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夢見つつ深く植えよ、の日

2023.2.5
昨日の立春の朝、
ひとつ、立札をつくった。

メイ・サートンの詩の一節を
そこに、書いた。

to plants his dreaming deep
夢見る想いを深く植えよ

🕯父は木工作が得意で、
ナニカを作ったあとの端切れも、
捨てない世代のヒトらしく、
納屋に仕舞ってあった。
それを使ってつくってみたのだ。


これは、誡め、で、ある。

庭、という《カタチ》を欲する王ではなく、

イキモノとしての庭に仕える《下僕》で
わたしが在り続けるための。

しもべ、を辞書で引けば、

1 雑用に使われる者。召使い。「神の―」

2 身分の低い者。

などと、書いてある。

そうなのだ。

わたしは、ご主人である庭の
雑用を引き受ける新米の召使いで、

だからこそ、飽きもせず、
土を耕し、種を蒔き、

苗店からの庭への客人である、
例えば、白のディルフィニウムを
枯らしてしまっても、

仕方ないさ、と
赦していただきながら、

とても、楽しいのである。

さて、書いて、
庭の隅に立ててみたら

予想通り、
こころが晴れ晴れした。

しもべならば、
ガーデナーの風格なぞ

*いつもナチュラル
*いつもおだやか
*いつもスマイル

身に付かなくても良いのである。

しもべは、
ずっと右往左往しながら

*困ったり
*疲労困憊したり
*飛び跳ねたり

していて良いのである。

プラン通り、なんて
一度も無く、

いつも、
咲いた枯れた芽を出した、と
びっくりしていて良いのである。


『ご主人さま、植えた覚えのない
翁草が、今年も芽を出しましたよ!』

去年、気づいたら咲いていた翁草。
種が風に乗って飛んできたのだろうか。
庭のいちばん、土が痩せているところに
定住してくれて、ありがたい。

🕯芽が、白い柔らかな毛で包まれている。
あたたかそうね、と声を掛けてみる。


『ご主人さま、初冬に植えた
寒咲き水仙が咲きましたよ!』

などと、息を切らして
飛び跳ねながら、報告して
喜んでいれば良い、のである。


去年、元気なく、蕾も付けなかった椿。
鉢に移して養生させていたら、
今年は蕾ふっくら。
やはり飛び跳ねて、ご主人さまに報告した。




さて、きのうは
お庭やさんが来て、
庭の、あまりに大きくなった木たちの
写真を撮っていった。

高さを剪って、
剪定していただく、はじめの一歩である。

ヤマボウシ、月桂樹、えごの木、
名前を知らない木ふたつ

の5本を、お願いした。

しもべは、お庭やさんと
緊張しながら、話し、

来週には見積もりを、とお願いし、
お見送りをしたあと、

ほっとして
赤のルピナスの苗を植えた。

買うとき、根を切らないように、と
苗の横に、自筆の注意書きがあった。
 畏れながら、丁寧に植える。

JAで買うのは、苗札もついていないので
名前を忘れてしまった苗もある。



それから、ご主人さまに

明るいいろが欲しいね
冬のコートに付ける華やかな釦みたいに

と、言われたので
(これはinspirationである)

バスに乗って、バス通りにある
ちいさな花屋さんへ向かった。


夜、しもべは疲れてコンビニで、
ちゃんぽん麺を買って
ビールを飲みながら、食べた。

夜はコートを着て
庭に出て、5分だけ星空を観た。

オリオン座が近くて、
いつものようにびっくりしていた。

布団に入ってからは、本を読んだ。

いとうせいこう氏の
自己流園芸ベランダ派の
りんどうの章まで読み、

それからは、再読となる
メイ・サートンの夢見つつ深く植えよ
の、頁をしばし繰り、

毛布にくるまれ
しもべは、春の庭を夢見つつ、睡った。

メイ・サートンの《夢見つつ深く植えよ》
また、図書館て借りた。
そろそろ、本屋さんで巡り会いたい。
⇩amazonで買わない派。


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