エルメスを売り捌き、良寛の書を買う
夫が亡くなり、断捨離を始めた。
よくある話である。
私に子どもはいないので、特別遺さなければいけな財産は必要ない。
以前は、使わなくなったブランド品や洋服は、年若い友人によろしければと譲っていた。そんな私の気前の良さを同級生の友達に、もったいないわね、今は何でも売れるのよと忠告された。
そうして、あまり使った事のない新品同様のエルメスのバッグを買い取ってもらったら、当時買った値段以上になった。
何といっても、バブル時代を経験しているので、そのころエルメスで特注したゴルフバッグも買い取ってもらった。
そうしたら、えっ!と驚くような値段だ。
気を良くした私は、今の歳では絶対に使わない、若いころに身に着けていた時計やジュエリーやブランド品をどんどん売り払ったら、かなり纏まったお金になった。
母にそのことを報告したら、お母さんももういらないお品沢山あるわよ!と乗り気になり、実家にあるものも買い取ってもらった。
そして、そのお金で良寛の書を購入した。
その法華転の書は、何のてらいもなく飄々とゆったりと書かれ、良寛の人間性が如実に紙面に現れている。その書は寝室に掛けているのだが、無邪気な作風の筆致の書を朝晩と眺めていると、気持ちがすうっと落ち着く。
若いころから、骨董が好きだった。勿論、その時々の自分の成熟度に合ったものしか手に入れることしかできないが、今の私は、良寛の書にとても惹かれる。
浅草の1R暮らしの部屋にひっそりと掛かる良寛の書はとても美しい。
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