見出し画像

包括的性教育の元ネタ(WHO&ユネスコ)をまとめてみた


包括的性教育について

「包括的性教育」という言葉を聞いたことがあるだろうか?
海外で広く行われている、科学的事実に基づいた性教育という触れ込みの教育方法であり、日本でも一部の団体がこれを子ども達に教えるべきだと主張し活動している。

例えば包括的性教育の普及を目指して作成されたこの「性の絵本」シリーズは、一部の学校では性教育の副読本としてすでに取り入れられているらしい。


日本財団や日本弁護士連合会などの団体も学校教育に包括的性教育を取り入れるように主張している。

一方で、この包括的性教育についてネット上では「幼い子ども達に性的な知識を与える教育であり虐待だ」とか「小さな頃からLGBT思想を教育し、自分のジェンダーアイデンティティ(性自認)を考えるように誘導しており、子ども達が混乱してしまう」などといった批判の声が聞かれる。

批判する人々が包括的性教育の例としてよく挙げるのが次のような画像である。

包括的性教育の一例としてよく挙げられている図

これを見ると多くの人がその内容にギョッとするだろう。
私もそうだった。
これを日本の学校教育に持ち込むなんてとんでもないと感じるだろう。
そこで私はこの画像の元ネタが何なのか、本当に海外ではこのような教育が行われており、それが日本に持ち込まれようとしているのかを調べてみることにした。

結論から言うと、批判している人達の意見は半分当たっていて、半分間違っていた。
この画像が海外で実際に教えられている包括的性教育の内容である事は間違いないのだが、日本の教育者が参考にして取り入れようとしている包括的性教育とはまた別物なのだ。
つまり、包括的性教育のガイドラインには2種類あったのである。

ひとつはWHOが推奨している『欧州の性教育標準(WHO/EUR, BZgA: Standards for Sexuality Education in Europe A framework for policy makers, educational and health authorities and specialists, 2010)』というガイドラインであり、2010年に作成され、現在はヨーロッパで広く用いられている包括的性教育のガイドラインである。ネットでよく見る画像は、実はこの内容から抜粋されている。

もうひとつはユネスコの『国際セクシュアリティ教育ガイダイス 科学的根拠に基づいたアプローチ』であり、こちらは2009年に作成され、2017年に日本語訳が発行された。日本の教育者が参考にしている包括的性教育ガイドラインはこちらの方である。

これらのガイドラインでは、子どもたちの年齢に合わせて学習するべき内容が設定されており、それぞれのカテゴリーで「知識/スキル/態度」を身につけるよう求められる。

以下、それぞれのガイドラインについて解説していく。
年齢別の学習目標を表にまとめたものを示した上で、私の個人的見解も記したいと思う。

『欧州の性教育標準』(WHO推薦)

2010年に作成され、現在はヨーロッパで広く用いられている包括的性教育のガイドラインである。
こちらのサイトで原文を読むことができる。14ヶ国語に翻訳されている。

英語版から年齢別教育目標の部分を抜粋し、原文→日本語訳の順で提示する。

0-4歳

0-4(1)
0-4(1)

(1)
0歳から生殖について教えるのか。めちゃくちゃ早い。
そして4歳までに自分のジェンダーアイデンティティ(男か女かそれ以外か)を認識させるのか…。
幼少期自慰について言及した上で、お医者さんごっこを勧めてるけど、もしかしてお互いに触りっこすることを推奨してる?

0-4(2)
0-4(2)

(2)
“異なる家族関係”を教えるようになってるけど、つまり同性カップルの事とかってこと?
「ジェンダーアイデンティティを探求する権利」とか「ジェンダーロール」について教えることになってるのが気になるなあ。
乳幼児に性役割を教えるメリットって何かある?むしろ固定観念になりそう。

4-6歳

4-6(1)
4-6(1)

(1)
性に関して肯定的な態度を育もうとしているのが伺える。
適切で正確な用語を使って性について話す事を指導。
恋愛感情について教育。同性愛についても。
ジェンダーアイデンティティを強化させようとしている。

4-6(2)
4-6(2)

(2)
同性愛を受け入れるように教育している。
「多様性の受容」とか「オープンで偏見のない態度」とか、理念は素晴らしいんだけどなあ…。
性犯罪に対する警戒方法を教えてるのとかは良いと思う。

6-9歳

6-9(1)
6-9(1)

(1)
6歳から思春期の変化について教える必要あるのか?欧米人は発育が早いから?
避妊とか家族計画とかAVとか自慰とか性交とか、6-9歳に教える内容じゃないだろうと強く感じるのだが。
「受け入れ可能なセックス」の理解ってなんだ。9歳以下にそんなもん無いだろ。
性虐待への認識を促しているのか?

