【ラブライブ!服飾史シリーズ】Liella!×上野マルイコラボイラストから どうして全員デニムなの? 上野とジーパンの歴史

全員デニムの描きおろし

 このほど、5月31~6月9日まで開かれるLiella!と上野マルイのコラボイベントのビジュアルが公開されました。
 上野といえば?で真っ先に思い浮かぶパンダの被り物をしたメンバーが可愛い描きおろし。ただ、このイラストではもう一つ、全員が共通して身に着けているものがあります。デニムを使ったアイテムです。
 「まぁ、デニム流行ってるしね~」で済ませたいところですが、場所が上野ということで、ここからは明確な意図を読みとることができます。
 上野動物園、上野公園、各博物館・美術館に次ぐ上野の観光名所、アメヤ横丁を訪れたことがある人はピンと来ているかもしれません。上野はアメカジ(アメリカンカジュアル)ショップが所狭しと並ぶジーパンの聖地なのです。
 というだけで、もう何故全員デニムを身に着けているのかという疑問は解決するわけですが、せっかくなのでこのシリーズらしく上野とジーンズの歴史について皆さんに解説していきましょう。
 また、この歴史を紐解くとLiella!のホーム、原宿へとつながるストーリーも見えてくるんです。

 

日本人はアメ横でジーンズと出会った


 さて、物語は戦後の上野アメ横から始まります。
 このアメ横、アメヤ横丁の発祥は闇市。特にサツマイモやら何やらを使って作った飴を売る店が多かったことから、飴屋横丁と言われたことに端を発します。そうは言っても闇市ですから、米兵が売った物品やら、米軍将校の奥方から流れてきた化粧品やら、まぁ色んなものが売買される混沌とした市場でした。
 そうしたものの一つに、インディゴで染められた丈夫なコットン製の見たことがないパンツがありました。これが日本人とジーパンとの出会いです。出所はやはり米兵の払い下げ。休日に履いてたジーパンを売っぱらったりしたものでした。
 このジーパンという名称、実は日本生まれです。当時米兵はGI(ジーアイ)と呼ばれていたので、ジーアイ・パンツということでジーパンと言うようになったとされています。
 50年代に入ると朝鮮戦争が勃発し、アメ横に流れ込んでくるジーパンの数はどんどん増えていきます。当時の日本人にとってアメリカは豊かで強い戦勝国。憧れの存在だったわけですから、米兵が穿いているジーパンは若者にとっては、そりゃカッコ良く見える。徐々にジーンズが流行し始め、ニーズは日に日に高まっていきます。ジーンズを売る小売店も増え、それぞれ様々なルートで中古のジーンズを仕入れ、飛ぶように売れました。
 50年代後半に入ると輸入規制が緩和され、新品のジーンズをアメリカから輸入して販売することも増えてきました。ジーンズに限らず様々な服がアメリカから入ってきて、アメ横は今でいうインポートファッションの最先端の地へと変貌します。
 50年代に放出品を販売していた三浦商店が70年に「ミウラ」と店名を改め「リー」や「コンバース」を輸入販売し始めたのも、ここアメ横。日本初のセレクトショップと呼ばれる同店は、みなさんご存じ「シップス」の前身です。


 

ジーンズの中心地は原宿へ

 70年代中頃になるとアメリカで直接取材し、現地で売っている商品をカタログ的に紹介する雑誌「メイド・イン・USAカタログ」が若者の間で広く読まれ、まだ見ぬアメリカ製品への憧れが増していきました。
 東京でそれらが手に入るのは上野のアメ横。ただ、今のセレクトショップのような店は少なく、とにかく混沌とした市場を歩き回って小さな商店から欲しい物を血眼で探す必要がありました。
 76年、それを変えたのがこれもまた皆さんご存じの「ビームス」です。1号店は若者の街、原宿。決して大型のお店ではありませんでしたが、アメリカへ行って直接買い付けたジーンズ、シャツ、スウェット、ワークパンツ、ブーツが所狭しと並んだ夢のような空間でした。
 とはいえ、若者には少し高い‥‥‥
 「サンタモニカ」「バナナボート」といった今も全国に名をはせる古着屋が原宿に相次いでオープンし、やはりアメリカで買い付けた古着を新品よりも安価に販売し始めます。
 そして80年代後半には原宿で古着ブームが爆発。90年代にかけてヴィンテージブームへと発展し、超高額古着が飛ぶように売れる時代を迎えました。
 その主役もやはりジーンズ。
 上野に続いて原宿もジーンズの聖地となったのです。

上野と原宿をつなぐジーンズ

 初の日本製ジーンズが生まれたのが60年代。70年代には生地まで純国産のジーンズが誕生しました。90年代に入ると高騰するビンテージジーンズを忠実に再現する「レプリカ」文化が日本の岡山の工場で発展します。
 そして今日、上野アメ横は世界に名高いそのジャパンデニムを買い求めるインバウンド客でごった返しています。
 原宿も久方ぶりの古着ブームで賑わい、再びビンテージショップが息を吹き返しています。街にはジーンズを穿いた若者が大勢歩いている。
 上野と原宿。あまり関連性のなさそうな二つの街はジーンズという共通項でつながっているわけです。
 と思いながら、今回のイラストを見るのも中々面白いと思いませんか?
 上野マルイに行ったついでにアメ横でジーンズを一本、なんていうのはいかがでしょうか。

 


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