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「漁業団体爆誕! 六ヶ所の漁師 × 六次化マーケターの快進撃」

2022年11月28〜30日に開催された「三陸水産イノベーションサミット」。三陸の水産業のトップランナーたちの登壇レポートをお届けします。

青森県六ケ所村の定置網漁師の橋本氏と首都圏の六次化マーケター中田氏が衝撃的な出会いを果たす。東北の海と橋本氏の志に魅了された中田氏は共に創業を決意。今、東北で最注目の漁師団体。その快進撃は止まらない。

スピーカー:
青森県六ヶ所村 (株)尾駮鮮魚団 代表取締役 橋本翔氏 & 中田創氏
橋本翔氏
尾駮鮮魚団代表取締役、定置網漁師。1982年7月、上北郡六ヶ所村生まれ。33歳で六ヶ所村漁業協同組合所属の漁師へ転職。2020年8月、共同代表の中田創氏と共に株式会社尾駮鮮魚団を設立し、代表取締役に就任。中田創氏 食品製造業の支援を行う会社でチーフコンサルタントを務め、青森県六ヶ所村の仕事も3年間受託していた際に、橋本氏に出会い意気投合。現在は、東京を拠点にしながら、尾駮鮮魚団代表取締役CEOも兼務している。

農林水産業に携わる生産者が、生産物の持っている価値を高めるために、食品加工、流通・販売にも取り組み、農林水産業を活性化させ、地域の経済を豊かにする「6次産業化」。多くの地域で取り組み、成果を上げていますが、東北の青森県上北郡六ヶ所村の尾駮鮮魚団の活動にも注目が集まっています。

■いかにブランド力をつけるか・・・

六ヶ所村尾駮漁港は、下北半島の中程の太平洋側にあります。日本海側を北上してきた対馬暖流の一部は津軽海峡を抜け太平洋側へ。六ヶ所村の沖合では、対馬暖流の一部が北から南下してきた親潮(寒流)にぶつかり、さらに南からの黒潮(暖流)も混じり合います。そのため、六ヶ所村沖合では、鮭、サバ、イカなど豊富な水産資源が獲れます。しかしブランド力がないために、一般流通市場では他の産地の魚と同じような価格で売られてしまっていました。
さらに地域の人口減少や少子高齢化が進み漁獲も右肩下がりの中、これまでの漁業のあり方を変えないと小さな尾駮漁港は生き残っていけないと強い危機感を感じていました。

豊富な水産資源の価値を高めブランド化できたらと、数人の仲間に声をかけ、鮮魚卸と水産加工品の企画販売を行う尾駮鮮魚団を令和2年8月に設立。応援してくれる人ももちろんいたけれど「そんなのやるもんじゃねえよ」「お前たちは何がやりたいんだ」とキツ目の言葉もいただきながら、設立からまだ3年目に突入したばかりの、鮮魚団は、どのように注目を集めるようになっていったのでしょうか?

尾駮鮮魚団の1番の強みは、漁師自らが水揚げされた魚を直接仕入れ、ダイレクト販売ができる点。一般的な仲買とは違い、漁師自ら仲買人の資格を持っているので、魚が水揚げされたその瞬間から血抜き、締め対応や温度調節など鮮度管理を実施し、抜群の鮮度の魚を自分たちで買い戻し、お客さんに売ることができることは大きな強みです。
さらに、休漁期間にも通年で自社ブランドをアピールできるよう水産加工品の商品開発にも力を入れ、付加価値向上に取り組んでいます。

■県内の漁業者との団結力が生まれる

青森県六ヶ所村の定置網漁師の橋本氏と首都圏在住の六次化マーケター中田氏が衝撃的な出会いを果たし、地域のほかの漁業者も巻き込み誕生した尾駮鮮魚団。船上カメラでその日獲れた魚や船上で締める様子を動画配信。漁師がセレクトする鮮魚BOX、漁師カードなど新しい試みも試行錯誤の中から生まれました。
シケや気候の変化をあり、いかに鮮魚を安定供給するかは常に難題です。しかし尾駮鮮魚団がE Cサイトで扱う鮮魚BOXは、魚種を絞って案内するのではなく漁師がその日獲れた状態のいいものをセレクトし、7日以内に発送。消費者もあらかじめ理解した上で購入しています。

直売会など商品販売の際に配っていた漁師カードも、大好評。直売会に毎回来るお客さんなど、漁師カードきっかけで馴染み客もたくさんできたそう。誰が獲ったか誰が買ったか分かるので、美味しい魚を届けたいというモチベーションにもつながっています。
イベント会場の肴フェアやエキナカ催事でも、直接お客様と触れ合って漁師自らが売るなど、積極的に出店しています。
まだまだ、各浜では一人で頑張っている漁師さんもいますが、同じ課題認識を持っているのであればそこは協力しあえる。
尾駮鮮魚団は、豊富な水産資源に価値をつけ、漁業を次世代に繋げていこうという思いはみんなが持っている共通理念。それは青森県全体に広がりつつあります。

尾駮鮮魚団の束ねる橋本さんも中田さんも、これから先への思いは一緒。
「日本海側、太平洋側と違う魚種が獲れるのは青森ぐらい。この強みを活かし、海外に進出し、青森ブランドを広げていくためには、失敗を恐れず、続けていくことが大事。
地元で思いのある人を見つけて手を組んで、もっと深い漁師チームを作りたいなと思っています」
6ヶ所村で始まった水産業の6次化への挑戦。視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚・知覚をフル回転し、消費者に刺さる取り組みを加速させています。

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