全身脱毛記録第1回目(うろ覚え)
のっけから申し訳ないが、すでに1回目を終えて3か月経っている。したがってうろ覚えも甚だしいのだが、覚えている限りという注釈付きで1度目の所感を書いていく。
夏の某日だった。
もう、2023年の夏は事件性があるほどに暑かったものだから、日焼け止め必須の毎日のはずが脱毛の前は特に体はクレンジングができないので日焼け止めは塗ってくるなというお達しを頂戴していた。
そのために日傘にあまり露出の高くない、くるぶしまであろうかというワンピースを着ていった。
ワンピースを着ていったのにはもう一つ理由がある。変なところで見栄っ張りな私は、体にパンツやスカートのゴムの跡がつくのが嫌だったんである。そんなもの、ナースからすればなんということはないのだと思うが、1度目ということもあって微妙な乙女心を出してのクリニックへの出陣である。
そんなことより暑い。着いても汗がすぐにはひかないだろうことを予想してあまりハイスピードで歩くのはやめて、なるべくチンタラ歩いて行ったにも関わらず暑い。やはり2023年の酷暑は人間には耐えがたいものであった。思い出しただけで暑い。
着いてから施術室に案内され、全部脱いでベッドに横たわり、タオルをかけておくようにと言われた。紙パンツも何もあったものではない。それはそうである。
こういう時、一番気まずいのは脱いでいる最中の、下着だけとかそれも上下どちらかだけとかいう、中途半端な状態で見られることである。なので扉が閉まった瞬間にそそくさとすべての衣服を脱ぎ捨て、適度にたたんでクローゼットの扉を閉めた。そして化粧を落とす。クレンジングはラロッシュポゼのものが置いてある。そして大事な大事な、それこそ大事なところを拭く儀式がある。
男性にはわからないかもしれないが、女性の陰部からは大体いつでも何かしらが出てくる。ということでデリケートゾーン用のコットン的なものがあるので、それで一生懸命拭く。何しろナースに「うわぁ」と思わせたくない。朝からご迷惑なことである。
という、およそ途中で見られると不格好甚だしいことを一通り終わらせてベッドにもぐりこんだ。上にかけるタオルは風俗店のそれのようなザラザラ加減である。まぁ、寝るわけじゃあるまいし高級ホテルでもなし、別にタオルの質感など困ることはない。
しかし待てど暮らせどこない。危うく隣の部屋のノックに返事をしそうになったほどである。うとうと眠りそうになったころに「ご準備いかがですか?」とやってこられたのでできる限りの大声で「はーい」と返事をする。余談だが私の声は通らないことで友人たちの間では有名である。本当に、雑踏の中で会話ができない。ディズニーでも声を張り上げないと声が相手に届かないもんだから、帰るころには喉がガラガラである。
まずは先生の診察がある。
顔の脱毛は過去にしたということだけど、どう?と言われたのでこれこの通りですと言うのみである。特に減りもしてないし、増えもしていない。硬毛化をクリニックとしては一番心配するのだが、幸いそのようなことはなかったので、ヤグで行っちゃう?ということになり、痛いが効果があるならと了承した。
その後横になったりなんかして背中を見せたり足を見られたりしながら、特に問題なさそうねぇと言われて診察は終わった。割と若め(と言っても40代前半ぐらいか)の、カジュアルな先生であった。
さて、問題はここからである。ナースは中国籍と思しき女性だった。私はこの時点で何だか一安心である。別に人種差別をするつもりはないが、中国人は向こうも雑だからこちらもあまり緊張することがない。余談だがエステやマッサージは決まって中国人を指名する。痛いときに痛いと言いやすいのだ。日本人だと「申し訳ございません」となってしまうのでこちらもよっぽどのことがない限りは言いづらい。
まずはVIOに表面麻酔を塗る。ヒヤッとするのでびっくりはするが、手際がいいのでもはや恥ずかしいなどという気持ちはない。というか、日本人じゃないというだけで緊張感はほとんどなくなるから不思議である。そして顔から始まった。もうそれはそれは痛い。ヤグは痛いとは聞いていたが、本当に痛い。噂に違わないし想像していた以上に痛い。何なら顔にも表面麻酔を塗ってほしいぐらいである。
しかしそんなことは言えないから黙って耐えるのみだ。
