ドルトムントvsハイデンハイムの振り返り
ドルトムントの第3節ついて書いていきたいと思います。
移籍市場について
試合に入る前に、日本時間9月2日1時に締切となった移籍市場について少しだけ。
ドルトムントは締切当日の駆け込み補強は行わず、前日に昨季ブンデスリーガ得点王の1人であるニクラス・フュルクルクを獲得するに留まった。
フュルクルク獲得の理由は単純で、アレが今季アフリカネイションズカップを控えるので、そのためにストライカーの枚数を増やしたいという意図だろう。
正直言って、あまりドルトムントらしくない補強だったと思う。
昨年も締切間際にモデストを緊急獲得したが、あのときはアレに病気が発覚したために生じた緊急事態。選択肢を用意する暇すらなかったと思う。
しかし今回は違う。
アフリカネイションズカップがあることは前から分かっていたこと。(2022年7月にアフリカネイションズカップを2024年1月に開催することが決まった)
それにコートジボワールは開催国なので、大会には必ず出場する。
にも関わらず、ギリギリのタイミングでドイツ国内の30歳のFWを、金を積んで引き抜くというのはあまりドルトムントらしくない動きだと感じた。
もちろんフュルクルクが活躍する可能性も当然あるので、全否定したいわけではない。しかしもう少し手の打ちようはあったと思わざるを得ない。
それに、同じ理由でベンゼバイニだってアフリカネイションズカップで離脱するかもしれない。しかし現状、左SBの控えはリエルソンしかいない。ここの補強は残念ながら叶わなかった。
メガクラブのように潤沢な資金で豊富な戦力層を用意できないのは分かるが、少し今回の移籍市場での立ち回りには不満が残ってしまう。
プレミアやサウジとのマネーゲームに敗れたのなら仕方ないが、そうではなくて自滅した感が強い。
ベリンガム売却で得た資金の使い方もそうだし、成立しそうな契約を直前で監督が拒否したりという噂もあったし…。
試合について振り返る
スタメンはご覧の通り。
前節ボーフム戦からは2人変更。
フンメルスのところにズーレ、ヌメチャに変わってアデイェミが入り左ウイング。ブラントは一つ下がってインサイドハーフへ。
前節ボーフム戦に引き続いて433気味の形をとってきた。
相手はハイデンハイム。
今シーズンがクラブ創設100年にして初のブンデスリーガだそうで、ドルトムントとはあらゆる公式戦の中で歴史上初の対戦となるらしい。
申し訳ないが知ってる選手は1人もいなかったので、相手については何も語れない。
シーズンが始まって公式戦は4試合目だけど、なかなか調子の上がらないドルトムント。
しかしこの日の前半に限っては素晴らしい試合運びを見せる。
ドルトムントは保持時433、に対してハイデンハイムはさほど前からは追わずに4411のブロック。ジャンに対してトップ下の選手がマークする形で、同時に真ん中を消されているのでドルトムントの攻撃は外回り。
しかしケルン戦やボーフム戦と違って左右SBに時間が与えられていたこと、さらにハイデンハイムの44ブロックもさほど強度が高いものではなく、外回りであってもそこから中へ侵入したり、ブロックを揺さぶるサイドチェンジを見せたり、そしてそこから危険なエリアへと攻め込むことが出来ていた。
特にザビッツァーやブラントが後ろから飛び出してくる攻撃には迫力があったし、相手を掻き回すものになっていたと思う。
勢いそのまま、前半の17分までに2つのゴールを奪うドルトムント。
1点目は余裕のあるシュロッターベックからのサイドチェンジが起点。2点目はブラントの飛び出しから。どちらもいい形だったと思う。
前半のハイデンハイムを見た印象は、やはり一部では難しいのかなと。ブロックの強度はイマイチ、揺さぶられたらスペースを作ってしまっていたし、そこを使われてピンチの連続だった。力差があるなと感じてしまった。
しかし後半、ゲームは一変する。
流れが大きく変わった後半
ハーフタイム、ハイデンハイムは11番のトマラに替えて18番ピエリンガーを投入。これでシステムを中盤ダイヤモンドの442のような形へ変えてきた。
ハイデンハイムは前半とは打って変わって、前からプレッシャーを掛けてくるようになる。ドルトムントCBには2トップが、ジャンにはアンカーが、SBには両SHがつく。要はマンツーマンに近い形だ。
ビルドアップが出来ないチームに起こりがちなのだが、マンツーマンで捕まえにこられると途端に何も出来なくなる。
たとえば昨年のW杯で森保JAPANは相手にマッチアップを合わせる3バック(5バック)に変更してそこから猛烈に前プレを仕掛け逆転するという試合を見せたが、あれは単純な話で代表チームとなれば(いくらスペインやドイツと言えども)そこまで組織的なビルドアップを仕込むことは出来ないので、マンツーマンで捕まえてしまうと案外交わす術を持っていない。だからマッチアップを合わせてしまうのが、ビルドアップ封じには最も手っ取り早い。
Jリーグでも、ビルドアップを試みるチームはたくさんあるけどそこまで組織的に仕込めているチームはないので、マンツーマンで捕まえに行くだけで手詰まりになるチームはたくさん見てきた。
ドルトムントもビルドアップが出来ないチームで、マンツーマンで捕まえに来られたら交わす術はないので例に漏れず同じようになってしまい、前半と比べると押し込むことができず、早い段階でアバウトなボールを蹴らざるを得なくなってしまっていた。
しかしそれでもボールを扱う技術はドルトムントの選手の方が上なので、意外と何とかなってしまう場面はたくさんあった。
特に、ハイデンハイムは前から捕まえに来てる上に後ろはワンボランチなので、1列目のプレッシャーを飛び越えてしまえばスペースはたくさんあって、チャンスも作れていた。
