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マスターデュエルから紙の遊戯王を始めて1年が経ったわけだけど

このタイトルとクシャトリラ・フェンリルの画像を見て「おっ、遊戯王環境の苛烈さに言及する記事かぁ~~??」と期待した人がいたら、ごめんな。

結論から言うと、「遊戯王OCGってゲーム、滅茶苦茶面白いぜ」って話をするんだ。

もっと言うと、僕が遊戯王で一番好きな瞬間を挙げろと言われたら迷いなくこう答えるね。

「あっ、じゃあチェーンしてスキルドレインで」


マスターデュエルっていう面白いアプリがあるらしい

2022年1月19日、それは突然訪れた。

いつも通りTwitterを開いたら、突然フォローしているオタクが何の前触れもなく遊戯王の話で盛り上がっていた。

いくらアナログゲームに疎い僕でも遊戯王は流石に知っている。

というかむしろ直撃世代と言っていい。小学生の頃になんとなくテレビで遊戯にボコボコにされるインセクター羽蛾を見ていたし、中学生の時は常に遊戯と海馬の音MADで爆笑していた。
(この記事を書きながら久しぶりにツンデレキャニオンを見返したら地元のショッピングモールぐらい心が落ち着いた)

それでも遊戯王OCGに触れる機会はほとんどなかった。小学生の頃はたまに遊戯王カードをいっぱい持ってる友人にやらせてもらって、ムカムカとかいうカードが最強だと思い込んでいた。

レベル2版オシリスの天空竜

ともあれみんながやっているゲームにはひとまず乗っておく派のミーハー根性が幸いし、僕もとりあえずでマスターデュエルを開始するに至った。

マスターデュエルを始めて最初に驚いたのは、モンスターを守備表示で通常召喚することはできないというルールだったこと。

最強の仲間、黄金卿エルドリッチ

ところで僕はマスターデュエルを始めるよりもずっと前、ポケモン対戦にハマっていた時期があった。

ポケモン対戦の中でも僕は全力で勝ちに行くスタイルが好きだったし、勝つためにはできる限り強いポケモンでパーティを組むのが当然だと思っていた。好きなポケモンはローテーションバトルの化身トルネロス。

というわけで、僕は当然マスターデュエルを始めるにあたって最も強いデッキが何かをまず調べた。いくつか強いと言われていたデッキはあったが、友人にオススメされたのもあって『黄金卿エルドリッチ』のデッキを組むことにした。今思えば、これが運命の分かれ道だったと言っていい。