体の方は、背中やうなじは剃ってくるなと言われていたのでそのままにしていたが、人の手でやる方が100倍早い。電動カミソリでさーっとなでるように剃ってくれて、マーキングされる。このマーキング、大体は蛍光マーカーでなされるのだが、これが絶妙に痛い時がある。角度の問題だろうが、とがった部分が当たったりなんかすると結構痛い。しかし施術でもないのに「痛いです」とも言えないからこれも耐える。レーザーの痛みに耐え、マーカーの痛みに耐え、大金を払って暑い中出かけて行って一体何の罰ゲームだろうか。
体の方は足からやったのだが、膝の裏と腰が一番痛かった。これも予想外だったので精神的衝撃と実際的痛さで頭の中はずっと「!?!?!?」である。だが、個人的にいいなと思ったのは腕や手の辺りで、当たり前だが手を握って指や手の甲に照射するので、人の手のぬくもりを感じるという…妙なところでハートウォーミングな思いをした。しかし温まった心が一瞬で硬直するほどの指の痛みである。手を握られ心温まった瞬間に照射、また手を握られ…の繰り返しで、精神的にどっと疲れた。
問題のVIOであるが、表面麻酔とは一体何なのか。これで効いていると言えるのか?と疑念を持つほどに痛かった。塗ってこれなら塗らなかったらどれだけ痛いのかVS塗っても塗らなくてもどっちにしろ痛いのではないかで頭の中でゴングが鳴る勢いである。事前にいろいろとネットを漁った時に「Oをやろうとすると肛門をぎゅっと閉める人がいるんだけど、脱毛したいのか何なのか」というようなナース側の意見を見かけていたのでなるべく力を抜くようにした。Oは想像していたよりは痛くなかったので反射的にもぎゅっとすることはなかったが、問題はIだった。Vも別にそこまで痛くない。何しろIラインである。粘膜にもかかるからだとは思うのだが、本当に麻酔の意味があるのかどうか疑わしいほどに痛かった。毎度こんなに痛いのだとしたら先が思いやられる。
ちなみにこのクリニックでは表面麻酔は2200円(税込)であるから、この2200円をドブに捨てていないかどうか、ということを考えていたら施術は終わった。
それから化膿止めのローションを塗られておしまいである。
ここからがまた勝負だ。
とにかく洋服をいかに早く着るか。施術室をいつまでも独占してはいけないのである。このクリニックはパウダールームが別にあるから、用事が済んだらさっさと出るのが好ましかろうということで、一目散に着替えてメイクをするためにパウダールームへ向かった。
パウダールームに常備してあるのはティッシュとコットン、髪留めと化粧水、乳液、日焼け止めである。
ここも席が3つしかないから(東銀座の方のアイエスも3席だった)、かぶるときまずいので早々に化粧をする。幸い、私の化粧は5分もあったら十分に終わる。
終わってから会計をして次の予約を取り帰ろうと思ったのだが、お手洗いに行きたくなったので拝借した。
するとどうだろう、トイレットペーパーで拭いたときに、明らかにしびれているのである。つまりあの表面麻酔はきちんと効いていたのだ。とすると、効いていてあの痛さなら麻酔なしだと失神するレベルに痛いのではないか。私はこれほどまでに2200円(税込)の価値を感じたことはない。
余談だが、この後1か月ほどかゆみにさいなまれた。
原因はいろいろある。まず夏だったから常に汗をかいていたということと、私は普段重たいリュックを背負っているので、そのリュックの底が当たるところがこすれて刺激され、それでかゆかった。また洋服も、どうしてもストッキングやらスカートやら下着やらで、集中的にお尻の上から腰辺りに締め付けられるのでそれが刺激になったことも原因である。
化膿止めをもらっていたがそれは早々に使い果たし、ドラッグストアで「一番ステロイドが強いのはどれか」と聞いて困惑させつつ買った薬も使い切ってしまった。しかしそれが効いたのか、1か月でかゆみは収まった。もちろん、かゆいかゆいと痒さの赴くままに搔きむしったのも原因である。いわゆる「掻き壊し」というやつで、結構黒ずんでしまった。あぁまずいなァなどと思ったが後の祭りである。
これから脱毛を考える人にはアフターケアに何よりも注力していただきたい。
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