システム開発紛争

【スルガ銀行VS日本IBM事件(すべてIBM敗訴)】
・金融機関向けサービスの開発。IBMは30年以上刷るがのシステム管理等を行っていた。
・予算95億円程度(要件定義→設計→実装(プログラミング)→テスト→システム稼働)
・基本合意後2年半で揉めた(設計〜プログラミングあたり) ∵スルガが求める機能と、IBM側パッケージ機能のgapが明らかに。
・スルガ→IBM 約115億円の損害賠償請求
 主位請求:プロジェクトマネジメント義務違反を理由とする不法行為 ∵大半の個別契約が未締結
 予備的主張:①PM義務違反を理由とする債務不履行、②Corebank採用に関する義務違反を理由とする債務不履行、③事前検証等の義務違反を理由とする不法行為、④説明義務違反を理由とする不法行為
・IBM→スルガ 125億円の反訴 契約に基づく代金支払い請求(15億)、スルガの協力義務違反を理由とする不法行為(110億)
・1審(H24.3.29)IBM敗訴(74億支払い) ∵設計、要件定義、開発中止に至るまで全体にわたって支払った費用を損害として認定。
・2審(H25.9.26)IBM敗訴(42億支払い) ∵最終合意後のみIBMに責任発生。
 ・契約締結時点において、ベンダに、ベンダが提案するシステムの機能、ユーザーのニーズに対する充足度、システムの開発手法、リスクについてユーザーに説明する義務がある、とした。
 (契約締結に向けた交渉過程における信義則に基づく不法行為法上の義務)
 ・他方、受注が確定していない段階における事前検証等には限界もあり、企画・提案段階においてはユーザーにもシステム開発について自らリスク分析することが求められる、とした。
・開発プロジェクトで27回のステアリング・コミッティが開催された。議事録の内容に依拠して事実認定している。

【旭川医大病院 VS NTT東日本事件】
・旭川→NTT 引渡がなかったとして債務不履行に基づく損害賠償19.3億請求
・NTT→旭川 旭川の協力義務違反により完成ができなかったとし債務不履行に基づく損害賠償22.7億請求
・開発1,2はパッケージソフトの標準機能をカスタマイズせずにそのまま導入。3はカスタマイズが予定されていた。
・旭川は入札時の仕様と異なる大量のカスタマイズを要求。625件のカスタマイズを受け入れることで、仕様凍結合意に至ったが、その後も変更要求、171件の要求、136件を受け入れ。
 →旭川の協力義務違反を認定。
・NTTは医療業務に従事しておらず、単独でマスタを作ることは不可能であり、旭川の責任でこれを作成して継続的な設定変更、確認等を行うことが必要であった。

・1審(H28.3.29)NTT敗訴(開発頓挫の責任は8割NTT)
・2審(H29.8.31)旭川勝訴(旭川の請求棄却、NTT14億容認)
 ∵プログラム開発頓挫は、NTTのプロジェクトマネジメント義務違反によるのではなく、旭川の協力義務違反が原因
 ・PM義務として、NTTには納期を守るために追加開発要望をしないように説得したり、毅然と拒否したりする義務はないと判示。
 ・地裁はシステム開発の遅れに関してNTTが謝罪したことを重視したが、高裁は、結合テストの結果、完成証明資料などの客観的な証拠に基づいてシステムの完成度について事実認定した。

【野村H,野村h証券 VS IBM】
・野村→IBM 劣悪な成果物の納入し、17の個別契約を履行不能にしたとし、債務不履行・不法行為に基づき36億請求
・IBM→野村 未払い報酬5.5億請求
・1審(H31.3.20)(IBMに16億支払い)
 ・17の個別契約のうち「内部連結テスト」「総合テスト」など3件の個別契約に限りIBMの債務不履行を認容。システム全体の完成義務もないとされた。
 ・各個別契約の責任限定条項、直接原因となったサービスの料金相当額を限度とする内容も有効。
・2審(R3.4.21)(IBM勝訴)
 ・野村がIBMの工数削減提案に応じず、野村側からの変更要求も多発し設計逸変更を伴う手戻りが増えた、と認定。

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