9月17日 蜂
蜂。
「ワイと蜂」というお題で2000字クラスの奴を書いていたのだが、なぜかファイルが消えてしまっていて悲しみに暮れている。
どんな内容を書いていたのだったか。
そうだ、蜂の世話は9月10月が意外と忙しいって話だったな。
養蜂業というのは一般的なイメージに反して、春よりも晩夏から秋にかけてがむしろ忙しい。ダニの駆除と、オオスズメバチ対策があるからだ。実は、春は人間がそんなに労力をかけても蜂蜜の取れ高が変わることは無く、しかしながら、秋の作業を手抜きすると蜜蜂たちはガタガタになって、年越しができず、次年度の蜂蜜の取れ高は激減することになる。いわく、秋は種まきと肥料やりの時期なのである。
晩夏に次の年の蜜蜂の巣を作る。分割させて増やした蜜蜂の中身を充実させるのが秋だ。外敵や寄生虫からも守らねばならない。
秋の世話を頑張れば、蜂たちの勢力は増し、充実した群でもって冬を越し、春を迎えられる。
春の時点で何群が越冬に成功したか、越冬した群がどれぐらいの働き蜂数を保っているか、これで蜂蜜の取れ高は決まる。つまり、養蜂業の場合、春が刈り入れ時期で、秋が種まきと育成の時期だと言うことである。農業では春に種を撒き、秋に刈り入れするものであるが、ちょうど春秋が逆の関係になっているのだ。
ゆえに、秋は忙しい。
9月の養蜂は、可能な限り、毎日見回りに行く。
オオスズメバチを見つけて、これを捕らえ、罠にかけるためである。罠はネズミトリモチというネバネバを使う。一匹、捕らえた活きのいいやつをくっつけておくと、ネバネバと大格闘して更にネバネバを身体にまとわらせて身動きが効かなくなり、難敵(なにせトリモチは自慢の大顎も毒針も全く効かない)との激闘中である旨と、戦いが劣勢であることを知らせるフェロモンを、辺りに撒き散らして次々に仲間を呼んでくれる。
呼ばれた仲間も次々にトリモチに捕らえられ、一度に15匹ぐらいのオオスズメバチを一網打尽に始末できる。この連鎖を起こすことでオオスズメバチのコロニーに大打撃を与えられるのである。しかしオオスズメバチも餌を持ち帰らねば来年の真女王を作れない。子孫を残すため、奴らとて必死である。なんとしても蜜蜂の巣を襲いたい。こんな次第で再び勢力を養って、新しいオオスズメバチの成虫を作って、リベンジとばかり襲ってくるのだ。
去る9/13に今シーズン初の大襲撃があった。これは養蜂場にワイ居たのに気が付かず、人間の介入が遅れて一群がダメージを負った。4000匹ぐらい、蜜蜂がSATSUGAIされてしまった。痛恨であるが、まあ一ヶ月もすれば復活するから、致命的では無いし、今年は14群あって、そのうちの1群が負った手傷なので保有群全体で見れば軽微な傷ではある。冷静に考えれば。
9/15にも総攻撃があった。これはワイの日々の見回り行が奏功して、返り討ちしてやることに成功。損害はほとんど無く、逆に40匹ぐらいトリモチで捕らえてSATSUGAIしてやった。トリモチ一面にオオスズメバチがくっついて、実に気持ち悪く、集合体恐怖症の人の心の琴線を刺激せずにはおかない景観を呈するのである。
余談であるが、オオスズメバチの御遺体は肉が多いからなのか、昆虫類には珍しく腐って腐臭を発する。トリモチのシーズンは、養蜂場になんとも言えない生ゴミ臭が常時ただようことになって、秋の風物詩となっている。いわく、戦場の匂いである。
とまあ、こう言う一進一退の攻防が、養蜂業の9月なのだ。10月中旬頃まで続くかな。
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