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エンデは言った「つぎの一歩」「つぎの一呼吸」のことだけを考えろと【KOZUKA 513 shop paper vol13 2020/06】

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草刈りの季節が来た
5月の下旬に刈ったはずの駐車スペースの横の草地は
雨の日晴れの日 また雨の日また晴れの日
繰り返しの中で力強く生い茂っている
作業ズボンと長靴を着け 首にはタオル 頭には麦わら帽子
刈り払い機を回す
たいした広さではないとはいえ 10分20分で終わる面積でもない
刈り始めるととたんに汗が流れ いつ終わるのかと気が遠くなる
 
エンデは 清掃夫ベッポにこう語らせる
「なあ、モモ、とっても長い道路をうけもつことがあるんだ。
おっそろしく長くて、これじゃとてもやりきれない、こう思ってしまう。」
「そこでせかせかと働きだす。どんどんスピードをあげてゆく。
ときどき目をあげて見るんだが、いつ見ても
のこりの道路はちっともへっていない。
だからもっとすごいいきおいで働きまくる。心配でたまらないんだ。
そしてしまいには息がきれて、動けなくなってしまう。
道路はまだのこっているのにな。
こういうやり方は、いかんのだ。」
「いちどに道路ぜんぶのことを考えてはいかん、わかるかな?
つぎの一歩のことだけ、つぎのひと呼吸のことだけ、
つぎのひと掃きのことだけを考えるんだ。
いつもただつぎのことだけをな。」(部分引用『Momo』Michael Ende)

物語は 時間の節約・効率化だけが正しいとされる社会に警鐘を鳴らす
都会での日々の時間に追われた生活の中で 何度も物語を読み返した
「つぎの一歩」「つぎのひと呼吸」
いつもただつぎのことだけを考えることを忘れ
時間を無駄にしていないか
もっと効率よく時間を使えないかと焦る自分がいた
 
5月に植えられた稲はたくましく育ち
梅の実は実り 柿は小さな実をつけている
人の時間軸とは別の 自然の大きな時間軸に癒される
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あるとき、突然のように「PDCA]という仕事のサイクルが上から降ってきた。「Plan(計画)・Do(実施)・See(評価)・Act(改善)」
なのだそうだ。(他にも「PDSA」なんてものがあるらしい)そんなこと、いまさら言われるまでもなく、どんな仕事の現場でもやってきたのだ。ゆるやかに、時には厳密に。とりあえずは前例による経験則だったり、職人技のような勘に裏打ちされたゆるぎない流れだったり。

それが、こんな風に言語化・概念化・記号化された頃から、なんだか仕事の現場は急に息苦しくなったような気がする。計画も、実施も、評価も、改善も、そのすべてを明らかにすること。文章化し「見える化」し、いつもいつも、全体を見渡すことを求められる。
「とりあえず目の前の一歩、そして次の一歩」が許されない世界。計画を形に表し、実施を形に表し、評価も改善も形に表す。それはいつのまにか、計画のための計画や評価のための評価を産んでいったように、自分には思える。自分は、それが息苦しくてしかたなかった。

田畑の仕事に救われるのは、その計画や実施や評価や改善が、ヒトの都合ではないこと。季節、時期、温度や湿度、風向き、天気の行方・・・自然の摂理の中に、いつも計画も実施も評価も改善もある。
そんな世界に自分は来たかったんだな、と、今は納得している。



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6月3日 KOZUKA 513 café & guest houseは1周年を迎えました
カフェをスタートし ゲストハウス(農家民宿)を加えて本格オープン
たくさんのお客様にご来店いただき 軌道に乗ったかと思えた矢先の台風
なんとか営業を再開
ありがたいご縁で雑誌や各種メディアに取り上げていただき
ようやくより多くの皆様に楽しんでいただけるようになれたかな
と思ったところに新型コロナウイルス・・・
まるでジェットコースターに乗っているような1年でした
この1年お世話になった感謝を形にしたかったのですが
時節柄もう少し先に感謝の気持ちをお届けする
イベントができたらいいなと思っております
今はただただ
KOZUKA 513に関わってくださった皆様に感謝の気持ちでいっぱいです!
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どこかで、「周年」は大切、何かしらの足跡を残したい、と思っていた。これほどの肩透かしはないな・・・と思った。来年は5周年。今度こそ、と思うけれど、天変地異には勝てないぞ、というのが開業以来の教訓になっている。

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