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第10号

こんにちは、深尾みち子です。

1つ目の話

夫(未来の夫)とみち子は同じ会社の部署違いでした。

入社してから知ったことですが、社長と女性の常務は男女の仲でした。
毎朝、同じクルマに一緒に乗って出勤して来るのだから、
すぐ察しがつきます。

その常務は夫を気に入って、仕事に連れ回していました。

夫は面食いの私が、付き合うようになった人ですからイケメンです。
会社の女子にもファンが結構いました。

夫は持ち前の優しさから、泣いている女子社員を慰めたりする人でした。

社長はそれを見て、文句をつけ、髪の毛が長いなどと言って夫をクビにしました。

常務が夫を気に入っていることが、気に入らなかったのだと思います。

今だったらパワハラですが、その頃はそれがまかり通った時代です。

それはちょうど、みち子が夫と付き合い始めた頃でした。

若い社員たちが憤慨しました。
根拠のない理由だったからです。
夫はみんなを制して、辞めて行きました。


それからのデート代は、全てみち子が払いました。
レジでお金を払うのは彼、テーブルで私が彼にお金を渡しておきました。

次の就職先が決まるまで私がお金を彼に渡して、彼が払いました。
交通費、タクシー代、喫茶店代、食事代、映画全てです。

外から見た、彼の体面は保てたと思います。

そして夫はようやく就職が決まりました。


再就職、初めての給料をもらった彼は、
私にバラの花束とオルゴールを買って「ありがとう」と言ってくれました。

夫の心からの感謝の気持ちが伝わって、
私も涙が溢れたこと、
あのときのあたたかい気持ち、
素敵な光景、今でも鮮明に覚えています。

結婚式の後、ホテルで一泊したのですが、
部屋の入口からベットまでお姫様ダッコして運んでくれました。

考えてみればあれは最初で最後のお姫様ダッコでした。
彼は痩せている人で、お姫様ダッコしてくれるとは思っていなかったので、
本当に幸せでした。

結婚後は私の体重がズドっと増えてしまったし、
お姫様ダッコはそれ以後は、なかったけれど 笑

夫はそこから生涯、
私のことを誰よりも一番大事にして、
お姫様扱いをし続けてくれました。

「ありがとう」を言われたその日以来、
ずっ〜〜と彼が亡くなるまで、、、
私はお金を支払うことはありませんでした。


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