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この部屋から東京タワーは永遠に見えない

東京タワーが間近に見えるラウンジのパパ活中の2人のちょうど前のソファーでこの本を読み始めた。過去の成功体験、大抵は勉強が周りよりできたとか小さな賞をとったとか、にいつまでもすがっている井の中の蛙達がたくさん出てくる短編集となっている。
たくさんの蛙たちが井戸を飛び出して、東京という名の大海に出てくる。大学名、就職先、年収、住んでる街、家賃、外見のいいパートナー、陽キャの友達、などを軸にしたマウントの取り合い競争で敗れ擦り切れていく様が、作者の「麻布競馬場」の巧みな表現で描かれていて、とても切なく、やるせなくなる。
マウントの取り合い競争には終わりがないし、それに勝ったところで得られるのは一時的な優越感だけだ。それに気づいていながらも僕たちは無意識に自分よりも下の人間を見下して平静を保っているのだろう。「あいつに比べたらマシ」みたいな感じで。

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