6-9(2)
6-9(2)

(2)
自他境界の話とか、他者との妥協点を探すとかは良いと思う。大人でもできない人が多いし。
この年齢に性病の話いる?
子どもの性の権利にかこつけて性交やAVの扱い方を6歳に学校で教えるのか。18禁の概念が消滅する。
ジェンダーロールも不要だと思うんだが。逆に固定観念になりそう。

9-12歳

9-12(1)
9-12(1)

(1)
……WHO的には9〜12歳で最初の性交を行う事を勧めているのか?
学校教育でオーガズムを教えるってどういうこと?
小学生に避妊具の具体的な使い方も教えるんだ?
キス、触れ合い、愛撫の受容って、明らかに子供達にセックスの実践を勧めてるよね??

9-12(2)
9-12(2)

(2)
デートの仕方や恋愛の仕方、性病のことまで教えてくれるんですね、9-12歳の子どもに…。
性行為を肯定的に教えてる事と相まって、トラブル多発する未来しか見えないよ。
この表の中にサラリと書かれている「性の権利(IPPFとWASに定義されているもの)」というのが、結構ヤバい。

※IPPF(International Planned Parenthood Federation: 国際家族計画連盟)
リプロダクティブ・ヘルス・ライツ(性と生殖に関する健康と権利)の促進と家族計画の自己決定権を啓発している国際非政府組織。
画像のような、中絶や避妊を含む生殖に関する様々な権利を訴える。

※WAS(World Association for Sexual Health:世界性の健康協会)
旧名は世界性科学(Sexology)協会。
1999年に香港で性の権利宣言を発表した。
内容は画像の通り。性的自由とか、性の喜びとか、性的表現とか、性的情報とか、包括的性教育を受ける権利などなど。

これらの中絶や避妊の権利とか、性の喜びを享受する権利とか、性的表現をする権利とか、性の情報にアクセスする権利とか、そういうものを小学生の子どもに認識させ「これらの権利と責任の範囲内で行動する」ことを求めるって、逆に大人として無責任じゃないか??

本当にロクでもない事になりそう…。

12-15歳

12-15(1)
12-15(1)

(1)
しょ、処女膜修復??マジでこの単語が出てくるとは…。(詳細は後で記載)ルッキズムや同調圧力に批判的なのは悪くないと思う。
口説き方や避妊の仕方、中絶や養子の話まで。中学生にガンガン性行為を勧める感じの内容だな…。
妊娠と不妊症の話に同性カップルが含まれてる。

処女膜修復について。
切れた処女膜を縫い合わせる事で再生する事が可能らしい。

誰がこのような処置を必要とするかを真面目に考えると、宗教上の理由で処女以外は結婚が大きく制限されてしまう人々が多いじゃないだろうか(敬虔なキリスト教徒、イスラム教徒、ユダヤ教徒など)。
もし自分がそういう宗教の信者だったと仮定して、学校が娘に勝手にこのような知識(婚前交渉で処女を喪失しても処女膜は再生できるから大丈夫、とも捉えられる)を与えている事を知ったら、ブチ切れ必至だろうと思う。

12-15(2)
12-15(2)

(2)
“安全で楽しいセックスをするために、交渉とコミュニケーションのスキルを身につける”
おお…、だいぶあからさまだな。
中学生へのセックス推奨を隠そうともしない感じ。
日本でも早熟な子はやってると思うし、知識は必要かもしれないけど、ここまで学校が推奨するのはなあ…。

15歳以上

15-(1)
15-(1)

(1)
子供たちに社会的(宗教的/文化的)規範に批判的な態度をとらせるって、常識から外れる事を学校が積極的に推奨してる事にならない?
下手したら文化破壊と言われるよ?
「デザイナー」ベビーとかいう、どう考えても倫理的問題をはらんだものを学校で教えるのはどうなの?

