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「日本は多重国籍を認めるべきか」2023年度 9/28日CA

みなさんこんにちは。今回のCAでは日本は多重国籍を認めるべきかについて議論しました。以下では議論の概要と流れについて紹介します。

議論の概説

国際社会では、多重国籍を容認する動きが見られており、今や多重国籍を認める国の方が多数派です。出生後に外国籍を取得した場合に国籍の喪失を定める国は2020では22%であり、データの裏付けもあると言えます

多重国籍を容認することには、人材確保の観点から、国際競争力を高めるといったメリットも存在します。これらは、国際競争力の低さが問題視されている日本においても当てはまると言えます。

そこで今回は、日本は多重国籍を認めるべきかについて議論を行いました。

議論の流れ・論点

今回の議論を通して浮かび上がった論点は以下の三つです。
・多重国籍を容認する、特に安全保障の観点から見たリスク
・多重国籍を容認する、特に国際競争力の観点から見たメリット
・多重国籍によって生じる、1つの国籍を有する人と多重国の人との非対称性

多重国籍を容認する、特に安全保障の観点から見たリスク

安全保障や、徴兵制度、死刑制度等、多様な面から多重国籍のリスクについての議論が行われました。以下のような議論が交わされました。

Q近年は安全保障の必要性も高まっている。二重国籍は安易に認めるべきではない。
A日本は徴兵制を採用していないし、実務上の問題は懸念されるほどには発生しない。

Q二重国籍の場合だと、日本政府が他国による徴兵から自国民を保護できないのでは?また、死刑についてはどのように取り扱われるのか。
A法律で対応する必要があると言える。

Q.二重国籍者が自衛官になるのは安全保障の問題があるのでは。
A.自衛隊における国籍要件は求めるべきだと思う。一方で、アメリカでは二重国籍であっても軍隊に入隊できるし、グリーンカードも獲得できる。

多重国籍を容認する、特に国際競争力の観点から見たメリット

先述の通り、日本の国際競争力不足や人材不足は重大な問題であると言えます。特に、立論者(多重国籍に賛成の立場)から、盛んに議論が行われました。優秀な人材が日本に帰りやすくなる・高度な人材が確保できる、といった主張に対してさまざまな議論が交わされました。

Q.国籍離脱のためのコストの高さを立論者は指摘していたが、30万円ほどと、決して高すぎるとは言えない。多重国籍を認める妥当な理由にはなり得ない。
A.コストは、単縦に評価できない。例えば、国民としての権利を失ってしまえば、失われる。それらは非常に大きいリスクとなり得る。それらを回避できるのだから、多重国籍は容認するべきである。

Q.立論者は外国籍を取得した日本人研究者といった優秀な人材が帰国しやすい環境を整えることで人材を確保できると主張したが、そもそも研究のフィールドとして日本は魅力的でないことが根底にあると言える。多重国籍の容認は高度人材にとってのインセンティブにならないのでは。
A研究という次元というよりはむしろ、日本人として生まれた人が日本に帰りたい、という意思を尊重するためのもの。

Q国籍に関する認識は各国によって異なっている。メリットがあるからといって、実務上、法律上多くの問題が生じることは明白であるので、日本的なやり方をすれば良いのでは。
A国際競争力の低下はそれらを考慮しても深刻である。

多重国籍によって生じる1つの国籍を有する人と多重国の人との非対称性

多重国籍を論じる中で、参政権などをめぐって議論が交わされました。
Q多重国籍を考慮すると参政権の問題が生じる。唯一国籍原則は守るべきである。
Aその通りである。参政権に関しては特権として取られることがある。

上記の論点に加えて、永住ビザや帰化でなく、多重国籍を容認するメリットあ存在するのか、といった、実効性に関する議論や、そもそも現状では国籍の選択義務がありながら、実情を把握していないといった議論も盛んに行われました。

上久保教授のコメント

日本人として生まれ、その後他の国籍を取得し多重国籍となることと、外国人の方が日本国籍を取得し多重国籍となることは、全く性質の違う問題であり、異なるものとして理解する必要がある。日本において多重国籍を認めることが、外国人の方の人材確保につながるかどうかは、やや疑問がある。また、特殊なケースではあるものの、外国政府が自国民に日本国籍を取得してほしい、といったケースがあるが、それらはリスクに分類できると言えるだろう。

参考文献

朝日新聞 「複数国籍 認めない」 2023年7月12日 朝刊 p13
テレ朝ニュース 「世界競争力ランキング日本は過去最低35位」2023年6月20日 https://news.tv-asahi.co.jp/news_economy/articles/000303992.html
日本経済新聞 「ドイツ、二重国籍容認にカジ 「複数」取得が世界の潮流に国際競争力低下に危機感」2023年9月1日 https://www.nikkei.com/article/DGKKZO74073120R30C23A8EA1000/
法務省ホームページ 「国籍の選択について」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06.html


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