【桃太郎】 第六話「雲取山の夕べ」
「なぁ、桃」
「なんだ」
「帰った時、なんで小屋の外から爺さんたちを呼ぶねん? 中に入ってからでもええやろ」
桃太郎は、いつも小屋から間合いをとって「ただいま!」と叫ぶ。
「それはな、ばあちゃんがじいちゃんの腰を治している最中だからな。いきなり引き戸を開けたら驚くだろう」
「唐土(もろこし、中国)のあん摩です」
「いやアホか! お前らホンマに世間さまに目を向けて生きろや!」
あの絶叫、エテ吉も飽きるほど聞いている。
小屋で何が行われているか、猿でもわかるというもの。