15-(2)
15-(2)

(2)
「単なる性交以上のものとしてのセックス」…って。
逆に小中学校では単に性交の仕方だけ教えて、その意味については蔑ろにしてたということ?
それはさすがに順序が逆では?
欧米は男女問わずセックスをスポーツと捉えてる人が多いイメージがあったけど、こういう教育の影響なのかな。
カミングアウトを推奨している。
「性と喜びに対するポジティブな態度」を目標にしている。
高校生でセックス大好きにならなきゃいけないのか?
同性愛を祝福するように教育。

15-(3)
15-(3)

(3)
権利侵害に対して声をあげるように教育している。
『社会正義のセンス』を身につける教育。
…これ、教師による学生の洗脳になりかねないのでは?
異なる価値観の尊重と繰り返し書いてあるけど、どう考えても『社会正義』で蹴散らす気まんまんだよね?
実際の様子を見る限りは。


以上、WHOによる欧州の性教育標準の和訳でした。
…思ったよりとんでもなかった。

全体的に子どもの判断力と理性を過信しすぎている印象。
どんなにヤバい事を教えても、きちんと教育さえすれば子ども達が理性的な判断をしてくれるはずだと、無責任に考えている気がする。

そんなはずがないことは、自分自身の学生時代を振り返ってもわかるし、欧米での麻薬類の蔓延具合を見る限りは、欧米の子供たちが日本人よりも理性的であるとも考えにくい。
良い面が無いわけではないが、それよりも悪影響の方が大きそうだというのが率直な感想。


『国際セクシュアリティ教育ガイダイス 科学的根拠に基づいたアプローチ』(ユネスコ)

2009年に作成され、2017年に日本語訳が発行された。
日本の包括的性教育の基になってるのはこれ。
こちらのユネスコの公式ホームページから原文が読めます。13ヶ国語に翻訳されている。

この中から、第5章に示された学習目標を年齢別に抜き出して、WHOのものと同じ形式の表にまとめたのが以下の内容です。

5-8歳

5-8(1)

(1)
WHOとは違って0歳-4歳のカリキュラムは無し。
家族の形や友情の形について、考えさせる内容。
家庭の常識って、意外と外と違うから、それを認識するのは良さそう。
ここで早速ジェンダーが出てくるが、ここでいうジェンダーは性別と同義な感じがする。

5-8(2)

(2)
「ジェンダーとセックスの意味を明らかにし、それらがどのように異なるのかを説明する」
ユネスコの方ではジェンダー(性自認)とセックス(肉体の性)は、はっきり異なるものとして扱っているのだろうか。
ここで自分のジェンダー(性自認)を考えさせるのはマジでいらない。
互いの価値観の違いや、人権についてしっかりと教えることは良いと思う。
ただ、ここにジェンダー(性自認)の概念が絡んでくると、「性自認を尊重しないのは人権侵害」という主張に繋がりそうな気がする。
マジでジェンダー(性自認)がいらない。

5-8(3)

(3)
いじめへの対応や、性的搾取を受けた場合にそれを認識する方法やどのように対応するべきかを教えていることは良いと思う。
DVへの対応についても。
SNSの危険性について教えているところも良い。

5-8(4)

(4)
同調圧力への対抗方法や、適切なコミュニケーションの方法、メディアの情報が間違っている事もあるという情報を教えることは良いと思う。
"信頼できるおとな"を見つけるのは良いと思うけど、そこに活動家が入り込まないといいなあ…。保健室の先生とかが妥当じゃない?
ジェンダー役割の話を、あえて幼い子にする必要はあるんだろうか。
逆に固定観念になりそうな気がしてならない。
「性別に関わらず、自分のやりたいようにやったらいいよ」と教えるだけじゃダメなんだろうか?

5-8(5)

(5)
一般的な性教育の内容(妊娠や出産、思春期の肉体変化など)だが、教える年齢については議論が分かれそう。
セクシュアリティや性的行動についてはごく軽く触れるのみ。「スキル」の項目は無し。
「悪いタッチ」を認識して抵抗する事を教えるのは防犯や虐待防止的な意味で良さそう。

5-8(6)

(6)
性と生殖に関する事柄については初歩的な知識と最低限の態度を教えるのみで、やはり「スキル」の達成目標は無し。
知識についても極端すぎる内容はなさそう(対象年齢は要議論)。
HIVについては特に力を入れており、独立した項目がある。アフリカとかは特に蔓延してるらしいからだろう。

9-12歳

9-12(1)

(1)
家族関係や友人関係、スティグマやいじめ・ハラスメントへの対処法など有用そうな内容が多い。
家族関係への介入はいきすぎると問題が起こる可能性はあるが。
CEFM(強制結婚)というのは、昔の日本で言うところの許嫁みたいなやつかな?

