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米10年債利回りの先行性


通信株との関係

上の記事では、
通信株であるAT&T[T]がピークをつける
2週間前に米10年債利回りは底打ちしている
と書きました。

米10年債利回りの方が先行性があります。

米10年債は、
1984年6月第4週13.827%
で頭打ち
ここから下落し
1986年8月第4週6.923%で底打ちします。

この時、AT&Tの株価は、
1984年4月第1週3.49ドル
安値をつけていたものの
本格的に反発上昇したのは
1984年7月第1週3.49ドル
以降です。

ここでも、わずかでありますが
1週間、米10年債利回りの方が
先行性
があります。



問題点

いくら米10年債利回りが先行性が
あるからと言っても
利回りのピークかどうかを
判断する材料がなければ
あまり意味がありません。

どこがピークなのか
わからないと
意味がないのです。

米10年債利回りは、
かなり先行性の強いものなので
ピークの判断は難しいですが
いくつか検証してみます。



銅鉱山株

銅関連は経済の動きより
先行性が強いと言われます。

フリーポート・マクモラン[FCX]
で検証してみます。

1997年4月第1週
米10年債利回りは6.972%から
下落トレンドに入り
1998年9月第4週4.292%で底入り。

フリーポート・マクモランは
1997年4月第1週
安値13.35ドルをつけているのですが、

その後はあまり上昇せず、横這い
1997年10月第1週から下落トレンド入りし、
1998年9月第4週5.77ドルまで
売られています。

この時、通信株であるAT&Tの株は
買われていて、

1997年3月第4週で19.01ドル
1997年8月第3週安値20.33ドル
これ以降、上昇に転じています。

一般的な企業株は例にもれず
買われていたものの
銅鉱山株は逆に売られていたのです。

この背景には
1990年代に入ると
世界各地で銅鉱山が活発に
開発されて、供給過剰気味なり
徐々に銅鉱山株は売られいった
ことがあります。

いくら銅価格は経済の先行性が
強いと言っても、
需要よりも供給が勝る
シチュエーションが起きた場合、
判断材料としては不十分になりえます。

次に2008年の米国不動産バブル時で
検証します。

このときは、新興国株ブームが起きて
原油と銅が、かなり買われました。

新興国の経済成長するときは
原油と銅の消費が伸びるからです。

フリーポート・マクモランは
2008年5月第3週高値63.20ドル
再び最高値に挑戦しますが、
2008年6月第2週62.90ドルをつけて
下落トレンド入りしています。

米10年債利回りは
2007年6月第2週5.169%
2007年7月第1週5.187%
これ以降下落に転じています。

2008年3月第3週3.341%から反発
2008年6月第2週6.241%でピーク
2008年12月第3週2.131%まで下がりました。

フリーポート・マクモランの
2008年6月第2週62.90ドルをつけて
下落トレンド入りと
米10年債利回りが、
2008年6月第2週6.241%をつけて
下落していったタイミングは
一緒でした。

この検証では
銅鉱山株は
米10年債利回りの先行指標と
ならないということがわかりました。



ナスダック

1983年のナスダックを見てみると
6月第4週329.11ドルでピークアウト

米10年債利回りは
1983年2月第3週10.172%
1983年5月第1週10.155%
をつけて上昇、

1984年5月第3週13.716%
1984年6月第4週13.827%(ピーク)

