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初トライアスロン前夜

10月の初旬にしては寒い夜だった。気温は20度を下回っている。

大阪城公園行われる、自身初のトライアスロンの前夜。

仕事が長引き帰宅が遅れたが、僕は何だが気になったので会場の下見に行った。月が綺麗な空気が澄んだ夜だった。

いつもの走り慣れたコースにフェンスやコーンが置かれていて、ほんまに実施されるんやなあ、と実感が湧いてきた。この寒さの中、本当にあの堀で泳ぐのかと考えると、少々不安感が増してきた。

帰り道、銭湯に寄って冷えた体と、張りの残る筋肉を温め、コンディションを整える。左膝の痛みが気になるが、いつものことだから何とかなるだろう。

気持ちは落ち着いている。何だか不思議な感覚だ。

5月の末に、ほとんど発作的にトライアスロン参加を決めた。準備期間は4か月しかなかった。無謀な挑戦かもしれなかった。けど、「やるなら今しかねえ」と長渕剛の「新宿の親父の唄」を口ずさみながら申し込んだ。

それから4か月、僕なりによく頑張って準備してきたと思う。トライアスロンはスイム、バイク、ランと三種目あるのでやるべきタスクが多い。朝、出勤前に走り、夜はプールで泳いだ。特に苦手のランはトレーナーをつけて基礎からやり直して、走り方を根本的に変えた。スイムも上達したし、バイクは得意種目だ。何とかなりそうな気がしていた。

しかし好事魔多し 。8月半ば、盆休みに大きく体調を崩した。1週間練習できなかった。その後も不調が続いた。9月に入ると今度は胃腸炎に度々悩まされた(仕事のストレスだ)。なかなか計画したように身体を仕上げることはできなかった。正直、とても焦りがあったし、これで大丈夫なのだろうかと、凄く不安な気持ちにもなった。

それでも、やれることはやった。今、自分がやれることはやった。

後は、出たとこ勝負。

若干、開き直りに近かったけど、そう思わないと不安で押し潰されてそうだったのかもしれない。

夜、寝る前に僕が思ったこと。

昔、映画「ロッキー」の中でこんなセリフがあった。ボクシングのタイトルマッチを翌日にしたロッキーがエイドリアンにこう語った。

If I can go that distance, you see, and that bell rings and I'm still standin', I'm gonna know for the first time in my life, see, that I weren't just another bum from the neighborhood.
「もし最終ラウンドが終わってゴングが鳴っても、俺がリングの上に立っていたら、俺は人生で初めてそのへんのゴロツキじゃないってことを証明できるんだ」 

僕も、まさにそんな心境だった。

では、もし僕がトライアスロンを走り終えることができたのなら、僕は人生で初めて何を証明できるのだろう?

それを確かめるために、僕は明日レースに出るのだ。

きっと。



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