消防士は料理が得意 ~結婚相手におススメ~
消防士も人事異動は避けて通れない。
消防士に拝命され4年が過ぎた春、
初めての人事異動を経験した。
異動先はS分署。
こじんまりした分署だ。
周囲はりんご畑、人通りが少ない寂しいところだ。
正直、なんでこんな場所に消防分署を作ったのかよく分からない。
勤務して1週間。
「やることがない」
4人で当直勤務するのだが、事務処理は10分もあれば終わる。
訓練でもしようかと外に出てみるが、すぐに終わってしまう。
消防関連の本を読んでみるが、集中力が続かない。
午後になると分署の前に「移動販売車」がやってくる。
肉や魚、野菜などの食材を届けてくれるありがたい存在。
自炊するには必要不可欠なのだ。
S分署で習得した一番のスキルは「料理」である。
消防署に勤務して料理を覚えたというのも変な話だが、
若手はみんな通る道なのだ。
まずは米を研ぎ、野菜を切る。
言うのは簡単だがやってみると奥が深い。 キャベツの千切りは、経験の差が圧倒的にでる。
見本で切って見せてもらった、先輩の千切りは細くて美しい。
単純に「スゴイ」と感動した。
あるとき、四角い石を渡され、何に使うか分からず石を見つめていると
「早く、包丁とげよ」
と先輩。(人生初の包丁研ぎを教えてもらった)
切れ味のわるい包丁だとケガしやすいし、食感も悪いらしい。
やはり消防士は「職人」だ。
カレーや豚汁、煮物、揚げ物などいろいろ作った。
時間だけはたっぷりある。
「暇は人間を成長させる」
究極の消防伝統料理は
「しょうゆラーメン」
である。
鶏ガラ、昆布、煮干し、香味野菜でじっくりスープをとる。
チャーシューと煮卵も手作りだ。
消防士になって感動したもののひとつだ。とにかく美味い。
そんな修行生活が2年目を迎えた23歳のとき
「結婚」した。
平成4年の暮れには長女が生まれた。
近所の子や親せきの子には興味がなく、そもそも可愛いという
感情が湧かなかった私はとても不安だった。
「自分の子が生まれて、愛せるものだろうか…」
妻は長い入院生活を経ての出産であった。
生まれた子は黄疸が出て、しばらく保育器に入った。
「すぐに退院できますよ」と看護師に言われたが心配でしょうがなかった。いつの間にか自分の子には、何とも言えない愛情を感じていた。
妻と娘との生活が始まると、すくすく育つ娘に自然に愛情は深まっていき、
家族と過ごす時間が、かけがいのないものになっていた。
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振り返るとこの時期には、料理の楽しみを覚え、家庭を持つ喜びを強く実感していたと思います。
家族ができることは、大きな責任が始まることだと思います。
「人生は縁や運で、出会う人や選ぶ道が決められている」
と言った人がいます。
私はそう思いません。
「人生は、自分が判断したことの積み重ねです」
つまり自分自身が決めているのだと思います。
♯思い出 ♯料理のスキルが上がる ♯家庭を持つ ♯責任
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