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365日色の話 ちょっと一休み 西加奈子さんの「くもをさがす」を読んで。「私に限って」と思っていませんか。

55年ぶりにlineでつながった友人が、神戸の友のことを知ってから、
読んだら、まったく違った感情になった。

というので、私も読むことにしたのです。

夫が「くもをさがすって、どういうこと?」そういえば、
くもって、空の雲?
それなら、さがすってことある?
それとも、蜘蛛?
「くもをさがす」ってタイトルは、何を意味しているのか・・・

作家の西加奈子さんは、イラン・テヘラン生まれ、
エジプト・カイロ、大阪育ち。
法学学士。

小さな頃からクレヨンで絵を描いていて、
小説を絵画にすることもあるとか。

2014年「サラバ!」で、直木賞受賞。
「きいろいゾウ」は映画にもなった、大ベストセラーです。

「くもをさがす」
2021年、
大人気作家である44才の西加奈子さんが、
移住先のカナダのバンクーバーで、
コロナ禍に、
自分の乳がんが発覚し、
両方の乳房を摘出するまでの
自分に向き合った日々を書いたものです。

こんな時でも、勢いのある軽快なタッチで
自分に起こった、どうしょうもない事実を対象に
人間の温かさや人生の機微を描いていました。

その気持ちの強さが
また、爽やかなのです。

読み始めたら、すぐに、
蜘蛛の多い家、古い家だったという文章が。。。

そのカナダの5階建ての家は、半地下から5階まで、
各階に1部屋という珍しい家で
いっぱい蜘蛛がいる話から始まりました。
蜘蛛・・・

蜘蛛のいる家の描写がリアルで、
私自身、全身が痒くなってくるほどでした。

カナコは、
胸のしこりは少し気になっていましたが、
日々、柔術にはまり、他にもさまざま鍛えていて、
今までになく、元気そのものでした。

以前に、痛い思いをして、
マンモグラフィー検査をした時に、
胸が小さいから大変だったので、
「私に限って」

他の婦人系のがんには注意をしていたけれど、
乳がんはないと思い込んでいたのです。

ある日、ふくらはぎに大量の斑点を発見し、
その原因が
南京虫だったら、
家中の掃除を頼んだり、
子どもや夫も
どうにかしなければいけないし・・・

慌てて病院に連絡しようとしましたが、
日本のようにはいかず。

カナダ人はカナダの医療システムに誇りを持っていて、
特にブリティッシュ・コロンビア州では、
健康保険に入っていれば無料、
外国人や留学生も無料だそうなのです。

そのかわり、
すぐには専門医は見てくれず、
まずは、かかりつけ医の予約をとって、
それから、専門医に。

かかりつけ医のいない、
カナコの場合は
ウオークインドクターに連絡。

英語で病状説明がむずかしく
友だちの協力を得て、
患部を写真を送って、
やっと、診察にこぎつけたのです。

斑点の原因は、
蜘蛛にかまれていることだとわかり、
こんな機会はないと、
ついでに、胸のしこりについて話したら、
すぐに見てくれて、
その結果、専門医に見てもらうことになったのです。

そこから、がんを意識する日々に。
自分はがんなのだという不安が始まりました。

なかなか、がんセンターから、
連絡が来ないので、
日本での診察も考えたけれど、
日本はコロナ禍で、
手術をしていないとニュースでいっていたし、

カナダはコロナ禍でも、
手術をしているので、
そのままカナダでがんの診察を受けることにしました。

さまざまな検査を受け、
乳がんだとはっきりしました。

がんが1センチから2.5センチまで大きくなっていて、
このままでは手術が難しいと
抗がん剤治療で小さくして
手術をすることになったのです。

カナコは抗がん剤で髪が抜けるからと、
美容院で、1度してみたかった丸坊主にし、
その写真を友達に送りまくったそうです。

神戸の友もがんになり、
本当に大変だったと思いますが、
どんな状況でも
プラス思考で受け止め
楽しそうに生きているのです。


カナコは手術で、両方の乳房を摘出し、
その後の再建手術はしないで、そのままにしました。

この本は西加奈子さんが
驚くほどの作者としての覚悟で、
がんと分かってからの日記と同時に書き始めた作品です。

その淡々とした描写が明るくて、面白いのが、
かえってつらい・・・
頼もしい・・・

がんと知るまでの友人たちとの共同行動。
知った後、手術までの心境。
看護師さんや、スタッフ、友だちとの
胸に迫る温かい交流。
夫の思いやり。

「今の自分の体を、心から誇りに思っている。
人生で一番自分の体を好きになった瞬間かもしれなかった。」
といいます。

「生きてる」「生き残った」
これからは、
今までとは違う
「新しい日常」を送ることになる。

生きているだけで、
自分を褒めてあげてほしい

これは西加奈子さんのメッセージです。

今まで以上に
きらきらと幸せを感じるのだと私も思いました。

「ハグをしよう」
コロナ禍では、できなかったハグ。
生きてることが実感できるから。


私は、「くもをさがす」を読みながら、
感情はこんなにも揺さぶられているのに、
自分の中を探しても、
簡単には
言葉が見つかりません。

カナダ人の看護師さんやスタッフ、先生、
友人たちのことばも
加奈子さんと同じように
大阪弁でした。
それは、なんとも
おもしろい!

苦しくて読み切れないと思う時、
大阪弁の会話なので、
心が明るくなり、何故かほっとしました。

タイトルの「くもをさがす」のくもは・・・

ぜひ、読んでみてください。

あなたの人生に明るい光をもたらしてくれると思います。

もちろん、「私に限って」はいけませんね。

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