閉店
札幌駅を降りて地下に下ると大丸地下街が広がっている。そこでは酒、肉、果実、揚げ物、チーズ、野菜など多種多様な食品を販売しており雑多な香りが鼻をつく。そんな場所で見つけた推しスポットはおやき(大判焼き)を販売している店だ。私は喜んだ。なぜなら我が地元長野には大判焼きのお店があり、たまに買いに行くほど馴染み深い商品だったからだ。私は電車代で枯れていた財布の中から150円を捻りだし、そのおやきを購入した。勿論味は無類である。私は食べ歩きながら毎週食べようと心の中で誓った。
そこからひと月が経った私は久しぶりにおやきの存在を思い出し地下街を徘徊していた。けれどもいくら廻れどもおやきは見つからない。何故だ何故だと空の頭の中を逡巡しながら見つけた場所は鶏油に塗れたフライドチキン店だった。昭和の残り香が唯一漂う和菓子屋はアメリカの侵略によってフライドチキン屋と成り果てていた。
私は怒り、嘆き、絶望しバイト先へ向かった。今思い出せばその日はお局様から鼓膜を突き刺すような無線と子供たちの金切り声が鳴り止まない最悪の日だったような気がした。
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