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「京都市における高さ制限緩和の是非について」2023年度 11/2日CA

みなさんこんにちは。今回のCAでは京都市における高さ制限緩和の是非について議論しました。以下では議論の概要と流れについて紹介します。

議論の概説

京都市では企業誘致や子育て世帯の流入を目的に、新たな都市計画を2023年8月に施行しました。市は2007年より「新景観政策」を導入しており、建物の高さを厳しく制限していました。

新たな都市計画ではJR京都駅の南側で主に大通り沿いの高さ制限を現在の20~25メートルから31メートルに引き上げました。また「らくなん進都」と呼ぶ南部の工業地域では、容積率を400%から最大1000%にしています。これにより商業施設やオフィス、企業のラボなどの誘致につなげる意図があるようです。。

また住宅の供給増加も期待しているようです。市内の子育て世帯の流出先となっていた滋賀県の大津市と隣接する市東部のJR山科駅付近では、大通りに面した要件を満たす土地は高さ制限をなくします。建物の1階部分に店舗を設けるといった条件を満たせば、タワーマンションなども建設可能となります。

そこで今回のCAでは京都市における高さ制限緩和の是非について議論します。

議論の流れ・論点

議論の結果、以下のような論点が浮かび上がりました
・政策の実効性
・現状と政策の整合性
・京都というフィールドの特異性について

政策の実効性

ここでは政策の実行性について議論しました。以下の質疑以外にも、デベロッパーとの足並みが揃っていないという指摘や、誰に向けた政策なのか、といった議論も行われました。

高さ制限を導入することでもたらされるメリットについて議論を行いました。以下のような質疑が繰り広げられました。
Q景観面に影響を与えるのでは。従来の京都のスタンスに逆流することになるのでは。
Aアンケートでは7割が賛成である。現在の財政難といった苦しい状況を打破することが期待できる。
Q近くに大阪があるのに、オフィス誘致を目指す必要性はあるのか。
Aサテライトオフィスを建てたい企業などにはいいのではないか。

現状と政策の整合性

ここでは京都市の現状や抱える問題を今回の政策が解決しうるのか、そしてそれらは合理的なものなのかという議論が行われました。

Q今回の政策によって慢性的になっていたバスの運転手の人材不足等も解決できるとのことであったが、雇用不足は事実として起こっているのか?
A現在のバスの本数では足りているが、そもそもの本数が足りていない。
Q(上の続き)本数は様々な要因を考慮し、最適化している。本当に人手不足は起こっているのか?
Aこれらはインバウンド増加も見越した議論である。なお、議論から離れるのでここまで。
Qそもそも京都の人口密度が高いのに、人を呼び込む必要性は?
A人口密度の高さは、特に観光地の問題である。今回は観光地は含まれないため、問題ない。

京都というフィールドの特異性

ここでは京都というフィールドを踏まえた議論を行いました。上久保教授のコメントにもありますが、京都は独特の権力構造を有しているため、慎重に議論すべきであると結論づけました。

Q学生の多さ、宗教施設(非課税のため税が徴収できない)の多さといった特徴から財政難に陥りやすいということであったが、今回の政策によって得られた税収は市民サービスの向上というよりはむしろ守りの政策に使われてしまうのではないか。
A法人税による税収が増加することが予想されるため、それらを補填すればサービス向上にもつながるのではないか。
Q政治家との癒着を進めることになるのではないか。民間に恩恵がもたらされる政策は利権の問題を生み出してしまう。
A(立論者ではなく参加者からのコメント)デベロッパーといった民間のアクターと足並みが取れていないため、癒着は考えづらいのではないか。

上久保教授からのコメント

以前は完全に高さが制限されていた。これらが変化してきたというダイナミクスがある。ボトルネックはどこをタワマンにするかという問題である。これらを行うにあたって、地元住民、特に地主との関係性は考える必要がある。京都は保守的なカルチャーを持つフィールドであり、そこでの政策は困難があると言える。WW2の間に空爆されなかったというバックグラウンドもあり、議論は慎重に、丁寧に行うべきだ。ただ、高層マンションは必要である。寺社仏閣への景観に問題が出ない程度に行うべきである。総合的な視点を持った政策が必要なのではないか。


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