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「彗星書架」連作設定メモ

 BL連作句会のネットプリント作品集「彗星書架」も早いもので第4号ということで、ここらで自句自解という名の設定メモを残しておこうと思います。飽くまで「わたしが書きたかった設定」でしかないので、「へ~」って感じで流してもらって大丈夫です。ご興味がある方はお付き合いくださいませ。
 ※攻受の表記があります。お口に合わなければ読み飛ばしてもらって大丈夫ですし、連作をすでにお読みくださったあなたにはわたしから特大の花丸と1億点を差し上げます。読んでいただきありがとうございました。いっぱい妄想してくださいね。楽しんでもらえたらうれしいです。


『レッスン』

テーマ:先生
攻×受:高校生(作中視点)×ピアノの先生
作業BGM:Kie Katagi「Bloomoon」

 子どもの頃から習っていた先生にずっと片思いしている子の話。なにより先生の演奏が大好きで、発表会の講師演奏をかぶりつき(最前列)で聴いているような。高校生くらいになって前で見るのをやめて(後ろの人が見えないと思って)、最後列で見るようになるんですけど、終わったあと先生に「探したよ」って笑われる、みたいな。そんなふたりです。なにがどうってわけじゃないけど、多分、いつか手の届くところにたどり着けるんじゃないかなって思っています。時間が掛かっても、一緒になれるふたりをイメージして作りました。感情のテーマは「憧憬」。
 作業用BGMの「Bloomoon」なんですが、この曲自体が連弾なんですよね。軽やかに春を感じられる曲だな、と思いずっと聴いていました。

『再会』

テーマ:おさななじみ
攻×受:地元に残ったほう(作中視点)×地元から出てったほう
作業用BGM:Ayase「飽和」

 曲を聴いたら一発でバレるんですが、くっついていないふたりです。ずっと一緒だったし、これからも一緒なんだろうと思っていてもそうはいかなくて。決して心が離れたわけではなく、お互いに「自分以外の誰か」の存在に気づいている、という話にしたかったんですけど、句数も足りないわ表現も間に合わないわで、あの連作になりました。これはこれでいいか、と思っています。ハッピーエンドに見えるならそれでいい。そういう世界があっていいし、あってくれ。わたしが描けなかった最高のエンディングとしてみなさんの心の中でしあわせにしてあげてください!(他力本願)
 句を単調に作ったのは、作中視点の彼が真面目でふざけたところがないところを表現したかったからです。「夏痩せ」の句で大胆な行動を取るところとギャップになっていたらいいな、と思ってます。
 感情のテーマは「飽和」です。曲のタイトルまんまですが。

『同期』

テーマ:サラリーマン
攻×受:運転席の営業職(作中視点)×指輪跡の内勤
作業用BGM:須田景凪「パレイドリア」

 サラリーマン、めちゃくちゃ苦労した記憶しかないのですが(ろくに働いていないとこうなる……)設定としては、バリバリ営業職と内勤って感じです。「指輪跡」の句で「死別or離婚」という波紋がささやかながらに広がったのですが、わたしの設定では死別です。亡くなった人に勝てるわけなくない? というところまでまるっと、です。指輪跡の彼としては「勝ち負けじゃないでしょ」って感じだと思いますが、そこを無暗に踏み込まないところが好きなんだと思います。いいやつなんで、営業職の彼は(いいやつ)
 とは言え、さすがに句にする技術がなさすぎて情けなさ過ぎたので、この連作のあと「もうどんだけアホやと思われてもいいからバカップルを書こう」って決めました(なんの話や)
 感情のテーマは「受容」くらいですかね。ポジティブなほうで。

『連れ合う』

テーマ:初デート
攻×受:バイト先の後輩×先輩
作業用BGM:清水翔太「花束のかわりにメロディーを」

 というわけで、アホの子をふたり揃えました。重複に次ぐ重複表現。同じ言葉がバンバン出てくるし、シーンが連続しているんですが、視点が交互になっているのでやむなし。句会の選評で「びっくりドンキーみたいなファミレス」という話が出て「なんでバレたん……?」と思いました。ファミレスのふたりです。キッチンとホールなので、普段名前を呼ぶこともなく、まあ、後輩のほうは「先輩」呼びなんですよ。で、名前を呼ばせる、というド定番をやってます。五分前行動の先輩がちょっと面倒くさいことを言う、みたいなところも書きたかったので全部書きました(今更だけど10句って多いね!)
 江ノ島水族館の名前が挙がったので、江ノ島にしようかなと思ったんですが、リニューアル目前なのでやっぱり須磨水族館にしておきます。いや、どこでもいいんですよ、海が見えるイルカショーのある水族館だったらどこでも。ジンベエザメはどっちでもいいです(あかんやろ)
 自句自解なので恥ずかしげもなく言いますが、この連作は「神戸の街中ですれ違ったふたり連れが、これから須磨水族館に初デートに行く人たちだったら」という発想をきっかけに作りました。もしかしたら、わたしの知らないところで本当にそんな初デートをしている人がいるかもしれない。目に見えるものも大事だけれど、それがすべてではないので。わたしには願うことしかできないけれど、「誰かのしあわせ」のひとつの形としてBL連作俳句を作っています。不格好で、あんまり上手じゃないけど。まあ、いいです、それは。そういうものがあってもいいんで。わたしにとってBL俳句は、とても切実で、誠実な、祈りに似たものなのかもしれません。

 と言うわけで、自句自解でした。こうやって振り返ると、「設定とは」という感じですが、句会の選評でずばり言い当てられていることもあれば(あれほんとエスパーかと思う)、思いがけない世界が広がっていることもあり(マジで天才かと思う)、読む人によっていろんな楽しみ方ができることこそ俳句の醍醐味。「なんで小説で書かないの?」と言われたら、余白を自分で埋めるのがめんどうくs(やめなさい)、野暮だなって思うので。このnoteも野暮の極みなんですが、第4号まで出た記念ってことでお許しくださいな。

 こんなところまでお付き合いいただきありがとうございました。そのやさしさに感謝しつつ、今日はこの辺で。

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