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大災厄があっても、受け継がれてきた仕事は粛々と進むのだ【KOZUKA 513 shop paper vol12 2020/05】

新型コロナの大流行に、この頃かなり切なくなっていたのだ。カフェやゲストハウスの客が目に見えて減ってきて、前の年の台風被害といい、新型コロナといい、「どうしてこうもうまくいかないんだ」と、世を恨んでもいた。

でも、近隣の米作りの仕事はいつものように粛々と進んでいく。そのことに元気づけられた、これこそが、連綿と続いてきた日本の暮らしであって、この先も失われてはいけないもの、そんな風に思ったのだ。

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今年も田に早苗が植えられた
 
去年の稲刈りを終えて静かに休んでいた田は
起され 人手であるいは機械できれいに畔を塗られ 水が張られ
代かきを終えた後には細々と頼りなく見える苗が一面に植えられた
(心配になって苗を多めに植えると「厚い!病気になる!」と怒られる)
 
稲が育って青々とした田や 金色に実った稲穂が垂れる田も
それは美しいけれど
苗を植えられたばかりの水を満々とたたえた田が青空を映す景色
一番美しいと密かに思う
 
あれほど台風で被害を受けたのに
思いもかけなかった大災厄に見舞われているのに
今年も田には苗が植えられ
やがてはたくさんのたくさんの米が実るのだろう
その営み それを支える人々の力のすごさを
今年ほど感じることはない
 
大災厄が終息した後 これまでとは違った世の中になると人々は言う
でも
先人の知恵や努力で繰り返されてきた営みは
そう簡単には変わらないのだと思う
本当かどうかわからない情報に日々翻弄されてしまっているけれど
これまでと変わらない田の風景の確かな美しさは
自分を安心させてくれる
 
何を大切に生きるのか
大震災や台風被災のときのように 自分たちはまたも問いかけられている
本当に大切なものを見誤らないように答えを探さなければ・・・
今朝家の前で偶然見つけた四つ葉のクローバーを手に考えてみる
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