段ボールを送ってください

段ボールを送ってください  

「加藤さん、おはようございます」
「店長、おはようございます」
「加藤さん今日も、監査チームの打ち合わせですか」
「はい、店長も加わりますか」
 ヨコシマスーパーでは、スーパー店舗の品質管理と、仕入れ先の品質管理チームを分けていました。加藤さんは、本来は、スーパー店舗担当の品管なのですが、原材料を製造していた、メーカーでの勤務経験もあるので、仕入れ先監査チームと定期的に打ち合わせをしていたのです。
 青山店長は、品質管理に理解が深く、時間があると打ち合わせに参加していたのです。
 今回の打ち合わせは、特定の原料を指定したPBの製造確認についての打ち合わせです。
 特定の鶏肉などを使用した事を謳ったPB商品をヨコシマスーパーでは、販売していました。製造は、OEM先に依頼していたのですが、食品の産地偽装が多く報道されてからは、OEM先には、抜き打ちで監査を行う、経理データーも確認できる事の2点を条件にPB商品の委託を行っていたのです。
 PB製造を行う工場では、監査を行っても、他社のPBで使用している原材料などは、ブルーシートで隠し、他社で使用している原材料などの仕入れデーター、配合データーは見せることは出来ないと言われる場合が多い物です。
 特定の鶏肉を仕入れている実績があっても、他社でも使用している場合は、特定の鶏肉を使用しているすべての商品の配合、出荷数量を確認しなければ、本当に使用したかどうかわからない物です。
 ヨコシマスーパーでは、PBの新規製造の場合は、必ず、原料仕入れから、製造、出荷まで製造に立ち会い、マニュアル、帳票のコピーを持ち帰っていたのです。
 PBS契約書には、抜き打ちでいつでも工場監査出来る事になっていたのです。
 品管の加藤さんが、監査チームの指導のため、鶏肉団子のPB委託先に抜き打ち監査に行った時のお話です。
 工場の始業時に訪問した加藤さん達は、直ぐに会議室で、いままで製造した帳票すべてと、原材料の仕入れ伝票などを揃えてもらうように依頼しました。
 このPB商品は、PBと言っても、包装資材のみPBで、委託工場から同じ配合、製造方法で、NB商品も製造していたのです。
 鶏肉は、特定の鶏肉を使用していたので、鶏肉の仕入れ伝票も準備してもらいました。
 加藤さんは、A3の厚紙を横にして真ん中に線を引き、左半分に仕入れ状況、右半分に出荷状況を記載していったのです。
 鶏肉、1KGに対して製品が何キロ出来るか、出荷のケース数に応じて、添加物、原材料を何キロ使用するかは、事前に提出し、製造開始時に確認したマニュアルから係数を算出していたのです。
 今日は、監査チームの指導も兼ねているので、A3の紙に書きながら、加藤さんは、説明していたので。
 監査に行った前月の鶏肉の使用量を計算します。
 前々月の在庫量、前月の仕入れ量、前月の在庫量を帳票から確認し、使用量を計算します。
計算結果から鶏肉の使用量を算出し、係数をかけて、製品の出来る量を算出します。
 出荷の伝票から、NB、PBの製品の出荷量を拾います。
 鶏肉からの計算値と伝票上の出荷量は、誤差の範囲で合ったのです。
 加藤さんは、仕入れ伝票を見ていると、ふと、使用している段ボールの量が多いことに気がついたのです。
 NBとPBは同じ専用の段ボールを使用していたのです。
 入荷量と在庫量から計算すると、NB、PBを足した数量よりも、200ケース、使用した量が多い計算になってしまうのです。
 内部の帳票だけで無く、仕入れ伝票、出荷の伝票から拾っても同じ結果になってしまったのです。
 加藤さんは、工場長に「200ケース合いませんが」と伝えて、も答えはありませんでした。
 NBの製品在庫は、工場の近くの倉庫に保管していたのです。
 監査チームは、NBの在庫確認のために、倉庫に行き、NB品の在庫の確認を行ったのです。製造日毎の在庫数を確認し、再び工場に戻り、帳票などを確認したのです。
 NB品の製造実績を、A3の紙の左側に書き、右側に、倉庫の在庫を記載していったのです。
 なんと、製造実績が無い製造日の在庫が、200ケース、倉庫に在庫されていたのです。
 A3の紙と、倉庫の写真を工場長に見せた所、かなり驚いていました。
 このままでは、PB品も不安になるため、倉庫の責任者を工場に呼んでもらったのです。
 今までの経過を倉庫の責任者話したところ、委託先の営業から、賞味期限が近づき、出荷出来なくなるので、段ボールを詰め替えて、日付をずらして欲しいと言われ、対応したようです。段ボールの中の包装には、日付を打たず、LOTナンバーだけだったのと、倉庫から出荷していないので、法律上は問題が無いと言う、委託先の見解で対応したそうです。
 しかし、加藤さんは、お客様から疑われるような事は、止めて欲しいと伝え、監査先を後にしたのです。
 監査チームは、会社に戻り、検討を重ね、会社の体質として、一度製造した商品の日付を書き換える事を行う会社とは、今後、PB商品の委託は、行う事は出来ないと言う見解をまとめ、委託先に伝えたのです。
あくまでも架空のお話です。


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