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トレーナーの視点~softbankウィンターカップ2023~

softbank ウィンターカップ2023。
福岡県代表として出場する東海大福岡高校女子バスケットボール部に帯同してきました。試合中にどんなことが起こっているか軽く書きたいと思います。「へ~。トレーナーってこんなこと考えてるんだ~」
な参考になれば幸いです。


東海大福岡高校女子バスケットボール部

理学療法士をしています。株式会社フィジコ 代表取締役。
同チームには、かれこれ10年近くフィジカルコーチとしてチームに在籍しています。毎週毎週、楽しい?フィジカルトレーニングをさせて頂いています。チームに関わりはじめたときは選手12人。まだまだ福岡県でも勝てないチームでした。福岡県の県予選では、ベスト4に残ったときはうれしかったですね。いまでは激戦の福岡県で常時ベスト4まで勝ち上がることができています。それが2年連続、全国大会でベスト4!
フィジカルトレーニングは、2~3時間、みっちり。道具はほとんど使いません。自重を使って身体操作を身に着けます。
選手は嫌らしい?トレーニングは楽しいが、翌日の筋肉痛がすごくて…
でしょうね。デモンストレーションだけでもずいぶんケツが割れますので。

実はこのチーム、2022年のウィンターカップでも準決勝で京都精華さんに負けまして、3位。今年こそはと意気込んで臨んだ準決勝。相手はまたまた京都精華さん。敢え無く敗退。今年も3位でした。でも2年連続3位は大したものです。選手たちの頑張りに感動しました。

足関節捻挫

東京へは選手よりも遅れて合流しました。福岡での仕事もあるので、なかなか全ての日程に帯同できません。
そんな中、悪い知らせが…開幕前日の練習試合で主力選手が足関節を強く捻ったと…
バスケではよくある話です。相手の足を踏む。
急遽、東京で物理療法機器を販売する会社の営業をしている友人を頼って、機材を貸していただきました。数年ぶりなのに、快くデモ機を貸していただきました。ほんと助かりました。
宿舎でのケアは、ずいぶんこの選手に時間を割きました。関節の状態、周囲筋の疲労の除去、物理療法を使って炎症所見の軽減。夜はもちろん朝も会場へ出発する前まで、電気治療器をあてて痛みの軽減を図りました。
開幕しても痛み・腫れ・熱感が残存し、試合には出場するもテーピングは欠かせない。しかも、患部の状態をひどくしたくない。靭帯へのストレスをかけないために、テーピングは強めな可動域制限をします。強く巻けば締め付けも強くなり、循環を阻害することは容易に予測できます。テープを巻いた脚が筋痙攣をおこすことも多々あります。関節運動を制限することで、周囲筋への負担は大きくなります。
準々決勝では、熱感・腫脹も治まってきていましたが、不意に相手に踏まれ、「痛っ」となったらしく、腫脹がまたまた。
この選手は「ハーフタイムで一度足を開放してあげよう。手間をとるけど、巻きなおそうね」今大会はそうやって患部を管理しようと考えました。

トレーナーの役割

昨年に引き続き、周囲を驚かすゲームを展開し、準決勝にコマを進めます。
私の役割は、ウォーミングアップと、試合中のトレーナーとしてのベンチワーク。宿舎に帰ってのケア・次の試合への準備になります。今回は、準決勝での、仕事について書きます。ウォーミングアップは、”心も身体も暖める”をコンセプトにしています。バスケットボールでよく見かけるものではない、オリジナルなメニューも多いです。「東海のアップは楽しそう」県内でもそういう声をよく聞きます。うれしいことです。

東京体育館 サブアリーナでのウォーミングアップ

準決勝

いよいよ準決勝。では試合中のトレーナーの役割を書きたいと思います。
試合には、“トレーナー”としてベンチに入ります。
ウィンターカップはピンクのゼッケン。
もうすご50歳。なかなかの感じでピンクを着こなします。
トレーナーは、ベンチの隅っこのエリアに隔離。
今回は、白いラインで囲われていましたが、大会によっては、柵を設けてある場合も。
私が入ると、囚われたチンパンジー状態になります。
位置取りは、こんな感じ。黄色の〇の部分に両チームトレーナーが陣取ります。