カッコよくて強い、最愛の1枚

対人戦ゲームにおいて僕が大事にしていることは二つある。
一つは一緒に遊ぶ相手が身近にいること。
もう一つは、強いカードを好きになることだ。

そして、黄金卿エルドリッチは強かった。それはもう見事に。

今更だが、僕は戦うのが好きなわけじゃない。勝つのが好きなんだ。

敢えて言うが、僕は対人ゲームが基本的に弱い。

この場合の”弱い”は、反射神経が鈍いとか記憶力が悪いとか、相手の考えを上手く読めないとか、それ以前の問題として……心が弱い。

具体的に言うと、僕は負けるとカードのせいにしてしまう人間だ。

「相手の方が攻撃力が高いから」「これは最新弾のカードだから」等々、言い訳は探そうと思えば無限に探せるだろう。

ポケモンでもそうだ。「種族値が足りないから」「覚える技が弱いから」みたいなね。

負けたのをポケモンのせいにするのは心が痛い。ポケモンが好きでやっているのに、ポケモンの悪口を思いついてしまう自分が嫌だった。

だから僕は退路をなくすためにとにかく強いポケモンを使った。手持ちのポケモンが理想の編成なら、負ける理由はもう自分の実力と運だけだからだ。

遊戯王でもそれは概ね同じだった。ごく当たり前の話かもしれないが、カード型の対戦ゲームなのでカードパワーの差というものが勿論ある。

負けた時に「コイツのカードパワーが低いから負けたんだ」と思ってしまうのは、いくらなんでも自分が惨めすぎる。

その点で言えば、まさしく黄金卿エルドリッチというテーマ、そしてそれらを支える永続罠カードたちの強さは惚れ惚れするほどに圧倒的だった。

思い入れが深すぎて禁止になっても砕けずにいるロイヤル虚無空間

始めたばかりの初心者が一万種類以上の見知らぬカード効果を覚えられるわけがない。そんな初心者を永続罠はいつだって助けてくれた。

僕の遊戯王OCG最終回はこう

『スキルドレイン』は相手がフィールドで発動したテキストを文字通りインクのシミ同然にしてくれる。コイツから学んだことは数知れない。

『王宮の勅命』には幾度となくハーピィの羽根帚やサイクロンから永続魔法を守ってもらった。僕のカードを庇うあの雄姿は今も目に焼き付いている。

『虚無空間』は相手の特殊召喚を数えきれないほど封じてくれた。キミがいなくなってから、部屋がガランとしたように感じるよ。

他にもアンデットワールドとのコンボが強力な『群雄割拠』、勇者トークンを孤立させるのが上手な『御前試合』、自分の損よりも相手の被害が大きければ勝てることを教えてくれた『センサー万別』。どれも皆大切な仲間たちだ。

初心者の味方は誰なのか

「紙のカードってお金かかるんでしょ?」と腰が引けていた自分を遊戯王OCGに引き込んでくれた、思い出深い一枚がある。

僕にとって思い入れ深い一枚。

僕をマスターデュエルに引き込んだのが『黄金卿エルドリッチ』なら、遊戯王OCGに引き込んだのはこの『クシャトリラ・フェンリル』だ。

話はこのクシャトリラ・フェンリル登場の2ヶ月ほど前に遡る。

OCGを始めるきっかけそのものは、僕がマスターデュエルにハマっているのを見た友人T氏がなぜかシャニマス4thライブ当日に黄金卿エルドリッチのデッキ40枚をポンと手渡してきたことだった。

TCGプレイヤーはカードへの金のかけ方が凄いとは聞くが、デッキそのものを渡してくる人もいるのだとこの時学んだ。

だが一方でその当時、世間ではイシズティアラメンツというとんでもないデッキが流行っていた。
自分でカードを買ってみて、友人(T氏とは別の人だ)と共にいざデュエル!……というところで僕のエルドリッチは全てムドラ・ケルドウのフリーチェーンデッキ戻し効果で場に出ることなく惨敗した。

マスターデュエルではあんなに強かった黄金卿エルドリッチも、環境の進んだOCGではどうやら上位クラスのデッキというわけではなかったらしい。

だが、黄金卿エルドリッチはそれで終わるデッキなのだろうか?

……いいや、違う。マスターデュエルでも勇者トークンや烙印融合など数多のギミックを取り込んでは形を柔軟に変化させて戦っていたではないか。

言い忘れていたが、僕は諦めが悪い方だ。マスターデュエルでも自分からサレンダーを押すことはほとんどないし、開封済みで賞味期限が3日過ぎた牛乳を飲んで腹も壊す。

僕はエルドリッチと共に戦う方法を探し、遊戯王OCGにしかないカード群へ目を走らせることとした。

それからしばらくした後、7月の大型パック『DARKWING BLAST』が発売を迎える。

話が逸れるが、僕はマスターデュエルにハマって2ヶ月で遊戯王5D'sというアニメ全154話を完走していた。これがもう滅茶苦茶に面白かった。
一番好きな話は第59話『孤高の光 セイヴァー・デモン・ドラゴン』。3回見て3回泣いた。

そういうわけなので、5D'sに登場したクロウ、延いてはブラックフェザードラゴンの強化形態がパッケージのパックというのはなんとも心惹かれるものがあり、最早少年という歳でもない僕は思いきってパックを一箱買ってみることにしたのだった。

……冷静に考えると30パックって凄くない?一人で30パックも開けていいのかよ?

そんなことを思いながら開封した。開けまくった。マジで知らんカードがわんさか出てくる中、僕の手元に何か黄金卿エルドリッチと近しい特撮ヴィラン的格好良さを感じるカードが現れた。

それこそが、クシャトリラ・フェンリルとの出会いだった。


もうマスターデュエルにも実装されたのでこの記事を読むような人間にはその強さがいかようなものであるか、説明は不要だろう。

彼は黄金卿エルドリッチとの噛み合いが良く、エルドリッチがデッキに戻されようとフィールドで相手のペルレイノやルルカロスを逐次裏側除外していくクシャトリラ・フェンリルの雄姿を見て、僕はこのカードを世界で最初に発見したつもりの笑顔で使いまくっていた。おそらくだが、ホモ・サピエンスで最初に武器を取ってマンモスに打ち勝った人間もそのような気分だったに違いない。

そして僕はこの日、遊戯王OCGについて一つ理解した。

誰も知らない発売したてのカードであれば、皆が初心者の自分と同じスタートラインから始まる。

このクシャトリラ・フェンリルというカードにおいてだけは、この日歴戦のプレイヤーたちと同じスタートラインに立っているのだと。


時に、初心者向けのカードとはなんだろうか、と考えることがある。

アニメに登場したカード?OCGでストーリーを展開しているカード?それとも簡単に相手を封殺できるカード?

