見出し画像

『マグロ一筋』大間まちおこし ゲリラ爆走記

2022年11月28〜30日に開催された「三陸水産イノベーションサミット」。三陸の水産業のトップランナーたちの登壇レポートをお届けします。

舞台は青森県大間町。一見ふざけているのかと思いきや、地域を縦横無尽に巻き込み革新的な事業を生み出す姿はまさに『まちおこしゲリラ』。マグロ1本からどれだけ波及効果を生めるかという島氏の考えは必聴である。

スピーカー:
Yプロジェクト(株) 代表取締役 島康子氏
青森県下北郡大間町出身。青森高校を卒業後、慶應義塾大学卒業後、(株)リクルート入社。東京、仙台での生活を経て、1998年春に17年ぶりに実家の製材所を継ぐためにUターン。2000年のN H K連続テレビ小説『私の青空』の舞台が大間になったことをきっかけにまちおこしゲリラ集団「あおぞら組」をを立ち上げる。機動力、発信力を持ちながら、収益を上げることができるビジネスモデルの確立のため2013年4月にYプロジェクト(株)を設立し、社長に就任。

大都市圏に人口が集中し、まちおこしや地域おこしの活動が注目を集め始めるのは、1970年後半の「田園都市構想」、「一村一品運動」、そして1980年後半の「ふるさと創生計画」まで遡ります。
しかし大切なのは、その地に住む人が、いかにその地域の良さを気づき、自ら積極的に働いていくか。
魅力ある素材と、地域に住む人たちのコミュニティーによる広報・PR活動の大切さを、大間のまちおこしは教えてくれます。

■マグロが一本も流通しないマグロの町

今ではマグロといえば「大間」と連想できるほど、知名度のある大間マグロ。
青森県の下北半島北端に位置する大間が脚光を浴びるようになったのは、2000年4月に放送開始したNHK連続テレビ小説『私の青空』の舞台が大間と築地。主人公の実父が大間一のマグロ漁師という設定で、それをきっかけに<青空組>まちおこしゲリラの活動が始まりました。
函館から大間にフェリーでやってくる観光客へ大漁旗を振る歓迎スタイルで盛り上げた翌年(2001年)には、202キロのマグロに1キロ10万円、大間のマグロに2020万円の値がつきました。
ドラマを見たお客さんが「大間はマグロの町だから」とお客さんが来るようになりましたが、当時の大間では大間で獲れたマグロは、大間のどこの飲食店でも食べられませんでした。

地元でマグロが流通していなかった大間を、いかにマグロの代名詞にしていったのでしょうか。
あおぞら組の行動原則と行動規範があります。

*あおぞら組行動原則*
1おもしろいことは、待っててもこない。
2理屈こねる前に、まんず動け。
3やりたいやつが、やりたいことをやればいい。

*あおぞら組行動規範*
1 走りながら考えろ!
1 昨日より今日、今日より明日、1ミリでも前に進め!
1 腹から笑え(飲め)!
1 このふるさとでの生きざまをさらせ!磨け!
1 壁があったら、穴を開けろ!

そこには、「決して止まれない」、大間とマグロ愛があります。

■マグロのまち「大間」へ

漁協・漁師、商工会、マグロ業者、浜町商店会、飲食店、役場、浜町商店会、まちおこしゲリラで横串が刺さるように「大間やるど会」が立ち上がります。「マグロだけなら10−20億円、観光で100億やってマグロを“超える”」活動と鼻息も荒く、2001年10月の1週間、「朝やげ夕やげ横やげ~ 大間超マグロ祭り」を開催。協賛飲食店に行けばマグロを食べられると称して開催した会場では、漁師の朝ごはんということで、サンマの炭火焼きとイカ刺しの定食が用意されました。しかし来場者には「なにが“超”だよ。大したことねーな」と言われる始末。
最終日に慌てて協賛店から100kのマグロを1本仕入れ、解体即売を試しにやったら、すごくお客さんに喜ばれ、次年度からは解体即売を目玉になりました。

さらに、大間漁協組合長は積極的にマグロ漁師自らメディアに出て大間のマグロを発信しなきゃダメだと考え、テレビからのオファーを漁師プロダクションのように受けた結果、テレビを通じ大間のマグロ漁師のストーリーが付随し、大間マグロの認知と価値が増していきました。

マグロ祭りも3−4年目には、普段漁師だけしかいない漁港をお客さんが埋め尽くす状態になりました。
その熱に触発され、「わいどのマグロでお客さん大間さ来てくれるならわいども一生懸命獲れねば」と漁師に火がつき、大間にはもっと美味しいものがあるからと、飲食店の意識も変わり、大間マグロの知名度はどんどん増していきました。
マグロの漁師の家を案内し、マグロ漁師のストーリーを語る「夜はやらないエスコートクラブゲリラ旅行社」のツアーも好評で、胸はって案内できる大間になっていったのです。
現在は、子どもたちと希望をつなぐ持続可能なまちづくりへと、さらに未来へ向かっています。

Yプロジェクト社長の島康代さんは、「漁師がどんどんメディアに登場したことでスターのような存在になったし、一般の人たちも大間はマグロの町だということに誇りを持つようになり、かつてはマグロ一本も流通しない町から、食べに行く町になった。
周囲を巻き込むコツ? みんな強みが違うので、互いに保管し合い、互いの持ち味を活かし、力を合わせてやること」
そして一番大切なことは、「理屈こねる前にまんず動け!」。それに尽きます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?