しかし、そこで3点目を決め切ることは出来なかった。それが自分たちの首を絞めることになる。
なおハイデンハイムはボール保持においても、GK+2CB+アンカーでボールを動かしてから攻め込んでくるようになり、これも厄介だった。
開幕戦でもそうだったように、ドルトムントは前線のプレスの基準が曖昧で相手に何も制限を掛けられないので、ここで簡単にボールを繋がれてしまう。
開幕戦では非保持時ロイス+アレの2トップだったが、この試合はブラント+アレ。場合によってはザビッツァーが前までプレスに出て行くこともあったが、誰であっても効果的なプレスにはなっていなかった。
つまり悪いのは人ではない。仕組みだということ。
たとえ数的不利であっても、背中でアンカーを消したり、ワンサイドカットで相手の攻撃方向を限定したりするプレスは掛けられるはずだ。
それすらもないのが今のドルトムントと言える。
繰り返される過ち
後半61分のハイデンハイムの1点目の場面。
事の発端はハイデンハイムのスローインだ。
このスローインを人数を掛けて奪いに行くものの、またいつものようにプレスが曖昧で(たとえばこの画像でアデイェミは誰のことも見ていない)あっさりとこの網を掻い潜られてしまう。
この時点で実は既に3vsでハイデンハイムの方が人数が多い。
最終的には今大外でフリーな8番がゴールを決めることになるが、この時点で彼はフリーでこのあとクロスを跳ね返して、再度奪われてを繰り返す間もずっとフリーだ。
いったい守備のルールがどうなっているのか目を疑ってしまう。
続いて同点ゴールの場面。
個人的には、今日の2失点目とボーフム戦の失点は非常に似ていると思っている。
2点とも、相手のセットプレーを跳ね返しラインを上げたそのタイミングを狙われている。
ボーフム戦の失点は、シュート自体はスーパーなものだったと思う。
しかしその直前の、ロングボールを入れられた場面。相手のセットプレーを跳ね返した直後の、まさにラインを上げた瞬間の場面だった。
ヴォルフの対応が批判されていたが、よく見てほしいのはヴォルフの周りに相手選手が2人。つまり2vs1の状況だった。
2vs1ならそりゃ内側の選手が気になる。よって背中側の対応が甘くなってしまった。
大外を見たら内側が空くだけだ。ゴールにより近い内側の選手を無視できる選手はいないだろう。
だからこれをヴォルフ個人のせいにするのはあまりにも気の毒だと感じた。
ハイデンハイムの2点目も、同じく相手の攻撃を跳ね返した直後のロングボールからだ。
たしかにアレのミスと言えばミスに間違いはない。
だが、そもそも大外の選手を誰も見ていない。
そこへ、アレが無理をして下がって処理をしたのがそもそもの原因。
たしかに大外の選手のポジションはオフサイドなので、見ないのが当然と言えば当然かもしれない。
じゃあ、そのオフサイドは意図的に取ったものなのか?という疑問が湧いてくる。
意図的にラインを上げて取ったオフサイドはなら、FWの選手が無理をして下がって処理をすることもなかっただろう。
それにドルトムントの選手は誰も手を上げるなどでオフサイドのアピールすらしていない。
蹴られる前も、後も、なんとなく目でボールを追っているだけだ。
アレに対して、背後から敵が迫っていることを知らせている様子もない。
ここまでルーズなラインの上げ下げは、なかなか見たことがない。
誰も、何も指示はしないし、ゆったりと走っているだけ。空いた口が塞がらなかった。
ボーフム戦の失点も、この失点も、ふわっとラインを上げるからこうなる。いつ、どこまで、誰の統率のもとでラインを上げるのか、その決まりは全く存在しないんだろう。
見ていて辛くなる場面だった。
その後はオープンな殴り合いになって行ったが、ハイデンハイムの選手の方が走れるので、どちらかというとピンチの方が多かった印象。(聞けばハイデンハイムはこういう走るチームだそうで)
特に何か書くこともない、ただひたすらオープンに殴り合ってどちらに点が入るか?という中で、結局どちらにもゴールは生まれないまま試合は終了。
スタンドからはホームチームに対して容赦ない大ブーイングが飛んだ。
最後に
正直、監督含めベンチワークが苦しい。
まず試合に対する準備が出来ていないし、チームとして基本的なことも叩き込めていない。
試合後、テルジッチはお怒りだったようだ。
要は彼の中では、ピッチにいる選手たちで試合をコントロールしろ、ということなんだろう。そして、この試合ではピッチ上の選手達が、それが出来なかった、と。
個人的には、このタイプの監督が公に選手批判するのはどうかと思う。
選手批判していいタイプの監督がいるというわけではないが…テルジッチのようなモチベータータイプというか、人の良さで監督をしてるタイプの人が選手批判をしては、選手がついてこなくなるのではないか。
そもそもテルジッチは、試合をコントロールする術をチームに落としてこめているのか?とと思う。
前線からのプレス一つ仕込めないチームが、試合をコントロールする術など持ち合わせているわけがない。
そしてそれを選手に丸投げするなど言語道断。
この試合でも、やり方を変えてきたハイデンハイムに対して何も策は打てず、交代枠は余らせて、それでいて試合後には選手批判。
ここまで酷い展開は久しぶりかもしれない(笑)
この監督では厳しいと言わざるを得ない。
ここまで何も出来ない監督はなかなか見たことがない。
もちろん問題は監督だけではなく、この人を選んだフロントにもあるんだけど…。
なんで始まって数試合でこんな暗い気持ちにならなくちゃいけないのか、腹立たしい限りですw
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