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「『世界の海から旬のおいしさを食卓へ』いわきの老舗水産会社の挑戦」

2022年11月28〜30日に開催された「三陸水産イノベーションサミット」。三陸の水産業のトップランナーたちの登壇レポートをお届けします。

"福島県で企業連合による陸上養殖のR&Dが進んでいる。その中核を担うのがいわき市の山菱水産だ。震災で大きな被害を受けながらも破竹の勢いで業容を拡大する同社。彼らを突き動かすもの何か、その真実に迫る。"

スピーカー:
山菱水産(株)総務部リーダー 坂本修朗氏

課題に対して自社のネットワークを最大限活かし、ワークフローを管理徹底、強固なチームワークの中で、個々人がそれぞれ持ち味を発揮。自社が扱う魚種だけにとどまらず、幅広くさまざまな取り組みを行う。その先に、『世界の海から旬のおいしさを食卓へ』という強い思いがあるから−−。

■実習船のマグロ一隻買い

昭和52年創業の山菱水産(福島県いわき市)の母体は、江戸時代から漁船漁業を営んできた村山漁業。マグロ漁船のスタートは明治時代にまでさかのぼり、マグロ加工、海外産地開拓、漁労育成など事業展開、現在に至ります。山菱水産の最大の特徴は、仕入れから商品開発、加工、出荷、配送までを一社で完結できるトータルシステム。
その山菱品質を最大限活かしたのが、小名浜海星高校の実習船「福島丸」が獲ってきたマグロの一船買い。生徒たちは在学中に、ハワイ沖で2ヶ月のマグロ延縄漁実習を経験します。以前は、静岡県や神奈川県の漁港に水揚げされていましたが、2011年から小名浜港での水揚げが実現。生徒も漁獲だけでなく、加工・流通・販売するまぐろ祭りも評判になっています。

遠洋漁業は水揚げした海域が産地になるので、小名浜で水揚げすることで正真正銘の福島県産のマグロになり、自信を持って福島県産と言えます。
生徒たちは、「最初は気恥ずかしいけど、試食してウマイとカゴに入れてくれるおばちゃんや普段はあまり喋らない近所の人が頑張ってたねと買ってくれた」「必死の思いで獲ってきたマグロを大切に加工していい商品にしてくれ、それを自分たちで売ってうまいねって言ってもらえる。それは素直に嬉しかった」と、漁場のロケーションや感動、情報を消費者に直接届くようにする水産業の一連のつながりを経験できる取り組みとして、生徒たちの実習のモチベーションアップや、地域の漁業の六次化のモデルづくりに一役買っています。各都道府県にも広がっています。

■新しいチェンネルにチャレンジ

日本食には馴染みの深い海老は、9割が輸入品。福島県葛尾村で始まった複数社の協働事業として開始した国内最大規模のバナメイエビの陸上養殖の実証実験に山菱水産も参画。山菱水産の超低温冷蔵庫と工場で保管・加工され、いわき市内のスーパーで販売を予定。
また、漁業養殖の研究開発、海外での水産資源を守る漁労育成、首都圏と東北エリアを結ぶ冷凍倉庫兼加工工場など、幅広くさまざまな取り組みを行っている。
また海外の漁労育成として、フィリピンのミンダナオ島近海では海底の形状の影響で回遊するはずのキハダマグロ一大漁場になっていますが、水揚げしても鮮度を保ったまま加工する技術がありませんでした。山菱水産は20年ぐらい前から漁労指導を開始。現地では二束三文だったものが、高付加価値がつくようになり、山菱水産もコストを抑えて購入できるようになりました。
超低温度帯のコールドチェーン強化のため、首都圏と東北エリアを結ぶいわき市に、小ロット、多品種、高加工、高品質な商品加工開発と物流拠点として、令和6年に新工場建設予定。

山菱水産(株)総務部リーダー 坂本修朗氏は、山菱水産の営業スタイルについて「各自がお客さんと話す中で、どこがボトルネックでどこに力を入れると風穴が開くかと常に考えています」と言います。
「肩の力を抜いて、両方の足に均等に体重をかけておくと前後にも左右にも自由に動ける。自分たちは気負ってやっている意識はなく楽しくやっていて、社員一人一人が肩の力を抜きいろんな情報を集め初速を早めると、結果的にいろんなことに挑戦しようという社風が革新力を生み出します。さまざまな人とタッグを組み、いろんな側面からいろんなことをやっていきたい」

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