9-12(2)

(2)
人権やそれに関連した法律(国内法、国際条約)などを教えるのは良いと思う。ジェンダー役割とかジェンダーアイデンティティ(性自認)の話が本格的に始まった。トランスジェンダーの話も含む。
自分自身のジェンダーアイデンティティ(性自認)をポジティブに認識させるんだってさ…。

9-12(3)

(3)
ジェンダー不平等の話、ジェンダーステレオタイプの話、ジェンダーに基づく暴力の話などが続くんだけど、これってほぼ100%女性が社会の中で虐げられてるという話だと思うし、そんな教育を受けたら「それなら私は『女性』をやめたい!」と思う女子が続出してもおかしくないと思うんだよね…。
性的虐待やいじめ、DVについて、具体例を挙げて説明し、そのような扱いを受けた場合に誰に助けを求めるべきかを教えるのは良いと思う。
4.2で女子トイレは大切だと明言してるのに、どうして欧米ではジェンダーレストイレを導入してるんですか?

9-12(4)

(4)
ネットやSNSについて教えるのはいいと思う。
ただ4.3の「性的に露骨なメディアやセクスティングについて信頼できるおとなに伝える」の意味がよくわからない。
性的に露骨なメディアって、18禁メディアの話?
それとも町中の掲示物とか全年齢漫画(少年誌など)の話?
大人に伝えてどうするんだろう。
発行元に抗議して規制するよう働きかけてもらうのだろうか?
18禁メディアについてなら子どもが見る方が悪いし、全年齢作品のお色気表現についてであれば、表現規制活動みたいで、個人的には好きではない。
ちなみにセクスティングというのは性的なテキストメッセージまたは写真を携帯電話間で送る行為のことらしい。要は変質者からのエロメッセージ。これについては確かに大人に相談した方が良いと思う。
自分の意思をはっきり持つことや、コミュニケーションスキルを学ぶのは良いと思う。

9-12(5)

(5)
9歳(小学3年生)に膣内射精で妊娠する事を教えるのはちょっと早いんじゃないかな…。
せめて小学校高学年(11、12歳)だと思うが、ここは意見が分かれそう。
6.3の「ジェンダー不平等が月経中の女子の恥ずかしさや恐れの気持ちにどのように影響しているのかを再認識する」が気になった。
これ、逆に言えば「ジェンダー平等が達成されれば女子は月経に恥ずかしさや恐れの気持ちを抱かない」ということ?
先日、女子トイレの話題に関連して、LGBT思想支持派の人が「排泄をジェンダー化してるから恥ずかしく思うのだ」みたいな、意味のわからない事を言っていたが、それと関係あるのか?

9-12(6)

(6)
夢精の話や、ボディイメージの話とかはまあいいと思う。
セクシュアリティについて話すこととか、マスターベーションについて教えるのは、小学生にはまだ早いんじゃないかな…。
せめて高学年だと思うのだが。
禁欲について肯定的に伝えるのはWHOのやつには無かった傾向。
あと7.1の「一緒にいて居心地のよい信頼できるおとなを特定し、そのおとなにセクシュアリティについての質問をすることを実際にやってみる」というのは、一歩間違えるとグルーミングの被害者になりかねないと思った。
親以外には保健の先生くらいに限定した方が安全そうな気がする。

9-12(7)

(7)
おお、コンドームの具体的な使用法を教えてるな…。
9歳にはさすがに早すぎると思うのだが。
やはりHIVの話が充実している。
アフリカでは7人に1人以上がHIVに罹患しており、その半分以上が女性らしいのだが、それが影響しているのか。

9-12(8)

(8)
HIV感染者向けの話がつづく。
コンドーム使用に合わせて、男性包皮切除や予防内服が有用らしい。
大切な知識だが、9歳に必要か?
アフリカの、生活のために売春をせざるをえない少女に向けた内容に感じる。
これをそのまま日本の教育には適応しない方が良さそうな…。

12-15歳

12-15(1)

(1)
中学生の多感な時期になって、親子関係や友人関係といった人間関係に関する事柄がたくさん述べられている。
恋愛関係に関する話も。
「包摂、非差別、多様性の尊重のために声を上げる」にすごくLGBT思想の気配を感じる。
親になる方法として、代理母を教えるのはどうかと思う。

