[論文]COVID-19と社会科学領域 4本


書誌情報

①西川開. (2023). 自然科学と人文学・社会科学の間の引用に着目した引用文脈分析:再生可能エネルギー(SDG7)と気候変動(SDG13)を事例として. NISTEP DISCUSSION PAPER, No.220. 文部科学省科学技術・学術政策研究所. DOI:

②Liu, Y. L., Yuan, W. J., & Zhu, S. H. (2022). The state of social science research on COVID-19. Scientometrics, 127, 369–383. https://doi.org/10.1007/s11192-021-04206-4

③l  Lin, J. K., Chien, T. W., & Chou, W. (2023). Comment on the article: The state of social science research on COVID‑19. Scientometrics, 128, 1429–1436. https://doi.org/10.1007/s11192-022-04600-6


④Liu, Y. L., Yuan, W. J., & Zhu, S. H. (2023). Response to Dr. Chou’s comment on “the state of social science research on COVID-19”. Scientometrics, 128, 1437–1439.


①自然科学と人文学・社会科学の間の引用に着目した引用文脈分析:再生可能エネルギー(SDG7)

著者

筑波大学の助教授で図書館学をやられているみたいです。計量書誌だけでなく、その名の通りの図書館学をやられているみたいです。

要約

再生可能エネルギー(SDG7)と気候変動(SDG13)を対象として、自然科学(NS)と社会科学(SSH)の引用パターンを分析したところ、NS がSSH を方法論セクションで有意に多く引用する傾向が見られ、NSはNSをリザルトやディスカッションで有意に少なく引用する傾向が見られた。この結果は、SSH が NS に方法論面で貢献していることを示していことを示唆していると考えられる。

ポイント

・引用を以下のカテゴリに分けて分析している。ここが最大の特徴
  -分野(NS-SSH):web of scienceのエリア区分
  -セクション(イントロ・メソッドなど)ごと、文脈ごと
  -言及スタイル
  -極性

・セクション
-SDG7
①Introduction NS-NS が有意に多い、SSH-NS は有意に少ない。
②Methodoloy:NS-NS が有意に少ない、NS-SSHは有意に多い。
③Results and/or Discussion:NS-NS が有意に多く、

NS-SSHが有意に少
ない。


-SDG13
①Methodology:NS-SSHが有意に多い傾向
Results / Discussion:NS-NS が有意に多く、NS-SSH が有意に少ない

・言及スタイル
-SDG7 :各パターンに有意な差なし。他方で、
-SDG13 については、他のパターンと比べて SSH-NS は Not specifically mentioning(個別的ではない言及)としての言及が有意に少なくSpecifically mentioning としての言及が有意に多い

・極性:
-SDG7 では、
①NS-NS は Negativeな引用が有意に少なく、Positiveな引用が有意に多い。②SSH-SSH はNegative な引用が有意に多い
③SSH-NS は Neutral(中立的)な引用が有意に多く、Positive な引用が有意に少ない傾向にある
-SDG13:各パターンに有意な差なし。他方で

・SDG7 について、最も典型的なのはエネルギー分野(NS)が経済学分野(SSH)を引用している組み合わせであった。

・引用文脈分析(citation context analysis)は、引用内容分析(citation content analysis)と区別されるらしい

疑問

・途中途中で指標を統合しているが、これは多重検定の問題がないのか心配

・手動での分類には無理がありそう。

・学際的なトピックとしてSDGsを選択するのは賢い

関連文献

・同じ著者の以下の論文は今後読みたい

・分類の仕方は以下を参考にしているらしい

Zhang, G., Ding, Y., & Milojević, S. (2013). Citation content analysis (CCA): A framework for syntactic and semantic analysis of citation content. Journal of the American Society for Information Science and Technology.

https://doi.org/10.1002/asi.22850

Lin, C. S. (2018). An analysis of citation functions in the humanities and social sciences research from the perspective of problematic citation analysis assumptions. Scientometrics, 116(2), 797–813.

https://doi.org/10.1007/s11192-018-2783-z


②The state of social science research on COVID-19

要約


Web of ScienceのSSCIからデータを取得して、共起語ネットワーク・共著ネットワーク・を作成した。分野ではメンタルヘルスや心理学が、国ではアメリカが、大学ではハーバードがネットワークの中心となっていた。

ポイント


・可視化はVOSviewerを使ったらしい
・共起語ネットワークは、ソーシャルメディア系・リスク認知系・メンタルヘルス系のクラスターができてた

疑問


・共起ネットワークは、論文数が多いジャーナルの単語が上位に来やすいけど統制しなくていいのか。例えば年平均投稿数の逆数を重みにしてバランスとるとか。でも、投稿されている→勢いのある分野って見方もできるきもする

・なんでco-authoreネットワークしかない?引用ネットワークも書いてほしい

関連文献

③がこの文献に対する反論、④が再反論になっています。


③Comment on the article: The state of social science research on COVID‑19
④Response to Dr. Chou’s comment on “the state of social science research on COVID-19”


要約


③が②の問題点として(1)フレームワークの欠如(2)AWS(著者重みづけ)の不使用(3)ネットワーク間の基準のぶれを指摘したが、④で(1)は特に問題がなく、(2)は現在論争的なので使うことが正義とは限らず、(3)はそもそも独立に示しているのだから当たり前だという回答をした。

ポイント


・(1)と(3)は③の文句のつけ方がよくわからないが、(2)は分からなくもなくAWSの付け方を解説して、その結果の図の違いも示されている。

・↑に対して、④はFirstとLast authorの力関係はジャーナルによって違うこと、またもしAWSを採用してもそんなに結果が変わらないことを図で示し返した。

疑問

・セレクションバイアスなどを指摘した方がいい気がした
・喧嘩?

関連文献

Li, J., Goerlandt, F., & Reniers, G. (2021). An overview of scientometric mapping for the safety science community: Methods, tools, and framework. Safety Science, 134, 105093.

https://doi.org/10.1016/j.ssci.2020.105093


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