ここから下落していきます。

ナスダックの方が
1年先行
しています。

1989年では
ナスダックは、
10月第2週487.60ドル
このあと、下落、反転し
1990年6月第2週469.42ドル
1990年7月第2週470.30ドル

これ以降下落トレンド入りしています。

米10年債利回りは
1989年7月第5週7.790%
1989年11月第3週7.797%
1989年12月第3週7.804%

ここから利回りは上昇していきます。

債券利回りの上昇は
債券価格の下落、
債券トレーダーが
債券を売っている証拠です。

米10年債利回りは
1990年4月第4週9.073%
1990年8月第3週9.048%
1990年9月第3週8.984%

ここから債券利回りは下落
債券が買われはじめました。

米10年債利回りのピークを
1990年4月第4週9.073%
とすれば

ナスダックのピーク、
1989年10月第2週487.60ドル
は、

債券よりも半年先行していた。


ナスダックが
1990年7月第2週470.30ドル
に下落トレンド入り

米10年債利回りが下落に転じたのは
1990年9月第3週8.984%

ナスダックが2カ月先行しています。

金利上昇に弱いナスダックは
10年債よりも早く
ピークをつける可能性が高い
と言えます。

ピークをつけるタイミングは
半年~1年とかなりふり幅があります。

2000年3月第1週ナスダック
最高値5132.52ドルをつけます。

米10年利回り
2000年1月第3週6.772%
ピークです。

ドットコムバブルでは
債券の方が先行指標となりました。

ナスダックが
下落トレンド入りしたのは
2000年9月第1週

米10年債利回りは
2000年5月第3週で下落し始めました。

債券利回りのほうが
4カ月先行しています。

1980年代ではナスダックが
先行していましたが
2000年は米10年債が先行していました。

ナスダックが確実に先行するとは
言いがたいようです。




ISM

ISM製造業景気指数
ISM非製造景気指数
2つの景気指標があります。

非製造業米国GDPの
7割を占める
ので
とりわけ重要視されます。

この景気指数は50を境に評価され
50以上が景気拡大
50以下が景気後退
判断されます。

2000年代を比較してみると

ISM製造業景気指数
1999年12月58.10をつけたあと下落

2001年3月42.10
2001年6月41.30
2001年11月40.80

これ以降上昇に転じます。


ISM非製造景気指数
2000年5月58.0でピーク
2000年9月57.60をつけた後
下落しています。

2001年11月44.80
2003年4月49.10

これ以降上昇しました。


米10年利回り
2000年1月第3週6.772%
ピーク

米10年債利回りが
下落し始めたのは
2000年5月第3週です。


ISM製造業景気指数
1999年12月58.10
でピークをつけているので
先行性
がありました。

1ヵ月後に、

米10年利回りのピーク
2000年1月第3週6.772%

4カ月後に、

ISM非製造景気指数のピーク
2000年5月58.0

以前書いた記事↓

で、必ずしもISM製造業景気指数
株価には相関しないと言っていますので
確実性はないです。


これ以降を見てみると
ISM製造業景気指数
2004年6月61.40
2005年11月57.20
2007年7月52.60

ここから下落に転じています。

2004年から中国のGDP成長率が加速し
米国の製造業は打撃を受けて
かなり早い時期、
景気後退のかなり前から
上値が重くなっていました。

ISM非製造景気指数
2004年2月61.20
2005年9月61.30
がピーク
2006年5月58.40

これ以降
下落しています。

米10年債利回り
2006年5月第2週に5.200%
2006年6月第3週に5.228%(ピーク)
2007年7月第1週に5.187%

これ以降下落しています。

米不動産バブルでは
不動産に資金が大量流入した為

実体経済はすでに
2004年~2005年から
頭打ちしていましたが、

投資マネーだけが
不動産に注ぎこまれ続けていた
と言えます。

ナスダックのピークは
2007年10月第5週2861.51ドル

2008年8月第3週で完全に
下落トレンド入りしています。

ナスダックと比較しても
かなり差があります。

それぞれのピーク、
ナスダック:2007年10月第5週
米10年債利回り:2006年6月第3週
ISM製造業景気指数:2004年6月
ISM非製造景気指数:2005年9月

ISM景気指数で
米10年債利回りの
ピークを計るのは難しいと言えます。




1980年を眺めてみると
1月第2週で金価格835ドル
ピークをつけます。


1980年3月第5週485.75ドル(底打ち)
1980年7月第1週666.70ドル(高値)
1980年9月第4週698.25ドル(下半期最高値)

このあと下落に転じます。

米10年債
1980年2月第3週13.040%
一旦ピークをつけて下落

1980年6月第3週9.139%(底打ち)
1981年9月第3週15.663%
ピークをつけます。

金価格
1980年1月第2週
ピーク
をつけた後に

10年債利回りは
1980年2月第3週
一旦ピークをつけています。

金価格1ヵ月先行しています。

金価格が再加熱し
1980年9月第4週698.25ドル
まで上昇した時は、

米10年債利回りは
1981年9月第3週で天井をつけました。

1年、金価格先行しています。

1ヵ月と1年では、
かなりのふり幅があります。

金価格が下落し始めると
債券利回りは上昇する
傾向が
強いようです。

金が売られる
債券も売られる
言えます。

10年債利回り
1983年5月第1週10.155%から
1984年6月第4週13.827%まで
上昇したとき

金価格
1982年6月第3週305.50ドル
1983年2月第1週504.50ドル(最高値)

このあと
1985年2月第4週287.20ドル(底打ち)
まで下落しています。

やはり、金の方が先行性が強く
10年債利回りよりも
約1年早く上昇し始めて
ピークをつけるのも
1年4カ月早かったのです。


金価格
1987年12月第1週496.71ドル
でピークをつけます。

10年債利回りピーク
1987年10月第2週10.222%

他の指標や株価と同じように
常に10年債利回りの先行指標と
なるものはない
ようです。

1987年では
金価格が2カ月遅れていました。

が高騰した2011年を見てみると
ピーク9月第1週1920.80ドル

何度か上昇し高値を狙いにいきましたが、
1800ドルを越えることはなく
2012年11月第4週から
下落トレンド入りしています。

10年債利回りピーク
2011年2月第1週3.638%です。

金と比較すると
債券のほうが
7カ月先行しています。

金が下落トレンド入りした
2012年11月第4週時点では
10年債利回りは
大底を抜けて、やや上昇基調でした。

金がピークを迎える前から
債券は買われていて
金価格が落ちる前から
債券は売られていたのです。

可能性としては
スタグフレーション下では
金が債券よりも先行性
発揮するのかもしれません。

基本としては10年債利回りは
先行性が強いものです。

現在の金価格を見てみると
2020年8月第1週で2072.90ドル
2022年3月第1週
高値を狙いに来ますが2070.28ドル

2023年5月第1週2073.29ドル
ここで高値を更新しています。


終わりに

米国が仮にスタグフレーションに
陥ったとすれば
金が先行するため

米10年債利回りのピークは
遠いかもしれません。

2023年5月で金価格が
高値を更新したということは
まだ上昇余地があるということです。

金のピークはまだ迎えていないと
考えると、米10年債利回りは
まだ上昇する可能性をはらんでいます。


読んで頂きありがとうござました。


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