この答えには多様な状況とそれに対応する解答が存在しているが、少なくとも一年前の僕にとっては場への出しやすさ・妨害性能・攻撃力・永続罠との噛み合い等、どれをとっても不思議と今まで使ってきた仲間たちとの繋がりを感じるカード……それこそがクシャトリラ・フェンリルだったのである。


無論、実際はフェンリルをただ握っていればいいわけではなくクシャトリラ以外のカードへの知識、経験の差が勝敗を分けることになっていくと気付かされるわけだが、それはもう少し後の話だ。

さようなら、クシャトリラ・フェンリル

さて、長々とクシャトリラ・フェンリルとの出会いを綴ってきたがここでお別れの話もしなくてはならない。

クシャトリラ・フェンリルは強かった。それはもう、驚くほどに。

そしてどうやら驚いていたのは僕だけではなかったようで、その使用率の高さと強さ故に周辺のカード含め度重なる規制を受けた。

フェンリル自身は制限カード、フェンリルをサーチできる『六世壊=パライゾス』にいたっては登場から僅か78日で同じく制限カードとなる。

僕自身、『クシャトリラ』テーマをデッキとして使っていたものの制限カードとなったフェンリルが中間管理職のような不自由さを抱いていると感じ、フェンリル自身が伸び伸びと動ける『ティアラメンツ』デッキに後半は軸を置くようになっていた。

だが、それでも2023年6月末。世界はフェンリルを放ってはおかなかった。

世界を武力で変えた存在は、平和な世界に居場所など持てない。

映画とかでもよく見るやつだ。だから覚悟はしていた。

だがそれでも、フェンリルと一緒にいられなくなる。それは、最早長年の友人を一人失ったかのような心境だった。

僕は一人で、クシャトリラ・フェンリルと修学旅行で同じ班だった時のことを思い出す。

お前さ、好きなコいるだろ?

あはは、バレてたか……

実はさ、同じクラスのK子ちゃんがちょっと気になってるっていうか……

へぇ、いいじゃん。お似合いだと思うぜ。

告んねえの?

わっ、わっ、バカ!

そんないきなりは無理だって……

僕、そんなカッコよくないしさ……

いいんだよ、そういうのは言ってから考えりゃ。

言わないとタイミング逃すぜ?

気楽に言ってくれるなぁ……

そりゃお前は攻撃・守備2400もあって、同名サーチできて、攻撃宣言時に相手のカード裏側で除外できるからいいけどさ。

僕は相手に何かできるようなこと、思いつかないよ……

ははは、それもそうか!

なんてったって俺の方が絶対強いもんなぁ!

コ、コイツ~~~~!!!!


だが、そんな彼に頼ることも、今の僕にはもうできない。

モチベーションの喪失と出会い

クシャトリラ・フェンリルが消えてからおよそ一か月、僕の中ではとても熱心に温まっていた遊戯王熱はすっかり息を潜め、その間僕は他のゲームを遊んだり自作のゲームを作ったりしていた。



僕は今の遊戯王OCGを一緒に戦ってくれる相棒と言っていいカードを失った。

多分、これからクシャトリラ・フェンリルが禁止から帰ってくるまで僕はあのカードよりも頼れる存在を見つけられることはないだろう。

それは、今現在も思っていることだ。


けれど、本当にそれだけなのだろうか?


