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宵闇散歩

 月曜日。ようやく2学期が本格的に始まり出した。毎朝弁当を作る生活も再開して、とりあえず5時半〜6時に起きている。コロナ禍真っ只中の頃は更に1時間早起きして散歩して戻ってから弁当を作っていたが、流石にもうしんどい。

 夕方に用事があり車で出かけた。駐車場に駐めていくつか用事を済ませた後、少し歩いて駅向こうまで足を伸ばす。宵闇が迫っており、薄暗くなった街はあちこちで明かりが灯りだしていた。

 夏の間は日が長いので、夕方に出かけてもまだ西日がさして眩しいくらいの事が多かったが、同じような時間帯でも日が落ちるのが少し早くなったのを実感する。街の中心部だが、公園の中なので他より薄暗い。しかし駅に近く、通り抜けする人も多い公園はまだたむろしている人が大勢いた。照明の下で幼い子供を遊ばせている親や、隣接している公民館で子供の習い事が終わるのを待つ迎えの親達。会社帰りのサラリーマンは足早に駅方面に向かっている。空気は澱んで蒸し暑く、歩いているだけで汗が滲んでくる。ぬるま湯の中をずっと行くようで、9月の夕方にしては息が詰まりそうに感じた。

 公園には水遊びできるスポットがあった。昔の井戸の手押しポンプが再現してあり、実際に押せば水が出るようになっている。すぐそばにはコンクリート作りの傾斜した道がずっと下の芝生の方まで延びており、水を流すとそこが川のようになる仕組みだった。夏場、日中はよく子供達が水浸しになって遊んでいるところだ。この時間でも幼い子供が親と一緒にポンプを押して遊んでいた。芝生のゾーンでは子供達が追いかけっこをして遊んでいる。薄暗くはあるが照明が多く、近隣のビルも明るいので危ないと言うほどでもない。空は雲が薄く全体に掛かっているが、ところどころの雲の切れ目から星が僅かに覗いていた。

 公園は全体に軽い傾斜がついており、私が来た方が低く、向かう先の方が高い。その為坂を軽く登る形になっていた。芝生のゾーン、コンクリートのゾーン、ウッドデッキになっているゾーンと色々で、歩くと靴裏から伝わる感触が全然違って面白い。足元に気をつけながらコンクリートの段々を登っていく。あちこちの隅で学生が数人で座っているのが目に入った。

 傾斜を上り切った先には道路が横切っており、そこが公園の端になっていた。横断歩道を渡って先にある商業ビルに入る。冷房がよく効いていてひんやりと涼しかった。1階に入っているサイゼリヤの前を通ると、明るい窓の向こうが盛況なのが見てとれた。向こうから来たグループが店のドアを押して入っていくのを眺めながら先へ急ぐ。顔を流れる汗をハンカチで拭いながら、エスカレーターに乗り上階へと登る。ビルとビルを繋ぐ連絡橋を渡ると人が急に増えてきて、流れに沿って歩いて行くと駅構内まで辿り着く。夕方の駅はざわざわとして賑やかだった。改札から多く流れてくる人の波、反対側の商業施設からは明るい光が煌々と照らしており、その間をすり抜けるようにして駅を通り抜ける。階段を降りると大きなバスのロータリーに出る。ぐるっと迂回して、その先にある目的のビルに入って用事を済ませた。外に出るともうすっかり陽は落ちており、夜空が薄くかかった雲の向こうに透けて見えた。天気予報では雨が降るかもしれないとのことだったので傘を用意していたが、不要だった。

 夜に子供連れを多く見ると、なぜか夏を感じる。祭りのような気分というか、週末でもないのに、明日が休みのような気がしてしまう。9月に入ってからも夏休みをずっと引き摺っているようだ。終わらない暑さのせいなのか、私の中で次へ向けてのリスタートが切れていないのか。ずっとこころが8月に置き去りにされているようで、そわそわと落ち着かない日々が続いている。

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