誰かの日記 一月五日

 もう補講やってた。山田が「本読みてえ本読みてえ」うるさくて言い方が中学生の「セックスしてえ」と同じ感じだったから「言い方違うわ」て何回も指摘した。読書のことセックスだと思ってる節がある。どういうことだよ。職員室に行ったら芹沢先生が一人で餃子食ってた。十二個食ってた。米なしで。「おかしいですよ餃子十二個食うの」と教えた。四組の教室の前に置いてあった消化器が無くなったらしい。本当にどうでもいい。芹沢先生が火元責任者らしくて、見つけたら五千円くれると言った。山田は図書室でなんか数学の本読んでたから俺一人で探した。体育館に行ったらバドミントン部が部活やっててエロかったから職員室に芹沢先生呼び行った。「バドミントン部がエロいですよ」って教えてあげたら餃子持ったままついてきた。芹沢先生と二人でバドミントン部の練習を見た。消化器全然見つからない。中庭で芹沢先生は諦めてタバコを吸い始めた。なんか高校ってもっとキラキラしてるって思ってたっていうか、中庭暗いしジメジメしてるし結局山田と芹沢先生しか話す人いないし、マジでなんか毎日雨降ってる気がする。今日とか結構晴れてたはずなのに。図書室に戻ったら山田が寝てた。セックスのあとすぐ寝るタイプの男だ。わかんないけど。起こそうと思って近付いたら、山田の椅子の横に消化器置いてあって『1−4』て書いてあって驚く。山田も知らないらしい。怖い。今だに怖い。なんかスッと、え、あるじゃん、え、なに、消化器あるじゃん、みたいな、スッと、普通に置いてあってしかも山田も「ああ」みたいな。ああ、じゃないから。超怖い。今だに怖いあの瞬間思い出すと。芹沢先生が本当に五千円渡してこようとしてきたから断った。五百円もらった。山田とゲーセン行ってUFOキャッチャーやって使い果たす。ココイチ行って大学どこ行くか話す。山田は明治っていうところらしい。東京とかよくわかんねえな。行こうかな東京。家帰る途中、市電の中で『東』に会う。バドミントン部の三年。一番エロい人。家帰って東京のことマリに話したら「子ども歌うまいんだから歌いなさいよ」と。よくわからない。歌うまくないし。行くか〜。行かないかも。一人暮らしはしたい。ていうかまだギリ一年だし別いいや。風呂入りながら、マリが俺のこと「子ども」て呼んでて、俺がマリのこと「マリ」て呼んでるの死ぬまでにあと何回他人に説明しなきゃいけないんだよ。と思う。明日もバドミントン部の練習観に行こうかな。東を観たい。東の写真集作ろうかな。芹沢先生が履いてたスニーカーが格好良かったことを思い出す。調べたらNIKEのコルテッツていうやつだった。高い。いつか買おう。なんで餃子十二個食ってたん。別全然おかしくないし何個食べてもいいんだけど、なんかいちいち苦しくなるわ。高校生活思ってたのと違うけどでも今俺たちが二度と戻れない時間の中にいるのはわかる。きつい。二年なったら写真部入ろうかな。

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