クシャトリラ・フェンリルが僕にもたらしたものは、決して勝利だけではない。フェンリルを知っていく過程で、多数のカードや友人との出会いがあった。

フェンリルを知らなければ一生知ることのなかったカード……例えば、スケアクロー。コイツらは共通効果で簡単に場に出てきて、簡単にリンク値を稼いでくれる。


クシャトリラ・フェンリルによって始めたOCGで、新たな友人もできた。

大会に参加したり動画投稿をしたりと精力的な活動をする人で、見ているとこっちも遊戯王をやろうかな、やりたいなと思える姿勢の話しやすい人もいた。

また、リアルで長年の付き合いがある友人とも遊戯王をやるようになった。

僕がOCGを始めたと言うと突然汎用リンクモンスターや墓穴の指名者をごそっと持ってきて渡してくれたし、そのカードを今もずっと使わせてもらっている。ありがとう。


僕の強い味方だったフェンリルは、いなくなっても一緒に居た時間が消えたわけではないのだ。

そんなある時、自分が好きになったカードの特徴をなんとなく洗い出してみようと思った。

クシャトリラ・フェンリルがいなくても、自分に何かできることはないかと考えてしまったからだ。


僕は自分の大好きな黄金卿エルドリッチと、クシャトリラ・フェンリルに共通する強みを見てみた。

まず、攻撃力が高い。

そして、すぐに場に出てくる。

ここはわかりやすく共通している。

そこから先は、テーマの動きにも目を向けてみる。

黄金卿エルドリッチは魔法・罠カードを墓地へ送り、クシャトリラ・フェンリルは攻撃宣言時や相手の効果に反応して、それぞれ除去ができる。

更に、墓地に送られたエルドリッチ関係のカードや、クシャトリラ・フェンリル自身は必ず何かしらのカードを展開する効果を持っていた。

つまり、僕は「簡単に場に出て」「ステータスが高く」「除去効果を持ち」「展開に繋がる」カードを強いと思っており、それらを比較的容易に行えるカードを好きになっているのだ。

そんなカードが、今のOCG環境の最前線に、存在するのか……?


!?!?!?!?!?!?!?!????


う、うわあああああああああああああああっっっ!!!!!!



うわああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっっっっっっっっっっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


気が付いたら手元にカードが揃っていた……………………

千年アイテムとかで身体を別の誰かに動かされているキャラクターが原作にはいたと思うが、あれは多分遊戯王プレイヤーなら誰にでも起こりうることなのだと思う。


遊戯王OCGは、面白い

ともあれ、クシャトリラ・フェンリルが灯した遊戯王OCGの火は簡単には消えなかった。

僕はもうしばらく遊戯王OCGを楽しんでいるし、クシャトリラ・フェンリルがその内禁止カードから帰って来ると信じている。


ポケモン対戦に興じていた時からそうだったが、競技性の強い対人ゲームというのはよく「友達をなくす」という言葉が挙がりがちだ。

実際のところ、その可能性がないとは言い切れない。いや多分、他ののんびりプレイできるゲームよりは可能性は遥かに高い気もする。

僕自身、優れた人格者ではないし対人戦への熱が高まると自分の中に様々な理由で他者へ差別的・排他的な視線を向けようとする弱い自分が現れる。

(例えば、「初心者の僕にもわかるようなことをコイツはわからないのか?」とか、「強いカードをあえて使わないのは相手を下に見ているに違いない」とか、そういう口に出してはいけないことを思う瞬間はある)

けれど、その上で対人型ゲームというのは人と人とのコミュニケーションがなければ絶対に成立しないものだ。

そして僕は、そこで挟まるコミュニケーションが好きだし、できればもっと多くの人とコミュニケーションを交わしたり、知り合ったりしたいと思う。

他者とのコミュニケーションは本来、様々な政治的・宗教的・格差的な問題を孕んだ複雑な道だ。

だけど、遊戯王OCGのようなゲームはそうした壁を(一時的にとはいえ)できる限り払いのけ、相手との対話の可能性を見出すことのできるツールだと僕は思っている。

そのツールの力を僕は最大限引き出せているか?と言われると、恥ずかしながらまだまだ未熟と言う他ない。

その意味でも僕はやはりまだ弱いし、自分の弱さと少しずつ向き合いながらゲームを遊んでいくしかないのだとも思う。


これから先も僕は相手の低ステータスモンスターの効果に笑顔でチェーンしてスキルドレインを発動するだろうし、クシャトリラ・ユニコーンで相手のEXデッキ除外を躊躇うこともないだろう。

それでもこうして少しずつ前に進めているのは多分、僕とコミュニケーションを交わしてデュエルしてくれる相手がいるからなのだと思う。

だからこそ、この記事はこの言葉で締めたい。


遊戯王OCGってゲーム、滅茶苦茶面白いぜ。


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