【桃太郎】 第四話「湯治場にて」
「どうした? 桃太郎」
「……」
柿珍念は、桃太郎と離れで布団を並べていた。
この日の夕刻、奥多摩山中で桃太郎とばったり出会った後、熊一、ヨネのもてなしを受け、ここで一泊することになったのだ。
母屋からヨネのひときわ大きな絶叫が止んで、しばらく経つ。
それを見計らってか、和尚は、元気のない桃太郎を問いただす。
桃太郎は、ぽつり、ぽつりとキヨとのやりとりを白状した。
「わっははっ……、いやいや笑い話ではないな。お主にとっては死活問題じゃ。お主の一物は、釈迦如来様のよう