12-15(2)

(2)
ジェンダー規範、ジェンダー役割、ジェンダーステレオタイプ、ジェンダーアイデンティティ、ジェンダーバイアスと、ジェンダー教育をがっつりやってる。

12-15(3)

(3)
「ジェンダーに基づく暴力」って…単に暴行や性犯罪は決して許されません、じゃダメなのか?
そんなにジェンダーを強調する必要があるんだろうか。
女性は特に被害に遭いやすいから気をつけましょう、で良くない?
いじめや性暴力等への対応法を教えるのは大切だと思う。
性的同意についての話、中学生ならまあ必要かな…。中学時代を振り返ると。決して性交を推奨するわけではないが。
ネットなどでの性的扱われ方の話や、性的に露骨なメディアの話が出てくるが、まさかWHOの方みたいにAVの取扱い方を具体的に教えるわけじゃないよね?

12-15(4)

(4)
性的行動に関する意思決定の話が細かく記されている。
同調圧力や、貧困、ジェンダー不平等(男女不平等)、暴力が意思決定に影響を及ぼしうる事を教えるのはいいと思う。

12-15(5)

(5)
人工妊娠中絶は避けるべきものであるという価値観が示されてるのは良かった(欄外の解説)。
「胎児の性別は染色体によって決定」と書いてある!
どうやらユネスコの方では、セックスとジェンダーは明確に区別されているようだ。

前期思春期と思春期は違うらしい。
心療クリニックによる説明は画像の通り。

大まかに、小学校高学年が前期思春期、中学生が思春期前期、高校生が思春期中期、大学生が思春期後期らしい。
…10〜12歳が前期思春期なら、ここで教えるのは遅いのでは?定義が違うのかな。
あと6.3で、子どもによっては前期思春期が困難な時期になることを述べている時に、その例としてトランスジェンダーと並べてインターセックス(性分化疾患、DSDs)を挙げているのにすごく意図的なものを感じてしまう。
考えすぎか?

12-15(6)

(6)
ルッキズム批判あり。
7.1の「自分のセクシュアリティを表現するさまざまな方法を列挙する」って、つまりどういうこと?何をやるの?
性的に活発になるという決定は常に尊重されるべき、と言うけどさあ…。
せめて中学生の間は公には抑止した方がいいんじゃないかな。

12-15(7)

(7)
挿入行為のない性的行為はより安全であると教えてる。
取引的な性的行為(売春など?)については「脆弱性を高めうる不平等な力関係を増加させ、セーファーセックスを交渉する力を制限する」ため、断るべきだとのこと。
コンドームの使用法や入手方法を具体的に教えてる。

12-15(8)

(8)
HIVの話がめちゃくちゃ詳しく語られている。

12-15(9)

(9)
HIV検査の受け方についても教えている。
日本でもHIV感染者・エイズ患者が毎年1200人くらい発生しているらしいから、若者に教えるのは悪い事ではないとは思うが…。

15歳以上

15-(1)

(1)
家族内でトラブルが起こった時の対応をシュミレーションするのは良い気がする。人間誰しも、その時が来るまでは他人事と考えてるから。
“「区別」と思われてる差別に立ち向かう”
…って、なんでもかんでも差別だと教えるつもりじゃないよね?例えば女性スペースのこととか。

“ジェンダー、HIVの状態、性的指向、ジェンダーアイデンティティにかかわらず、すべての人が親になれることを認識する”
というのが、なんか嫌な予感。
基本的には里親のことだとは思うのだが、12-15歳(中学生)の時に親になる方法のひとつとして代理親(恐らく代理母や精子提供のことと思われる)を教えてた事がひっかかる。

15-(2)

(2)
権利について考える事や、トラブルに巻き込まれた時の対処法を教えるのは良いと思う。
同性愛嫌悪やトランス嫌悪は良くない、と教えている。
ここで先日の大学教員みたいに、未手術のトランス女性の女性スペース使用の是非を議論すること自体がトランス嫌悪だとか教えられると大問題。

15-(3)

(3)
DVについてとその対処法を教えてる。
性的同意について教えてる。
SNSの危険性について。
性的なメディアによる悪影響について。

15-(4)

(4)
性的な意思決定について。
法律のことも教えてる。
実際の性的同意の示し方や、同意の聞き取り方を詳細に教えている。

“若者は、プライバシーや秘密を守り、しかも安価で現実的な、道徳的な判断を排したサービスとサポートを受けることができるべき”
羞恥心や罪悪感によって本当に困っている人がサポートを受けられない事を避けるために、ハードルを下げようとしてるのだろうけど…。
議論が分かれそうな所だ。

15-(5)

(5)
“人は、ライフサイクルを通して性的な存在であることを認識する”
…って、アセクシャルの人にとっては、致命傷になりそうな教育だな。
確か最新版の団体(LGBTQIA+)の中にはアセクシャルも含まれてたんじゃなかったっけ?

