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レインマン

『レインマン(Rain man )』(1988)

利己的な青年と重度のサヴァン症候群の兄の出会いと、兄弟愛の変化を描いた映画。考えさせられる一作である。



トム・クルーズの演じるチャーリーは、ディーラーを営むが、排ガス規制のために経営が苦しくなる。その折、父親が逝去。

遺産目的で故郷に帰ると、ほぼすべての遺産が、重度のサヴァン症候群の兄の信託財産として運用されていることを知る。ここで初めて自分に兄がいることを知る。

遺産を取り戻すために、兄を施設から強制的に連れ出す。

旅の中で、兄の障害による症状に苦しみながらも、兄弟としての愛情が芽生えていく。


映画であるため、障害の描き方が、かなりモデル化されており、人による細かな差異を捨象していることは承知の上で。

人に興味を示さず、限られたモノに執着を示すことが、同じテレビ番組を毎日見たり、与えられた電話帳を隅々まで覚えたりすることから、見て取れる。
限局された興味だけではなく、極めてルーティン化された考え方も象徴的に描かれていた。

曜日ごとに決まった食事をとり、パンケーキが出てくる前にメープルシロップを用意することなどに見られる。

極めて象徴的に使っているなと思ったのが、Definitely という単語である。

絶対的である。彼の中で、決まった、絶対的な何かがある。その枠の中でないと、パニックになってしまう。逆を言えば、自分の中でルーティンがあり、その中であれば、効率的に成果を出すことができる。

加えて、記憶力や計算力、それに空間把握能力が人間離れしている。

そんな、人に興味を示さず、自分のルーティンと変わったことに耐えられない兄と、少しずつ心を通わせていく。

とはいえ、障害が治癒したわけではないので、完全に心が通じたとは言えないかもしれない。

最後の方の場面で、チャーリーが何か言ったことに対して(大事なのに忘れてしまった)、レイモンドは車を運転できるといった。

あくまでも、モノへの興味である。それでも、兄が時折見せるようになった笑顔は、施設では見られなかったものだろう。

兄は、お金への執着を捨てて、兄と一緒に暮らすことを求めるが、結局かなわず。それでも、面会は認められる。

一旦は、離れ離れになるが、彼らはこれからもっと心を通わせていくだろう。

題名になっているレインマンは、チャーリーの子どもの頃のイマジナリーフレンドである。と最初では、説明されていた。

兄との会話の中で、兄の名前であることが分かる。

正確には、兄はレイモンドだが、小さい頃のチャーリーはうまく発音できずに、レインマンと呼んでいた。

レイモンドが、チャーリーにやけどをさせてしまったことで、施設に入れられるので、兄弟は、チャーリーが物心をつける前に離れ離れになる。

そのため、チャーリーにとって、レインマンは、実在しないイマジナリーフレンドになっていた。

考えさせられる映画である。


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