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繋ぐもの

炭酸が好きだ。私が幼い頃は種類はさほどなかったけれど、お誕生日、クリスマスなどの家族でちょっとご馳走が出る時、サイダーに果物缶やら果物を入れたフルーツポンチを食べられるのが楽しみで仕方なかった。
大きなボウルに果物をいれ、そこにサイダーを注ぐ。そこから普段使わないちょっと洒落たガラスの器に取り分ける。
果物はみかんとりんごとバナナ、たまに黄桃なんて普段から食べられるものだったけれど、ガラスの器の中で炭酸の泡に包まれるその様はキラキラと輝いて見えた。こんなキラキラしたデザートは、きっとお姫様も食べてるに違いない。
そうか、私もお姫様と同じだ。幼い頃、そんな風に思いちょっと気取って食べていた記憶がある。

炭酸水が好きだ。次女を妊娠した時、つわりがとても酷かった。長女の時はひたすら眠いだけだったので同じ感じだろうとタカをくくっていたのだがそんなことはなかった。吐き気が酷い。匂いが辛い。
その時長女は1歳8ヶ月。当たり前だがお世話をしなければならない。ご飯は作らなければならないし、散歩や外遊びにも連れていき疲れさせなければ夜寝てくれない。おまけに歯科検診やら1歳半検診などにも連れていかなければならない。
意思の疎通が出来るようになったとはいえ「ママは辛いから今日はお家にいよう」が通用しない。朝から散歩に連れて行けと玄関の自分の靴を私の額に置いて起こすような娘だ。私の親も義親も自営業で頼れない。
最終的には水を飲んでも吐いていた。
そんな時「無糖の炭酸水はつわりに効くらしい」そんな情報を知った。恐らくマタニティ雑誌だろう。
「んなアホな」
無糖の炭酸水は私にとってレモンスカッシュを作る時の材料でしかなかった。
「甘くない炭酸水なんて」
しかし、背に腹はかえられぬ。今より少しでも楽になれるのなら、そんな藁にもすがる思いで試してみた。

結論から言えばめちゃめちゃ楽になった。吐き気が収まった。これだけで全然違う。それに何より
「美味しい」
そう、無糖の炭酸水はとても美味しかった。それから出産するまで私は炭酸水を飲み続けた。あの時の炭酸水は、大袈裟でなく私とお腹にいた次女の命を繋いでくれた。今でもメインに飲む炭酸は無糖の炭酸水だ。

サイダーは我が家のフルーツポンチ作りに欠かせない。炭酸がそんな得意ではない娘たちも、サイダーとフルーツポンチは大好きである。ミックス缶、バナナ、りんご、そして白玉。お誕生日会や七夕、クリスマスなど我が家の年中行事にも必ず登場する。幼い頃、お姫様気分だった思い出を娘たちに繋いだ形だ。きっと娘たちの思い出にもなっている事だろう。
将来、もしも娘たちがつわりに苦しむような時が来たら「無糖の炭酸水、いいよ」私はちょっとドヤ顔で教えるだろう。
そしてもしも孫たちが我が家に遊びに来たその際には、フルーツポンチをサイダーで作るのだ。その時には白玉に加えて杏仁豆腐も入れてあげよう。



#炭酸が好き


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