作品リリースするたびに何かしら挑戦しなきゃいけないんですよ。出来ないことでも出来るようにしなきゃいけないみたいな。"こんなの絶対弾けねえ”、"こんなの絶対歌えねえ”みたいなことでも今まで恐れずにやってきたんですけど、それがなかったら絶対生まれなかっただろうなっていう作品だと思います。
 「XIDE SCOPE」はAquiさんの作品ですよね。
Aqui そうです。これすごい、ぶっちゃけた話をするんですけど実は「XIDE SCOPE」の一曲目は本当はボツになる予定だったんですよ、僕の中では。
 そうなんですか。
Aqui そうなんですよ。次の作品に向けて曲を書いていくっていうのは、常々みんなやっていくんですけどその中で「XIDE SCOPE」の元ができて、タイミング的にこれはもう今後出ていかないかなと思っていたらメンバーから、"これA面で良くない?"っていう話をもらって、急ピッチで出来上がっていったのがこの「XIDE SCOPE」なんですね。僕の中では全然想定外だったんですけど、自分も一作曲者としてレベルはどうであれ、自分の書いてった曲はかっこいいと思ってメンバーに渡してるんで、メンバーにそう言ってもらえたんだったらじゃあかっこいい曲なんだってなって出した一曲ですね。ノリ的に結構ヴィジュアル系、それこそ全盛期くらいに流行ったようなテンポの曲ではあるんですよ。でもその当時のよくあるサウンドっていう感じに聞こえさせたくなくて、転調とかフレーズとかで結構細工をしてありそうでないよねっていう。でもちゃんと曲としては入ってくるよね、違和感ないよねっていうような仕上がりにしてます。ボーカルの一番いいところがサビにくるようにしようって氷翠と話して、結構無理矢理な転調をかまして、サビで氷翠の一番いいところが出るようにして、またメインリフに戻った時に、違和感なく転調して戻ってっていうのを繰り返してラスサビでまた半音上がるんですけど、その半音上げもなかなかちょっと難しくて、それもある意味挑戦だったんですけど、最後に氷翠が半音上げて歌いたいっていうんで、じゃあそうしましょうって結構いじくりまわした曲というか、すごく煮詰めていった結果できた曲ですね。ものすごく手がかかっている曲です。
 たしかにこの一曲にゼラの良さがいっぱいいろいろな所に詰まってる感じがしますもんね。
Aqui そう言っていただけるとものすごく嬉しいです。
ミナギ この作品は原点回帰といいますか、かっこいい、聴きやすいを追及した作品なんですけど、その時に他国でちょっと戦争みたいな、世界情勢的にそういうことがあって、そういう人間のあかんところとかそういうのも表現したいなって僕自身思ってて、実はこの「XIDE SCOPE」の裏に核ミサイルの発射音のサイレン音とか銃声音だったりとかも入れてますね。
 立ち向かって行こう、頑張っていこうみたいな感じを出せていけたかなと思ってます。三曲目の「Fearless」も原曲自体は僕なんですけどライブでのノリ感というか、一体になってる感じがもっと出たらいいなって作りました。
 ありがとうございます。今回は作品と共に最新作までのお話をお伺いしましたがその作品たちを引っ提げて、今全国無料ワンマンツアー中ですね。すでに終盤ですが手ごたえとしてはいかがでしょうか。
氷翠 手応えは本当に感じてますね。やっぱり各地での盛り上がりがすごくて、こっちの全力に全力で応えてくれてるっていうのを感じてるんで、まだ途中ですけどこの先もすごく楽しみです。
Aqui いやもうとにかくどの会場行っても熱いんですよね。気持ち的なというか、熱気すごくて手応えとしてはもちろん感じていますし、この熱気が今後さらに大きくなっていくのだとしたら楽しみで仕方がないです。歌詞とかでは世の中の負の連鎖とかを歌ってるかもしれないですけど、ライブしてる自分の感情の中ではもちろんそれもひっくるめながら、ほんとに今後楽しみだなって会場行ったときに思わせてくれるそんなツアーになってますね。
 やはり自信に繋がってますか。
Aqui そうですね、出てきますよね。やっぱりこのインタビューで遡ってもらったのもあって、俺たちこういう旅してきたんだなっていうのがやっぱり誇れることだと僕は思ってるんで、それを引っ提げたうえで今回挑んでるツアーなので、やっぱり自信もつきますし、お客さんもやっぱり満足して、楽しく明日も頑張ろうっていう気持ちで帰ってくれるだろうなって、そんなライブのツアーに出来てると思います。
ミナギ 先ほどAquiが言ってくれたように最近ほんとにライブでより一層お客さんの顔がキラキラしてるんですよ。
Aqui そうそう、分かる。
ミナギ ね。これはほんとに自信に繋がるし、やってて良かったって思わせてくれる瞬間ですね。これからもより一層キラキラした顔を見たいんで頑張りたいです。
 このワンマンツアーは無料っていうこともあって新しい新規の人たちも来てくれる機会になってくれてると思うんで、そういう新しい人たちにも惹きこんでいけるようなライブができてるんじゃないかなと思いますね。タイトルの「Voyage to the end」は航海の意味も兼ねてるんで、僕たちが今まで旅してきたことが無駄じゃなかったんだなっていうのをひしひしと感じれるツアーになっています。
 そして九月にはO-WESTで主催ライブがあったり、年内の活動にますます注目しているんですが今お話出来る範囲でどんな活動を今後予定されてますでしょうか。
氷翠 もちろんさらに飛躍できるような活動をしていくつもりですけど、今日お話しさせていただいたことで、また良い意味で期待を裏切るようなことをしたいってちょっと思っちゃいました。(笑)
Aqui なんか性癖がちょっと歪んでる感じしますよね。(笑)
全員(笑)
氷翠 そうですね、やっぱりどこまでも進化していきたいなって思ってるんで、自分たちに限界を作らずに今年もあと半分くらいをもういけるとこまで行ってしまおうの精神で駆け抜けたいと思います。

 最後に読者の皆さんに今後の意気込みとメッセージをお願いします。
 これからも僕たちはいい意味で先が読めないバンドになっていって、皆さんをワクワクさせれるようなバンドになってますので応援よろしくお願いします。
ミナギ ライブハウスからやっぱり全員幸せになって帰ってほしいんで、僕たちもそういうより良い環境を作れるように努めていきますので、是非ライブハウスへお越しください。ご一読ありがとうございました。
Aqui 二〇二〇年二月から活動してますけど、多分一度だけ見に来てくれた方とかもいると思うんですよ。でもその時と今の僕たちは絶対違うんで。成長してるし、いろいろな曲もまた増えてるだろうし、またあなたの中で楽しめる要素が絶対そこにはあると思うので、僕たちはライブで待ってるんで、来てくれた際には全力でそれに対して応えていこうと思っています。読んでいただいてありがとうございました。
氷翠 本当にfiveStarsさんがこんなに激推しくれてるバンドがかっこよくないわけないと思ってるんで、まだライブ観たことないって人はまずは一回ライブに来て欲しいなって思います。いつもありがとうございます。これからも、激推ししていただけると嬉しいです。これからもどんどん期待裏切っていこうと思うので楽しみにしててください。


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