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「幼稚園における英語教育の是非」2023年度  5/25日CA

みなさんこんにちは。今回のCAでは幼稚園における英語教育の是非について議論しました。以下では議論の概要と流れについて紹介します。



議論の概説

日本人の英語力の低さは問題である。それに伴い、小学校における「英語の教科化」が行われ、より早期の英語学習が求められるようになっています。

そのような中、2018年ベネッセ教育総合研究所にて行われた「第3回幼児教育・保育についての基本調査」では英語教育を活動時間に取り入れている幼稚園が国公立幼稚園で26.1%、私立幼稚園で62.4%であったとされています。

一方で、幼児教育における英語の導入には、「セミリンガル」のように母語が疎かになってしまうといった問題点も指摘されています。

今回のCAでは幼稚園における英語教育の是非について議論を行いました。
なお、今回の英語学習は歌を用いた英語の学習や、絵本など、基本的な英語学習も議論の射程に含めることとします。

議論の流れ・論点

今回の議論では、主に以下の3つの論点が中心となって議論されました。

・セミリンガルの問題

・異文化理解とアイデンティティ形成

・小学生未満の子どもに対する英語教育の有効性

セミリンガルの問題

セミリンガルとは、母語以外の言語の学習や母語以外の言語に触れることの多い環境下において、母語の定着に影響が生じ、複雑な文章を読み解いたり、表現したりすることが困難になるという問題です。ここでは以下のような議論が行われました。

Q歌を用いた英語の学習等、英語に慣れしたむ程度のものでセミリングになるのか。セミリンガルは帰国子女のように、ほとんど母語に触れる機会がないような
A慣れ親しむ程度の英語教育ならば、そもそもする必要がない。それ以上のレベルを求めるのであれば、セミリンガルの危険性が生じるのでは

異文化理解とアイデンティティ形成

ここでは、幼児に対する英語教育と文化の関わりついて議論しました。ここでは以下のような議論が行われました。

Q外国語の学習を行った方が、日本人のアイデンティティを形成できるのではないか。
A母語の教育を基礎として、アイデンティティを形成する必要がある。

Q4ヶ国語公用語が存在するスイスにおいてもアイデンティティ形成に影響は出ていない。英語学習だけでアイデンティティ形成に影響はないのではないか。
A地理的・歴史的要因の違い、単純に比較できないのでは。

小学生未満の子どもに対する英語教育の有効性

また、小学生未満の子どもに対して英語教育を行うことが、現在の日本の英語力を鑑みて重要であるという視点での議論も盛んに行われました。

Q二言語を併用する、使い分ける前提での早期学習が有効なのでは。
A二言語共有説から、母語の基礎を築かないと語学習得に不利である。

Qバイリンガルになるには6.5才がラストチャンス、小学校の教育で十分に英語学習を完成させることはできないのでは、
A当然完成させることはできないし、完成させる必要はない。中高を視野に入れる必要がある。

上久保教授のコメント

現代日本における英語教育は、いわゆる「受験英語」を教えるものであるが、それらの有効性について目を向ける必要がある。受験英語は、「大学での研究」を視野を入れたものであり、さらに突き詰めれば「論文を読むための英語学習」である。それらの本質を理解せずに、日本の英語教育の批判をすべきではない。受験英語は世界で通用する。
英会話に関しては、環境を変えれば三ヶ月である程度完成させることができる。それらを鑑みると、下手な変革は改悪である。現在の幼児に対する英語教育は主に小学校受験のためのものが多い。仮に受験英語を変革するのであれば、ある程度の理解をした後に理論の構築を図る順番を取るべき。つまりは、文法をはじめに教えるプロセスを変えるべきである。
さらに、異文化理解や愛国心といった議論にてしばしば登場する「アイデンティティ」という言葉わ極めて曖昧で不確かな概念である。論理的思考の阻害要因にはならず、それらに固執する必要はない。





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