こどく

人は孤独だ
何を考えようと、何を思おうと、
親がいようと、友達がいようと、

教室に佇む少年は、クラスメイトたちと談笑している
その目には薄紫の輪郭を描き、だんだんと中心の奥底には、光はない。

やがて、一人、また一人と去っていき、机の上から音はきえた。
彼は日が暮れるまで外の景色を眺めている。

落書きで埋め尽くされたノート。
板書の跡は想像の彼方に飲み込まれていく。

「ねえ、何書いているの。」
「書いてない」
「え、かいているじゃない。うまいね」
「そんなことないよ。こんなの、誰だってかけるよ」
「ううん、だって君、授業中ずっとノートに齧り付いているよ。
先生は真面目な生徒だって感じているようだけれど、私は知っている」

彼は、その声の方へ向き、音の響きの一つ一つを確かめる様に、目を見開いた。
「君のその目、絵を描いている君の目は、なによりも輝いているもの」
教室の明かりはとうになく、全体が影になっており、かろうじて、夕日が少年の背中から差し込んでいる。
「漫画、好き?」
「うん、漫画は好きだな。インチキじゃないから」
「え、インチキじゃないの?こんなこと絶対起きないじゃん」
「この世界では、嘘じゃない。漫画は自由なんだ」
「そっか。また描いたら私にだけ見せてよ」
「うん」







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