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将棋の真理?の話

将棋の研究をし続けてふと思ったこと


初手の候補手が多い詰将棋をどう解くか

将棋の指し手の正解の見つけ方

上図は、詰将棋の問題ですが、結構盤面がごちゃごちゃしていて初手からして何を指したらよいか迷う方も多いと思います。いきなり、こんな難しそうな問題を解けと言われても嫌になってしまうと思いますので、ここで、少し将棋から離れて別のゲームの話をしましょう。

オセロと将棋

皆さんオセロというゲームはやったことがあるでしょうか?
恐らくほとんどの方はルールくらいは知っていると思いますが、オセロは強い人とやると戦いが進むにつれて、こちら側の打つ場所が少なくなっていきます。私は、オセロに関しては初心者に毛が生えたほどなので詳しいことは分かりませんが、強い人は意図的に相手の手を潰すような手を選んでいるからだと思います。そして、本当に最終盤になるとこちらは打つ手がまったくなくなりパスするしかないなんてことも珍しくありません。
実をいうとこの話は、将棋にも密接に関連していることなのです。

将棋で指し手に迷った時の考え方

私は将棋に関しては、オセロと違い高段者レベルの棋力がありますのである程度信頼できることが言えます。長年プロの将棋や強い人の将棋を見て来て、また自分で指してきて、定跡書を見て来て、詰将棋を解いてきて、様々な場面で意識させられることがこのオセロ的な考え方です。つまり、ある局面において、正解手っぽい手が複数浮かんだら、それに対する相手の応手が限定される手が正解である確率がかなり高いということです。

定跡書にも書いてある教え

さも自分が発見した真理であるかのように偉そうに講釈を垂れていますが、一般論としてこの理屈を謳った人にはあまり会ったことがありません。ただし、定跡書で序盤戦略としてこれと似た理屈を述べている本はたまにあります。つまり、相手の応手を限定した方が余計な変化を消すことにつながるので得ということです。例をあげましょう。下図をご覧ください。


典型的な四間飛車対居飛車対抗形の出だし

上図の局面は典型的な対抗形の出だし、最序盤の局面ですがここで後手番の居飛車はどう指したらよいでしょうか?あまり考えずに△6二銀と指す人がほとんどだと思います。もちろんこれで悪いということはなく△6二銀も普通の手ですし、評価値的にも△6二銀でわるくなるという事はありません。
しかし、△6二銀には振り飛車から▲6五歩と動かれる手を気にしなくてはなりません。詳細はここでは述べませんが、△6二銀▲6五歩△8八角成▲同銀△4五角▲7九金△2七角成はそこで▲7七角と打たれると香取りが受からず、後手不利になります。従って、▲6五歩に対しては、△4二玉とするくらいですが、先手に立石流に組まれたりして動かれる順が生じてしまいます。

ちなみに、正解手は△5四歩です。これだと、▲6五歩と動く手には、同じように進めて、最後の▲7七角に△1二飛と受けることが出来るので、後手が指せる局面になります。(下図)

△1二飛と受けることが出来るのが△5四歩の効果

従って、この△5四歩という手は相手の▲6五歩と動く手を消した手、すなわち相手の応手を限定した手になります。ちなみに、評価値的には△6二銀も△5四歩もさほど変わりはなくそれだけではっきり優劣がつくというわけではないですが、こういうことも頭の片隅に入れておくということは大事なことです。

序盤・中盤・終盤すべてに当てはまる真理

話を元に戻しましょう。この相手の指し手が限定される手が正解手というのは、何も序盤戦においてだけ当てはまることではない、ということです。最初に掲げた詰将棋を見てみます。


初手で相手の応手が1手に限定される手は何か?

この詰将棋の初手は6通りもあります。成や不成まで入れるともっとたくさんです。しかし、実をいうと相手の応手が限定される手はそのうちたった2つだけです。つまり、▲1三銀行成と▲2三銀打。そのうち最初の▲1三銀行成の方は、相手△同桂と応じるしかありませんが、△同桂となった局面は玉の上部脱出が防げない形なので一目で違うと分かります。従って、残りの▲2三銀打が正解ではないかと目星をつけます。


同じように相手の応手が限定される手を選んでいく

続けます。次に、△2三同桂となった局面で、今度相手の応手が1つに限定される手は、▲1三銀行成です。先ほどは玉の上部脱出が防げない形として却下した手ですが、今度は初手▲2三銀打ちと打ち捨てたことにより、上部脱出されない形になっています。従って三手目は▲1三銀行成を候補手として読みを進めて行きます。


さらに相手の応手によって候補手を絞り込んでいきます

ここまで来ると初形に比べて、大分局面がさっぱりしてきました。さらに同じ作業を続けます。今度は、▲2一角という手が浮かびますが、△2二玉と銀を取られた局面を思い浮かべると要の銀を取られてしまうと攻めの取っ掛かりがなくなり、これ以上有力な攻めが続かないことが分かります。よってこの手は却下。
実はこの△1三同桂の局面においては、▲2一角という手以外の手はすべて相手側に2つ以上の応手があります。では、応手が1つではなく2つの手はどうかと少し読む手の幅を広げてみます。相手側に応手が2つある手としては、▲1一銀成と▲2四桂馬が考えられます。

攻めの取っ掛かりがなくなる順はダメ!


▲1一銀成りは取っ掛かりを自ら消す手

このように駒を捨てて自ら取っ掛かりをなくす手が正解手となりうるのは、その手によって新たな取っ掛かりが得られる場合ですが、この場合は例えば▲2四桂と打つ筋も△同桂と取られてしまい新たな取っ掛かりを得ることができないため▲1一銀成りのような手が正解となることはあり得ません。

次に▲2四桂を見ていきましょう。▲2四桂には△同桂と応じる手と△2二玉と応じる手の2通りあります。まず、△2二玉には▲1一角と打ち以下詰みになることが確認できます。


以下△2一玉にも▲3二桂成△1二玉▲2二成桂△同金▲同角成以下駒余りの詰み

従って、▲2四桂には△同桂と応じるしかありませんが、(これで実質的に相手の応手が1手に絞られた)そこで、先ほど却下した▲2一角という手が実現します。(下図)


ここまでくれば後は簡単な詰み

以下は簡単な詰みなので説明は省略します。△2二玉に▲3一龍と金を取っての詰みになります。
いかがでしたでしょうか?説明すると一つ一つ冗長に感じられますが、実をいうと思考の中ではとてもシンプルに処理できるはずです。今回は長くなってしまったのでこの辺にしますが、詰将棋がなかなか解けない時や実戦で指し手に迷った時にこの相手の応手を限定させる手が正解という考えを思い出して頂けたらと思います。

将棋は、指し手を選ぶ際に羅針盤と呼べるような指針となるものを数多く持っていた方がより精度の高い手を選ぶことができますが、今回ご紹介したのは、その羅針盤の一つになりうる重要な考えだと思っていますのでまた追々紹介出来たらと思います。


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