ここでもルッキズム批判あり。
“身体的外見の非現実的基準に対抗するさまざまな方法を実際にやってみる”
とあるけど、それが最近の欧米におけるファッションモデルの傾向に反映されてるのかな?やたらと肥満だったり、モデル体型ではない人達が目立ってるけれど。

避妊や性病予防について教えてる。

15-(6)

(6)
避妊具について、自信をもって使えるように、しっかりガッツリ教育。
在学中に妊娠した女生徒を除籍するべきではないというのは同意。
若年で出産した場合に、養子縁組の選択肢があることを提示。
HIVについての話。


以上がユネスコの『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』のまとめです。

まとめた感想としては「問題に感じる点も多々あるけれども(特にジェンダー関係)、WHOのやつよりはかなりマシで、参考になる点もけっこうある」という感じでした。

逆にWHOのやつは何であんなにトチ狂っちゃったの?

作られたのは、このユネスコのやつが2009年、WHOのやつが2010年でほぼ同時。
同時期に2種類の包括的性教育のガイドラインが成立したのも不思議に感じるが、その中身がこれだけ違うのも不思議だ。

ヨーロッパはSexology(性科学)が強いイメージがあるが、そのせいか?

いつか検討してみたい。

個人的には、包括的性教育に反対するのであれば、それに対抗しうるような『正しい性教育のガイドライン』を作って、それを国に採用させるのが一番確実だと思っている。

ユネスコのやつからLGBT思想を抜いて、細かい部分を色々と調整すれば、その骨組みに相応しいものになるかもしれないと思った。


Sexology(性科学)について

包括的性教育について、よく「科学に基づいた性教育である」と説明されるのだが、その科学というのがSexology(性科学)である。
性にまつわる事柄(生殖、性的指向、性的嗜好、性自認など)を科学的に研究する学問らしい。

こちらはユネスコの『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』の翻訳を行った人たちが運営しているSexologyに関するホームページだが、これを読めば包括的性教育を推進している人々がどのようなビジョンを抱いているか具体的に分かるかもしれない(私はまだ読みこめてないが)。


ちなみにこれは本当に余談であるが、WHOが推進している方の包括的性教育の内容はドイツ政府が作成したものだが、かつてドイツは性科学者であるケントラーの発案のもと、小児性愛者に積極的に里子を育てさせる国家プロジェクト(ケントラーの実験)を行なっていたことがある。
こちらの記事に詳細あり。全7回の連載で、第3〜7回は冒頭以外は有料だが、無料分を読むだけでもその悍ましさが感じられると思う。


包括的性教育の影響

アメリカでは民主党のオバマ政権下の2010年頃から包括的性教育がスタート。
ヨーロッパ各地でもおそらく同時期から包括的性教育は始まっていると予想される。

その結果、アメリカでは自分がLGBTなどに属すると認識している人が2012年3.5%→2021年7.1%と倍以上に増加。特に包括的性教育の直撃を受けたZ世代(19〜26歳)では5人に1人が自身を性的マイノリティであると認識するようになったとのこと。

また、こちらの記事によると、スウェーデンでは2008年から2018年にかけて、思春期女子(13〜17歳)のトランスジェンダー率が15倍になった。

これらの現象について、記事内では「原因は不明」とされているが、どう考えても学校教育が影響しているようにしか思えないのはわたしだけだろうか?


この記事および画像の使用について

この記事については著作権を放棄します。
私が書いた文章や、私が作った図版(包括的性教育の教育内容の表)については、ご自身の責任において自由にご使用ください。
いくらでも拡散してもらっていいです。
むしろできるだけ多くの人に知ってもらいたいと思っています。
ただし、使用によって生じた損害などについては私は責任を取れませんので、ご了承ください。

また、記事の内容について、おかしな点や間違っている点、改善点などがあればぜひ教えて下さい。よろしくお願いします。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?