#102「技術屋の価値はリスクテイク」

私は技術職をしています。
ざっくり言うと、インフラ整備のその前を担っている感じです。
インフラというのは安全で当たり前。もしそこに支障があれば袋だたきです。
今回は、こういう仕事をしている人間の価値というのがどういう所にあるかと言うことを書きたいと思います。

100%の安全は存在しない

理系人間なら当然理解していることですが、100%というのは世の中に存在しません。
例えば、明日の朝、夜明けが来るというのは100%に限りなく近いですが、地球の自転が今晩止まらないという保証は実は無いんです。隕石が飛来して地球が消滅するかもしれません。
上記の例は極端ですが、自分が明日の朝目覚めるかどうかとかになると、結構シビアに100%じゃないですよね?私の釣り友達は30歳の頃にお酒を飲んで眠り、翌日には亡くなっていました。そういうことが起こるんです。
今の世の中、特にコロナ対策への一般の方やメディアの対応を見ると、100%の安全を求めているように見えるんですよね。変な意味で科学万能と思っているのが日本人のような気がします。
まずは、世の中で起こることには、100%は無いということを肝に銘じる必要があると思います。

費用と時間をかければできるは当たり前

技術的な仕事をしていると、こういうことできない?って訪ねられることがよくあります。
例えば、道も無いような山のてっぺんに、重量が1tぐらいある機械を持って行って、作業をするというようなことです。
こういうことの解決策って実はたくさんあります。
ヘリコプターで運ぶとか、機械を分解して人の手で少しづつ運ぶ、とかです。
それで、実際ヘリコプターで運ぶなら、時間は短時間でできますが、1日500万ぐらいの費用が掛かります。人が運ぶなら時間がかかって、二人で2週間かかるとしたら、費用は80万ぐらいかなと思います。
つまり、大変と思われることも、仕事でできることなら時間か費用をかければどうにかなるということです。
でも、できる?って聞かれたときには、大体時間とお金の制約があって、この制約の中でできるかどうかということを訪ねられているということです。問題なのは、この制約が聞いている人の中でもわかっていないことがあるということです。
これを安全に置き換えると、例えば橋を作るとして、日本のインフラは100年間問題無く使えることを目指して作ります。
この時に、これより安全で長持ちするものを作ろうとすると、鉄筋をたくさん入れて、その分重くなるのでたくさんコンクリートで補強してというふうになり、費用がたくさんかかるようになります。当然こういうふうにすれば作るのに時間もかかります。
100年の安全ということを考慮して、費用と時間を適切になるように検討する必要があるのです。

ぎりぎりのラインを見極める

以上を考えると、できる限り100%に近い安全性を確保しつつ、費用と時間をできるだけ小さくすることが、技術的なノウハウだということがわかります。
技術的な仕事をする上では指針や基準書というものがあります。
実は、この指針や基準書に従って仕事をすれば、ほとんどの場合は安全で無難なものができます。
公務員の人は無難が大好きです。
だから、そういう基準に従っていれば責任は逃れられるし、簡単に仕事は終わります。
でも、こういう基準書仕事だけをしていて、果たして信頼は得られるでしょうか?
公務員の方を相手にすると、費用というものに無頓着だということがわかります。とにかく問題が起こらなければ良いので、お金がかかることはあまり気にされません。
一方、民間の仕事はどうでしょう?
自分の家を建ててもらうとして、費用はやっぱり掛からない方がいいし、安全で快適なものにして欲しいと思いますよね?
つまり、安全と費用がちょうど良いぎりぎりのラインで作って欲しいって思うはずです。
ぎりぎりのラインで攻めていくには、知識と経験が必要です。
新しい工法などはどんどん開発されていますし、これを勉強して取り入れていく必要もあります。
本当の技術職とは、費用対効果を最大限にすることであって、そのための知識と経験がある人のことを言うのだと思います。

技術屋のリスクテイク

先の言い方で良い仕事をする技術屋というのは、常にぎりぎりを狙う必要があります。
しかし、物事に100%はありません。
ぎりぎりを狙えば狙うほど、当然リスクも上がります。
でも、ぎりぎりを狙わないと費用は大きくなります。
費用を掛けて安全なものを作っても、高いなあ・・・となってしまいますし、逆に安くして何か問題が出れば当然ダメです。
簡単に言うと費用対効果という言葉になってしまうのですが、これはそんなに簡単な事では無いのです。
費用対効果を最大に・・・なんて言っている人は、本当の意味での技術的葛藤を知らない人だと思います。

本当の技術者は、安全に最大限注力しつつ、知識と工夫で費用と時間をできるだけ最小にして、ぎりぎりを攻めるリスクをちゃんと理解してとれる人だと、私は思います。
そういう技術者になりたいと思ってやってきていますし、部下にはそうあるように指導しています。
言うは易しですが、おこなうは難しですね。

本日もご覧頂きありがとうございました。
ではではまた

#リスクテイカー
#簡単に費用対効果って言うな

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