ドッキリチャンネルneo.ver2『MUSIC BLOOD』

さて、前回からすっかり季節が変わってしまいました。
自分でも筆の遅さにびっくりしていますが、不定期更新の本コラム第2回は先日最終回を迎えた『MUSIC  BLOOD』を取り上げます。

『MUSIC BLOOD』は、2021年4月~2022年9月まで1年半放送していた音楽番組です。MCは、俳優の田中圭と千葉雄大。放送時間30分で、毎週1組のアーティストをゲストに招いて、彼らの音楽的ルーツつまり「血となった音楽」を掘り下げていくといった内容でした。

『ミュージックステーション』『CDTV ライブ!ライブ!』といった生放送、パフォーマンスに重きをおいた番組がメジャーになっている音楽番組シーンにおいて、アーティスト自身にスポットを当てる番組としては『SONGS』以来だったのではないでしょうか。

もちろん『Love music』『バズリズム02』といったパフォーマンスとアーティストを交えたトークを両立させた音楽番組は他にも存在はしています。しかしこれらの番組と『MUSIC BLOOD』の大きな違いは、放送時間(尺)にあります。
『Love music』は55分、『バズリズム02』は60分と約1時間の編成になっています。これに対し『MUSIC BLOOD』の放送時間は30分でした。『SONGS』は45分と両者の中間の放送尺ですが、CMがないため他の番組よりも体感としては放送時間が長く感じます。

近年の情報過多の世界で生きる我々は、効率よくできるだけ多くの情報を処理しようとします。コンテンツの倍速視聴やTik Tokなど、一つあたりの所要時間が短いSNSコンテンツが流行していることがそのことを示しています。こうした流れの中で、30分という放送尺でパフォーマンスとトークを両立させたことは時代に即した番組構成だったといえます。

さらに印象に残っているのは、ヒップホップ系のアーティストも数多く出演していたということです。Creepy Nuts、KREVAはもちろん、Awich、KEN THE 390などヒップホップシーンを牽引するアーティストが出演しました。

ここ何年かでヒップホップカルチャーが日本でも流行り始めたとはいえ、そうしたアーティストのテレビの音楽番組への出演は限定的で、J-POPやロックのミュージシャンに比べて明らかに少数だったように思います。

こうしたヒップホップシーンへの注目という意味では、『MUSIC BLOOD』の番組として果たした意義は大きかったといえるでしょう。

ではどうしてわずか1年半で終了してしまったのでしょうか。
私が考える理由は2つあります。

1つは、出演アーティストの偏りです。
番組初期の頃は様々な音楽ジャンルのアーティストが出演しており、前述の通りそれが番組としての大きな強みでした。しかし番組後半には、本編、番組内コーナーでAAAのSKY-HI率いるBMSGのアーティストの出演が目立つようになります。それ自体は悪いことではないのですが、番組としての強みを失い、新規視聴者層を取り込む機会を減らしてしまったことは番組終了の一つの要因になったのではないでしょうか。

2つ目は、配信コンテンツです。
『MUSIC BLOOD』では、開始当初スポンサー1社提供だったということもあり、アーティストライブのワンカット映像や未公開トークなどのコンテンツをsmashというアプリで配信しました。しかしsmashが一般的に広まっていない状況では、それだけのためにsmashをダウンロードして設定する必要があります。このハードルを超えさせるためには、相当魅力的なコンテンツを用意する必要があったと思います。むしろYouTubeやインスタグラムなどすでに十分に市民権を得ているプラットフォームを使用してコンテンツを配信したほうが、番組のプロモーションにもつながったのではないでしょうか。
さらに番組の後期では、番組内コーナーが登場したためゲストトークの部分が短くなり、未公開トークの占める割合が多くなりました。こうした配信コンテンツの存在感が高まったにも関わらず、依然としてsmashで配信という不便間の残る仕様にしてしまったことも、視聴者が離れた一つの要因だと考えます。

いずれにしろ、番組としてのポテンシャルを感じていた分、1年半で終了してしまったことは非常に残念に思います。どんな形でもまた復活してくれることを楽しみにしています。

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