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 休日の朝、目が覚めたあなたは急に気付く。自分はどうやら、《敵》になってしまったのだと。
 具体的に何の《敵》なのか? あなたは考え始める。昨日、一昨日、今週の行動。いつも通りのルーティンを繰り返してきただけだ。すると、いつもの生活を続けるなかで、何かしらの臨界点を超えてしまったのかもしれない。しばらくぼんやりと考え込んでいたが、埒が明かないので、起き上がり、一日を始めることにする。その中で、何か自分を強く拒絶するものがあれば、それの《敵》になったのだろうとあなたは考える。
 自分が何らかの《敵》であるという意識があるせいか、日常がどことなくそれまでと違って見える。しかし、その感覚に反して事象としては何事もなく過ぎていく。だが、《敵》になったのだというあなたの確信は揺らがない。そのまま夜になる。
 眠ろうとしたとき、あなたはふと思う。今日、自分は何をしただろうか。何も思い出すことができない。手に持った砂が落ちていくような感覚に陥る。そして気付く。いまやあなたは、あなた自身の生の《敵》だ。

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