試合中は、選手の動きをみたり、テーピングを事前に巻いた選手は、調子がどうかみます。
県大会などでは、タイムアウトのたびに、選手の周りをウロウロ。
ほんとはダメなんだそうですが…
テーピング剥がれてきたりすると、プレーに集中できないので、こちらでチェックして、選手が気づく前に処置します。
ベンチ横で、トラブルがなければ、動作分析をしながら試合を見ます。日常とトレーニングはこの動作分析から抽出した要素を徹底的に鍛えるので、試合でピックアップした課題を克服することで、バスケットボールのパフォーマンスに直結するように考えています。方法論が独り歩きして、「○○トレーニングするといい」ということが全てのチームに当てはまるのであれば、全国で同じトレーニングが実施されるだろうから。

このゲームでは、トラブル発生!
2Qで選手が捻挫をしてしまいました。ハーフタイムでテーピングを巻き直す選手のためにテープを準備に入ったところ、コート内がざわざわ。

眼を離していたので、受傷機転は確認してない状況です。
ベンチに戻る選手。歩けると?試合後動画で確認すると、相手の足を踏んで…痛そう。

患部を確認します。まあまあ腫れてますね。「体重かけて痛い?」泣きべそなので、よくわからない様子。外果の前方が腫れています。前距腓靭帯の損傷か。前脛腓靭帯は大丈夫?ここが痛むと背屈できないし、荷重ができません。骨折は…なさそうだけど、丸腰のスポーツ現場では、圧痛、動作時痛で判断するしか…。プレーできない感情からか、落ち着かない様子。まずはアイシング。患部も心も。その間、どうすることがベターか。考えます。

こんな時は、サブの選手が手伝ってくれます。選手にできることはしてもらってます。靴紐を解く。氷嚢を押さえておく。選手でできることは選手にお願いします。そうこうしている間もゲームは流れています。新たなケガが発生するかもしれません。留学生もサポーターの下にテーピングしていたので、悪くしないか気にかけてます。

残り2分弱。残り時間と、患部の状態を確認。大きなモニターで時間とコート内の様子も。

「前半はアイシングして、ハーフタイムでテープ巻いてみよう」試合に戻る気力があるか選手と確認。大丈夫そうです。ヘッドコーチにも前半終了と同時に伝えます。
TR「腫れていますが、テープで固めてみます。スタートには間に合わないかも」
HC「お願いします。」
大一番の大事な試合。ヘッドコーチとの会話は少なかったけど、10年も共に活動させて頂いているコーチ。多くの説明は不要のようです。こちらの意図も伝わったようです。信頼関係。大切ですね。
ハーフタイムのルーティーンにしていた別の選手のテーピングを巻き直さなければなりません。テープを剥いで、循環を回復させながら、汗を引かせるためにアイシング。なかなか汗かいたままだとテープがつかないんです。約6分かかります。それからテーピングを巻くことに。

後半戦が始まりました。テープもギリギリ間に合わない程度で巻き終わり。選手の背中を押して「頑張ってこい!」

始めは走り方もぎこちない感じがしました。
テープはマッチしているか。ケガは本当に大丈夫なのか。無理させない方がいいのでは。いろんなことを考えるものです。プレーを見て判断するしかないですね。

オフェンスもディフェンスもなんとかなりそうです。
ベンチの選手にもお願いしました。
「ベンチに下がったら足をアイシングしておいて」
気休めかもしれませんが、痛みの閾値だけでも上げることができれば…
ヘッドコーチも選手の動きをみて、使い方を工夫してくれている様子。
さすが、細かいこと言わなくても配慮してくれます。

テープを巻いた選手だけでなく、全ての選手の様子を見ながら、試合をみてます。たまには邪魔が入ることも。
「あれっ なんか見にくい…ボール籠。なんでこんなところに…」
こんあ大会なので、仕方ないですが、カメラも多く動いています。
県大会では新聞記者さんが、トレーナーと選手の間に割って入ったことも笑
トレーナーもボックスアウト、必要かも笑

4Qではずいぶん点差が開いて、差を感じましたが、選手たちはよく頑張りました。感動をありがとう。ほんの少しでも理学療法の知識を使ってチームに貢献できるように。
チームが目指す”全国制覇”
理学療法士も日本一の活動を目指して、もっと頑張らないとですね。


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