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偏差値が低いの話

 寒い。ここ数日ずっと考えていることがあって、ずっと考えていたら右まぶたの痙攣が止まらなくなった。なんなのか。高円寺の本屋でPOPEYEの滝口さんのページを読んだ。かっこいい。新しくアベマで始まったストファイリーグがおもしろい。ウメハラさんがビギナークラスの人に「しゃがみ強パンチがリーチも長くて判定も強いから」とアドバイスしただけで格上の相手に勝つ回がとてもおもしろかった。

 なんでそういう状態になっているのかわからないけど、英語が無性に読みたい状態がここ数日続いていて、新宿の紀伊国屋でスタインベックの『エデンの東』の英語バージョンというか、本来のやつというか、アメリカのやつを買った。辞書を無茶苦茶使いながら異様な遅さでゆっくり読んでいる。三歳ぐらいから十二歳ぐらいまでずっとECCに通わされていたのに英語がとても苦手で、高校の時もいつも34点とかだった。柴崎さんの『きょうのできごと』を四十秒ぐらいで読み終わって、読んでいる時に俺は高校生の時いつも寝ていたなとか考えていた。

 偏差値が低いのがコンプレックスで、POPEYEの滝口さんのページを読んだ時も、ストファイの動画を観ている時も、友達と麻雀をしている時も、「俺は頭が悪いな」と思う。そして小さく落ち込む。結局どの分野においても優秀な人間というのは頭が良い。俺は頭が悪い。悪いというか、真っ白な時間が多い。何も考えていない。だから感情だけになる時間が多い。スピードが速いものがやっぱり苦手だ。頭が追いつかない。ゆっくりであることで人を不快にさせることが多々ある気がする。気がしているだけだから別に誰も不快に思ってもないかもしれないけど。小学校のパソコンの時間、マインスイーパば〜っかりやってました。赤い字で「3」と出てきたら、その周りには3個爆弾があるから、えーっと、こっちは「2」だからここは開けれる、と。と、自分のペースで進められるから。生きづらい。俺の小学校は1学年30人の田舎で、その中でも俺の実家が一番田舎でした。山と川に囲まれて、家の中を蛇が這い(マジ)、日曜日になると猟師がイノシシを撃つ銃声で目が覚める生活だったので、友達と遊ぶにも一苦労(4キロぐらい歩かなければならない)。学校が終わって家に帰ると祖父と祖母が相撲中継を観ていて、俺は意味もなく川に行って石ころを投げたり指にトンボを止めたり、草を食べたりミミズを結んだりして、十八歳になって東京に来た。大雨が降って、その家は洪水で流された。

もともとゆっくりが好きなのか、環境(蛇やトンボやミミズたち)が俺をゆっくりにしてくれたのか。辞書を一生懸命使って『エデンの東』を読んでいる時、その「遅さ」にとてつもない安心感を覚えている。怒らないでほしい。迷惑かけてないんだから。少し待ってくれよ。

 ポテサラとぺっちゃんとまなみんとアンジーで銭湯に行った時に、俺とポテサラが女湯に向かって「まなみ〜ん!」とか「アンジ〜!」とか叫んでたら(閉店間際で人がいなかった)、アンジーが「うるさい!」て言ったのが俺はなんかとても楽しくて、事あるごとにそのことを思い出す。というのも、男女で分けられている空間がなんか切なさというかなんか謎の感情を運んで来ている気がして、あれはちょっとというかかなり感動的な瞬間だった。

 毎日、リーバイスの白く掠れたジーンズと400円のシャツを召し、破れたスーパースターを履いている俺は、いつまでもティーンでいたいのにいられない。滝口さんの『アイオワ日記』は本当に素晴らしい。本当に素晴らしい。ぺっちゃんがバグパイプの音に合わせて踊る動画を見ては笑う。何回見ても笑う。というか、バグバイプの音は馬鹿だ。好きな馬鹿だ。

 家の前に大きな道路がある。二十四時間三百六十五日、車がビュンビュン通る。うるさい。でももううるさくない。毎晩パトロールカーが家の前に停まる。青いパトランプが暗い部屋の中にガシガシ入ってきて、部屋中が青く染まる。俺はいつまでこういうものに愛着を持っていられるだろうか。こういうものに愛着を持ってしまうから苦しくなるんだろうラジオネームファイヤーダンス失敗。


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