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成長ホルモンは筋肉量UPに関係がない!?驚きの事実とは!

成長ホルモンは筋肉量を増やす効果があるって思っていませんか?
実は、成長ホルモンは筋肉量UPには働きません!

1.成長ホルモンの働き

成長ホルモンは発育期において、「骨の成長の促進」・「タンパク質合成の促進」・「体内の脂肪の分解の促進」・「血糖の増加」などの働きがあります。

そして、筋肉に直接働きかけて栄養の代謝に関わる直接作用と、インスリン様成長因子を介して筋肉に働く間接作用の、2種類の働き方があります。

インスリン様成長因子(IGF)とは、肝臓で主に作られて、細胞の増殖や成長を促進させる作用、インスリンに似た作用を示します。

2.成長ホルモンは筋量UPに作用しない

先ほど示した成長ホルモンの作用である「タンパク質合成の促進」が取り上げられて、「成長ホルモンは筋肉量を増やす効果があり、成長ホルモンをいっぱい出せば、それだけ筋肉量も増えやすくなる!」という考えが広がりました。

結論から言うと、成長ホルモンに筋肉量を増やすような作用はありません。これはいくつかの研究結果から明らかになっています。

1992年に発表された研究で、成長ホルモンを投与したときに、レジスタンストレーニング(いわゆる筋トレ)に関与した筋肉の同化作用を高めるのかどうかを決定づける目的として行われました。

同化作用とは、タンパク質から筋肉が作られるように、身体の中で小さいものから大きなものが作られることです。

21~31歳の16人の男性を対象にし、7人は成長ホルモンを投与させて筋トレを行った「成長ホルモングループ」、残り9人は偽薬を投与し、成長ホルモンを投与したと思いこませて筋トレを行った「プラセボグループ」の2グループに無作為で分けました。

そして、両グループは12週間の間、大きな筋肉群をメインに、同じトレーニング方法でトレーニングを行って実験を行いました。

その結果、両グループでFFM(無脂肪量)と体内水分量は増加し、成長ホルモンを投与されたグループの方が多く増加していました。
FFM(無脂肪量)とは、身体の脂肪量を除いた、筋肉や骨、靱帯、内臓、水分などの脂肪以外のものを示します。

しかし、成長ホルモングループでは、大腿四頭筋のタンパク質合成率・体幹や腕、脚の周囲と筋力はより増加していなかったとなっています。

よって、成長ホルモングループでFFMが増加していたのは、筋肉以外の骨や靱帯、体内水分量が増加したものであって、成長ホルモンを投与した筋トレでは筋量をUPさせる効果は期待できないと示しました。

さらに、ワシントン大学にてもう一つ同じような研究があります。インスリン様成長因子の値が低い、健康な23人の高齢の男性を対象に、成長ホルモンを投与した8人のグループと、偽薬を投与した15人のグループに分けて、16週間の筋トレプログラムを実施しました。

その結果、FFMと体内水分量は成長ホルモンを投与したグループの方がより多く増加していました。

しかし、大腿四頭筋のタンパク質合成率、トレーニングの筋力などは両グループで同じ程度の結果となり、成長ホルモンを投与した場合のFFMの増加は、靱帯や内臓器官の組織の増加と体内の水分量が保持されたことが原因であると示しています。

これらの研究結果から、成長ホルモンはFFM(無脂肪量)の増加とタンパク質の合成を促進させる効果はあるけれど、筋タンパク質の合成による筋肉量の増加ではなく、靱帯や内臓器官の組織の増加と体内の水分量の保持によって増加したものであるということが分かります。

また、インスリン様成長因子(IGF)が成長ホルモンを介して筋肉に間接的に働くという効果もありますが、これは筋肉でのインスリンの活性を促すこと=つまり筋肉の分解を抑える働きを促すことと、栄養の代謝にはかかわっているけれど、筋量の増大の作用はないと発表されています。

3.まとめ

成長ホルモンはタンパク質合成を促進させる働きがあり、トレーニングをして身体の脂肪量を除いたFFM(無脂肪量)が増加することから、成長ホルモンは筋肉量をUPさせる効果があると言われていました。

しかし、成長ホルモンによる体重の増加は、靱帯や内臓器官の組織の増加や体内の水分量の保持によるものであることが分かり、筋肉量が増加したわけではないということです。

筋肉量をUPさせるには、成長ホルモンがたくさん出れば良いというような、単純なものではなく、他のホルモンや栄養素、筋肉への刺激、休養などの要素が絡み合って、筋肉が成長してくれるということです。

【参考文献】
・https://journals.physiology.org/doi/abs/10.1152/ajpendo.1992.262.3.E261

・https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/7864103

・https://grantome.com/grant/NIH/R01-AR057868-03

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