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よるのコインランドリー

帰るのが遅くなりベランダに干したベッドカバーが湿っぽくなっていた。
厚手の服と一緒にランドリーバスケットに詰め込み、コインランドリーに走る。
転勤で広島に引っ越した1年目、洗濯機の購入が間に合わず
コインランドリーに通っていた頃を思い出す。

広島にいた時に通ったコインランドリーは
築30年は経つであろうマンションの1階にあった。
コンクリートの壁に青いペンキが塗られ、
蛍光灯がチカチカと点滅していた。
洗濯が終わるまでのあいだに
コインランドリーにおいてある週刊漫画を読むのが楽しみだった。

コインランドリーも進化したのだろう、
広くて、清潔なコインランドリーは
街灯の少ない道路をLEDの明るい光で照らしている。
SF映画でみる、ちいさな宇宙船が着陸している農場のようだ。

入口からいちばん遠い壁面に
おおきな乾燥機が3つ並び、入って左の壁には少し小さな乾燥機が4つ。
その対面には洗濯乾燥機が5つ並んでいる。
おおきな乾燥機の2つはぐるぐると回っていた。

左側のすこし小さな乾燥機に
洗濯物を放り込み200円を投入。
静かに回り始める洗濯物をしばし眺めてから
スマホで動画をチェックする。

室内には洗剤の匂いと
乾燥機から出る熱気でほんわかと暖かい。

乾燥機が止まるまでのあいだ、若い男性がひとり、
洗濯物を乾燥機に投入して、足早に出ていった。
また、夫婦と思わしき男女が2組、
1組目は取り出した洗濯をおおきなバスケットに詰め込み持って帰った。
あとのペアは備え付けられたおおきなテーブルに広げて畳み始める。
そのたびに静かな店舗が少し騒がしくなっては
静かになった。

夜のコインランドリー
好きかもしれない。

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